INTERVIEW

デザインの魂のゆくえ

デザインの魂のゆくえ
「デザインと教育」篇 開始によせて

2017デザインと教育-01

この連載の第1部「デザイナーにとって経営とは何か」の序文に対して、
魂を失わずにグラフィックデザイナーになる本』のブックデザイナーである、
グラフィックデザイナーの秋山伸さんからコメント欄にコメントを頂きました
(※編集部注:現在Facebookの規約変更により見ることができません)

秋山さんのコメントから、
「デザイナーが日本のデザイン史をどう捉えるか」
という視点を持つことが大事であることに気づき、
自分にとってのグラフィックデザイン史を振り返りつつ返信をした中で、
バブル期に生み出された広告デザインの潮流と、
今現在のデザインの潮流には違いがあり、
その文脈を埋める必要があるのではないかと感じました。

デザインについての議論が盛んになる中、
平面領域のデザイナーの言葉は求心力を失い、
中心から外れてしまっているように思えます。
平面領域のデザイナーが語るべきであった文脈を、
僕はもう一度デザインの実務家として自分の視点で、
法律や建築、教育などの様々な領域に潜むデザインの文脈を
検証・考察したい、と考えました。

「日本にデザイン教育はなかった」。
前回の連載で大分県にある「いいちこ」を作る三和酒類に向かった日に読んだ
『週刊東洋経済』2015年9月19日号の連載「三者三様」(テーマは「模倣と創造のあいだ」)に
掲載されたインタビューの中で、
五輪エンブレムの事件を切り口にしつつ日本のデザイン史を振り返る
アートディレクターの河北秀也さんのインタビューには、
このような見出しが付けられていました。

河北さんは三和酒類と共に「いいちこ」の広告デザインを
数十年手がけられたことで知られるアートディレクターであり、
東京藝芸術大学美術学部デザイン科の名誉教授も務められている方で、
このインタビューで語られた内容は非常に重要な指摘だと感じました。

僕は2003年に多摩美術大学グラフィックデザイン学科を卒業し、
現在は非常勤講師として同学科の授業を受け持っています。
つまり「デザイン教育」を受け、またそれを学生に施す立場にいる人間でもあります。

近年、「教育にとってデザインをツールや視点とする」ようなコンテンツは
ポピュラーになりつつありますが、
僕はデザインの社会性について考える上ではデザインから見た教育、
つまり「デザインの実務家がどんな教育を受けてきたのか/
彼らが受けたデザイン教育をどんな文脈で捉えるのか」について
紐解いてゆくことが重要なのではないかと考えました。

近年復刊や和訳された本に
配色の設計(ビー・エヌ・エヌ新社、2016年/ジョセフ・アルバース・著、永原康史・監訳、和田美樹・翻訳/原題『Interaction of Color』、1963年初版)と『図説 サインとシンボル(研究社、2015年/アドリアン・フルティガー・著、小泉均・監修、越朋彦・翻訳/原題『Signs and Symbols: Their Design and Meaning』、1989年初版)という2冊の本があります。

ジョセフ・アルバース・著『配色の設計』(左は同書の旧版『色彩構成 ―配色による創造』/1972年初版)

ジョセフ・アルバース『配色の設計』(左は同書の旧版『色彩構成 ―配色による創造』/1972年初版)

アドリアン・フルティガー・著『サインとシンボル』

アドリアン・フルティガー『サインとシンボル』

数あるデザイン書籍の中で『配色の設計』は「色」、
『サインとシンボル』は「形」という
デザインにとっての根源的なテーマに対しての名著が2冊立て続けに復刊・和訳され、
ビンテージ価格ではなく手に入れることができるようになった現在は、
デザインの社会性と教育について改めて考えるいい機会であるともいえます。

今回の「デザインの魂のゆくえ」は、
この2冊のどちらかを「様々な形でデザインに携わる人達」に読んでいただき、対話をすることで、
様々な角度で「デザインと教育」についての本質を探っていきたいと思います。

2017年7月 小田雄太

●この連載「デザインの魂のゆくえ」の第2部にあたる「デザインと教育」篇では、今後『配色の設計』、『サインとシンボル』の2冊を軸に、研究者/グラフィックデザイナー/大学教員など、さまざまな立場の方々との対談を展開していきます。
 
対談第1回目は、小田雄太さんと同じく多摩美術大学グラフィックデザイン学科で教鞭を執る研究者の佐賀一郎さんと、『配色の設計』の著者ジョセフ・アルバースの教育者としての側面や今後の美大でのデザイン教育について話します。

「デザインと教育」篇 その1:小田雄太×佐賀一郎 へ続きます


PROFILEプロフィール (50音順)

小田雄太(おだ・ゆうた)

デザイナー/アートディレクター。COMPOUND inc.代表/まちづクリエイティブ取締役。多摩美術大学非常勤講師。 ’04年多摩美術大学GD科卒業後にアートユニット明和電機 宣伝部、その後デザイン会社数社を経て’11年COMPOUNDinc.設立。’13年に(株)まちづクリエイティブ取締役に就任、MADcityプロジェクトを始めとしたエリアブランディングに携わる。最近の主な仕事として「NewsPicks」UI/CI開発、diskunion「DIVE INTO MUSIC」、COMME des GARÇONS「noir kei ninomiya」デザインワーク、「BIBLIOPHILIC」ブランディング、「100BANCH」VI・サイン計画など。


PRODUCT関連商品

配色の設計 ―色の知覚と相互作用 Interaction of Color

ジョセフ・アルバース(Josef Albers) (著), 永原康史(監訳) (その他), 和田美樹 (翻訳)
単行本(ソフトカバー): 206ページ
出版社: ビー・エヌ・エヌ新社; 復刊版
言語: 日本語
発売日: 2016/6/24