INTERVIEW

これからの編集者

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第6回:横里隆(上ノ空)5/5|インタビュー連載「これからの編集者」(上ノ空)

「これからの編集者」をテーマに、さまざまな人にインタビューしていくシリーズ。第6回は、長年『ダヴィンチ』(メディアファクトリー)編集長を務めた後、株式会社上ノ空を立ち上げられた、横里隆さんです。

※下記からの続きです
第6回:横里隆(上ノ空) 1/5
第6回:横里隆(上ノ空) 2/5
第6回:横里隆(上ノ空) 3/5
第6回:横里隆(上ノ空) 4/5

1〜2年後には、Japan Expoにブースを出したい

――佐渡島さんのコルク以外に、いま他に注目している動きはありますか。

横里:Tokyo Otaku Modeがどうマネタイズしていくのかはすごく注目していますし、どういう業界とどう繋がっていくのかも気になります。佐渡島さんのところに加え、ほかにもエージェント系の会社がいくつか立ち上がってきていて、その動きにも注目しています。地方自治体と繋がって盛り上がりをみせているファンイベントにも注目していますね。徳島が年に2回、5月と10月に「マチ★アソビ」というアニメのイベントをやっていますよね。開催中の3日間は徳島じゅうのホテルがいっぱいになるらしいです。

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横里隆さん

――今、イベントの話になりましたけど、たとえばこのサイトを広めるために実際に北米なりヨーロッパなりでイベントをやるとか、リアルな活動みたいなのは考えているのでしょうか。

横里:いつか、Japan Expoにブースを出したりしたいですよね(笑)。

――なるほど。ほかに、この先1〜2年で何かやろうとしている、今後の目標はありますか。

横里:やはり、作家や漫画家のエージェント的なお手伝いはやりたいと思っています。海外に作家のコンテンツをどうやったら広げられるのか、電子化をどうやって広げていくかというのを一緒に相談してやっていく。このサイトと作家のエージェント業とがうまく繋がって、融合してくるといいですね。そこに成功事例が生まれれば、新たな挑戦もできると思うので。

啓蒙と掘り起しの両方をやっていく

――このインタビューを読む人には若い人も多いと思うのですが、もしタイムマシーンがあって、学生の頃の自分に会えるとしたら、何をやっていればよかったと伝えますか。

横里:本が好きで、漫画が好きで、そのまま行けばいいと。大丈夫だよ、君の歩む道は、って言いたいですね。自分がその本に救われたと思っている、本当に好きな作家や漫画家にはほぼ全員お会いできましたから。そりゃそうですよね。ダ・ヴィンチを19年もやっていたんですから。お会いするだけじゃなくて、一緒に仕事をさせてもらう機会をいくつも持てたので。それはもう夢のようなことです。学生の僕にはまったく想像もできなかったこと。部屋の本棚に並んでいる本をみて、ああ本って素晴らしいな、とただただ思っていただけですからね。でも、好きであり続けること、願いを持ち続けることは、道を切り開くことに繋がると思うんです。だから、それは言ってあげたい。でも言ったら慢心してダメになるかもしれないですけどね。

 

――国内では本に関わっていこうとしている若い人たちが増えているような気はします。

横里:そうですね。先日も、西荻窪に「松庵文庫」という新しいブックカフェを開こうとしている方々にお会いしました。本が売れなくなっている時代だからこそ、逆風の中で本の魅力が浮き上がってきているように思います。そうしたことがうまく行くためにも、そのベースにある、書く人やそれに関わる人々がちゃんと食べていけるという状況を作らないとというのは、すごく思いますね。

――そうやって国内で本に携わる人たちのために、海外に目を向けられているということですよね。

横里:そうですね。ダ・ヴィンチでは読者を一生懸命かき集めてきた実感があると言いましたが、海外に向けて日本のコンテンツファンをかき集められたら、実数は大きいだろうなと。でも結局、海外に広げても、かき集めるという意識はあんまり変わらないと思います(笑)。別に日本カルチャーが、海外で爆発的にブレイクしているわけではありません。啓蒙と掘り起しの両方をやったうえで、商品を押していかなきゃいけないので、やはりかき集めることになるだろうとは思うんです。でも対象となる市場は世界全体なので巨大です。かき集めるといっても正味の実数はぜんぜん違うだろうと。それは先に言った拡大になるし期待になる。それをやりたいということですね。

――かき集めるようなやり方でも、母数が増えれば打開できるのではないかという。

横里:世界へ広げると大言を吐きながら、かき集めるという矮小なやり方を提示したり、矛盾したことを言っているようですけど、そういうことですよね。あとの言いたいことは、ほぼ佐渡島さんが言ってくれていました(笑)

プロジェクトが成功して、既にうまく行っているとかだったら、いくらでも話せるのですが。まだこれから始めることばかりですから今の時点では、こんなところで許してください。

――いえ、これからやっていく人にとって、とても大きな勇気になると思います。ありがとうございました。

(了)

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インタビュアー: 内沼晋太郎
1980年生。一橋大学商学部商学科卒。numabooks代表。ブック・コーディネイター、クリエイティブ・ディレクター。読書用品ブランド「BIBLIOPHILIC」プロデューサー。2012年、下北沢に本屋「B&B」を、博報堂ケトルと協業で開業。

編集構成: 内沼晋太郎
編集協力: 名久井梨香


PROFILEプロフィール (50音順)

横里隆

株式会社 上ノ空/uwa no sora 代表取締役 1965年愛知県まれ。信州大学卒業後88年(株)リクルートに入社。93年より書籍情報誌準備室(現ダ・ヴィンチ編集部)を経て、ダ・ヴィンチ編集長。その後『ダ・ヴィンチ』が(株)メディアファクトリーへ移管されるのにともない転籍。2012年に起業し現在は、株式会社 上ノ空/uwa no sora 代表取締役。社名の由来は、平安時代に“空のもっと上”を意味していた「うわのそら」から。空の彼方まで人々の気持ちをさらって「うわのそら」にする浮遊力のあるコンテンツの開発を目指している。