『ナナのリテラシー』など自らの作品をKDP(Kindle ダイレクト・パブリッシング)で発売し、2013年の利益が約1,000万円に達したとことで一挙に注目を集めたマンガ家・鈴木みそ氏。そして若手マンガ家の育成を支援する「トキワ荘プロジェクト」を率いる菊池健氏。マンガとマンガ家の未来を本気で考える二人が、マンガ業界の動向を示すデータとともに、セルフパブリッシングの表と裏を語ります。決して恵まれているとはいえない出版状況の中、読者とのミニマルな関係性の中でマンガ家はいかにサバイブしていくべきなのでしょうか? 本連載「VOYAGER SPEAKING SESSIONS」最終回です。
※2014年7月4日に第18回国際電子出版EXPOの株式会社ボイジャーブースで行われた菊池健氏・鈴木みそ氏の講演「KDPが私の道を拓いた!」を採録したものです。元の映像はこちら。
マンガ家支援プロジェクトと講演のきっかけ
菊池健(以下、菊池):私は「トキワ荘プロジェクト」というマンガ家支援の活動を8年前からしております。最初は一軒家を借りて、安いシェアハウスをマンガ家志望者に提供することでデビューの支援をするということから始めました。「トキワ荘」という名前の通り『まんが道』ですね。(※編集部注:『まんが道』は藤子不二雄の自伝的作品)現在、東京と京都に一軒家を25件借りて、130部屋を提供しています。これまで関与したマンガ家は350名ほど。そのうち41名がデビューしています。現在、週刊連載をしている者、月間連載をしている者がそれぞれいます。それなりに実績を積んできました。そういったマンガ家支援をしていく中での講習会イベントで、鈴木みそ先生と知り合いました。
若い作家が百何十人と周りにいるんです。そうすると、マンガに携わっている会社が電子書籍を始める前に私のところに来て「新人がほしい」と言ってくるんです。その対応をしているうちに、気がついたら電子コミックのベンダーさんとの付き合いができ、セルフパブリッシング、新人デビューの場として電子コミックと付き合っていくうちに、いろんなところで講演をさせていただく次第になりました。今日の講演はKDP(Kindle ダイレクト・パブリッシング)がテーマですが、まずはマンガから見た電子書籍のデータの話をしようと思います。
紙のマンガ販売部数の減少
菊池:電子書籍業態のマンガのデータの話をする前に、紙の話をします。
これはその状況の象徴的な、週刊マンガ雑誌の売上データのグラフです。ピークの1995年は『週刊少年ジャンプ』が650万部売れてギネス記録を作ったときです。週刊誌で世界で一番売れたという記録で、いまだに破られていないんですが、それをピークに下降しています。このピークが何かといいますと、『ドラゴンボール』の最終回なんですね。鳥山明さんどんだけすごいんだって話なんですけども、こういう状況が今でも続いております。 1990年の年間のマンガの新刊数5,000冊弱に対して、2009年で12,000冊、今もだいたいこれくらいです。1日に40冊以上マンガの単行本が発売されているということ。マンガ家数は、2000年に4,000人ぐらいだったのが、今どんどん増えて、今現在6,000人くらいいます。マンガの売上は下がっているけれども発刊点数は増えて、マンガを描く人が増えてるんですね。つまり一人ひとりの分配がどんどん下がっているという状況です。
電子書籍のマンガ売上の変化
菊地:紙に対して、電子書籍の市場規模を見ていきたいと思います。2011年より前の段階で売上が500億円くらいを推移していた時期があって、人々がガラケーからスマホに移ったところからドーンと数字が跳ねてきたんですけれども、2013年、推計930億円だったのが、インプレスさんが7月に発表する2013年データの速報値で、ついに電子書籍の売上が1,000億円を超えたと発表されました。それでちょっと希望が持てるかなという話です。この図は人様のサイトからいただいたものなんですけれど、前から僕が作ってみたかったデータです。青が紙マンガの売上データです。そこに電子でマンガがどれだけ売れているかをつなげてみたんですね。ただ、電子コミックの正確な売上のデータは取れないので推計です。
去年(2013年)の電子コミックの売上は748億円でした。紙の売上と電子書籍の売上を足して、皆さん気づきませんか、ひとつの変化に。あくまで推計なんですけど、ずっと下がり続けていた数字が、少し上がっているんです。
推計なので絶対とはいえないんですけど、紙と電子コミック両方の売上を足したところ、2012年から2013年の間で68億円ほど上がっているんです。これは1996年以来なので、18年ぶりの快挙と言っていいのかどうかわからないんですが、そういうことがあります。
ちなみに、この話の前提をいうと、「2013年の電子出版全体の売上1,000億円以上のうち、マンガが80%を占める」ということを元にした、あくまでも推計の数字ですけれども、マンガ全体の売上が68億円ほど微増したということがいえるかもしれないということです。
※動画中の0:03:18から0:15:26ごろまでの内容がこの記事(「マンガ家一人ひとりの分配がどんどん下がっている中で、」)にあたります。
[2/7「ガラケーの時代からマンガアプリ全盛の今に至るまで。」に続きます](2015年2月3日更新)
構成:長池千秋 / 編集協力:猪俣聡子
(2014年7月4日、第16回国際電子出版EXPOのボイジャーブースにて行われた講演「KDPが私の道を拓いた!」より)
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