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ナカムラクニオ 世界の果ての本屋さん

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第11回「北海道/中頓別町編」

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第11回「北海道/中頓別町編」

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今回は南米パラグアイの本屋さんを紹介する予定でしたが……
北海道の中頓別町問題をどうしても今、伝えたいと思い、急遽行ってきました!

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昨年の『文藝春秋』12月号に掲載された村上春樹さんの短編小説「ドライブ・マイ・カー」で、
すっかり有名になった中頓別町(なかとんべつちょう)。

(知らない方はこちらを→ http://dot.asahi.com/news/domestic/2014021900083.html

北海道最北部の稚内から約70kmの位置にあります。
町の8割が森。海がなく、四方を山に囲まれています。
 
 
中頓別町の隣の隣、美深町の羊牧場「松山農場」の柳生佳樹さんに案内してもらいました。

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美深町は「羊をめぐる冒険」の舞台としてファンの間では、知られた存在です。

さっそく、美深から車で向かいます。
電車は廃線になってしまい、現在は走っていません。
1時間ほどで、中頓別町に到着です。
 
 
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「中頓別町」の由来は、アイヌ語の「トー・ウン・ペッ(湖から出る川)」
頓別川の中流にあります。

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かつてはJR北海道天北線が通っていましたが、1989年廃止。
町内の学校も近年続々と廃校になっており、人口は2000人ほど。過疎化が進んでいます。

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冬はマイナス30度を下回る気温が観測され、全国一の冷え込みを記録する日も多いそうです。
 
 
僕も、中頓別町の「たばこのポイ捨て問題」についてコメントを求められることが多く、
一度は行って確認しなければ……と思っていました。

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町のキャッチコピーは「北限で出逢う感動の北海道!」。
 
 
こちらが……中頓別町役場です。

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雪に埋もれていますが、きれいな建物でした。

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雪で覆われているので、人もまばらですが、
タバコの吸い殻やゴミひとつ落ちていないきれいな町です。
喫煙率は高いですが、ポイ捨てはありません
 
 
日用品も豊富に買う事が出来ます。

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町の事なら何でも知っているという、地元の電気屋さんを訪ねてみました。

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中頓別町の「ポイ捨て騒動」について、
村上さんや『文藝春秋』さんと仲直りできないもんかね……と言っていました。
 
 
ちなみに、この町に本屋さんは一軒もないそうです
一体どこで『文藝春秋』を読むのでしょうか。

しかし、郷土資料館の中に、図書室があるそうです!

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郷土資料館と柔剣道場がこの建物に入っています。

こちらが図書室です。

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文学、歴史、絵本など充実しています。

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村上春樹さんの小説も揃っています。

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昨年、出版された『色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年』は貸し出し中。
町の方も興味を持って村上文学を読んでいるようです。

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短編集『女のいない男たち』が出たら、この図書室だけが唯一読める場所ということになります
きっと町の方々に読みつがれていくのでしょう。
 
 
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資料館をのぞいてみました。こちらが町のマーク。

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開拓時代の資料が沢山展示されています。

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かつては、林業が盛んでした。

森林火災防止にも力を入れているらしく、消防車も展示されていました。

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古い消防服です。

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こちらは、さらに古い中頓別の火消しのマーク。

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確かに、昔から防火意識の高い町であることがわかりました。
 
 
以前は砂金の採掘が盛んでした。

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今でも少し採れるそうです。

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町の名物は「砂金羊羹」です。
 
 
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蛇紋岩も採れるそうです。
 
 
中頓別鍾乳洞は、北海道指定天然記念物。

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化石も出てきます。

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石器も大量に出土しています。

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こちらは熊の骸骨。

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ハルキストなら「世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド」の一角獣に見えるかもしれません。
 
古井戸もあります。

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この町は、ハルキストでなくてもかなり楽しめます
 
 
 
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それにしても『文藝春秋』は、一体どこで手に入るのか……。
町の方に聞いてみると、ここを教えてくれました。

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本屋さんではありませんが、雑貨と雑誌が販売されているそうです。

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ありました。雑誌が沢山!

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マンガも揃っています。

そして、ついに……『文藝春秋』発見!!!

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なんだか感動的な出会いでした。

『文藝春秋』は毎月入荷。「セイコーマート」というコンビニにもあるそうです。
中頓別町では、2カ所販売している事がわかりました。

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しかし、中頓別町に本屋さんがないという事は、町の方々は、新刊の短編集が出て、町の名前が削除されていても、なかなか確認出来ない……ということになりますね
それはそれでさびしい気がしました。
 
 
 
北の大地、中頓別町。

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白樺の木に囲まれ、まるで北欧にいる気分を味わえる町です。
ぜひ一度、ファンの方もマスコミの方もここを訪ねてみて下さい。

                      
そして、村上春樹さんの短編小説『女のいない男たち』が発売されたあと、
中頓別町で、「ドライブ・マイ・カー読書会」を開催できたらいいなと思っております。
朗読会ではなく、読書会です。
朗読会は他人を発見し、読書会は自分を発見するもの。
ささやかな読書会を開催すれば、きっと何か新しい対話が生まれるのではないかと期待してます。

[世界の果ての本屋さん:第11回 了]
(次回は、「北海道/美深町編」です!)
 
 
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〈中頓別町について〉

スクリーンショット(2014-03-17 18.59.22)
郡:北海道 宗谷総合振興局 枝幸(えさし)郡
面積:398.55平方キロメートル
人口:1,900人(住民基本台帳人口、2013年12月31日)
人口密度:4.77人/平方キロメートル
町内の山:ポロヌプリ山(841m)、知駒岳(529m)、パンケ山(632m)、ピンネシリ山(704m)
町内の河川:頓別川、平賀内川、兵知安川、間の川、イッチャンナイ川、笹野川(通称:ザリガニの川)、角田の沢川
アクセス:札幌から車で約5時間、旭川から車で約3時間
(宗谷本線稚内駅-音威子府駅間で、宗谷バスの運行あり)
Wikipedia中頓別町のページより]


PROFILEプロフィール (50音順)

ナカムラクニオ(なかむら・くにお)

1971年東京生まれ。荻窪にあるブックカフェ「6次元」店主。フリーランスで美術や旅番組などのディレクターとして番組制作に携わり、これまでに訪れた国は40ヶ国以上。趣味は世界の本屋とカフェ巡り、うつわの金継ぎ。+DESIGNING「デザインガール図鑑」、朝日小学生新聞「世界の本屋さん」mille「世界の古道具屋」連載。著書に『人が集まる「つなぎ場」のつくり方~都市型茶室「6次元」の発想とは』(阪急コミュニケーションズ)がある。


PRODUCT関連商品

『女のいない男たち』

村上春樹
単行本、288ページ
出版社: 文藝春秋
発売日: 2014/4/18