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ナカムラクニオ 世界の果ての本屋さん

ナカムラクニオ 世界の果ての本屋さん
第18回「北海道/稚内編」

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第18回「北海道/稚内編」

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日本最北端の本屋さんは、いったいどこにあるのか……。
そして、どんな本が置かれているのか? 探しに行ってきました。
 
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札幌~稚内間は、JRの特急スーパー宗谷が走っており、所要時間約5時間。
最北端の稚内駅に到着します。
 
線路の最北端は、こんな感じです。
 
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駅の中で、出迎えてくれるのは、日本最北端稚内市のゆるキャラ『出汁之介(だしのすけ)』です。
 
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稚内の漁港に立ち寄るアザラシが、近海で採れる利尻昆布の美味しさの虜となり
食べ過ぎたため体の一部が昆布になってしまったという設定です。
 
 
 
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さっそく、日本最北端のポイントを目指します。宗谷岬の突端に碑がありました。
北国のシンボル北極星のイメージした三角錐のデザイン。風が強いです……。
 
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稚内市の年間の平均気温は、なんと7℃!
 
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日本最北端の食堂は、「食堂 最北端」でした。
 
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日本最北端の猫?
 
 
見るかぎりでは、本屋さんはどこにもありません。
とりあえず駅前にあるビジネスホテル「美雪」へ。
 
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なぜかフロントの横に、本棚があります
「オーナーの趣味なんです」とのこと。
本の少ない稚内だからこそ、必要な本棚を設置。
お客さんに自由に読んでほしいと、考えたそうです。
 
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松浦弥太郎とか。整理術の本とか。
ビジネスマンが読みそうな新しい本が、
ぎっしり詰め込まれています。
 
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好きな本を何冊でも部屋に持っていって良いというゆるさが素敵です
 
フロントの男性に聞いてみると、
日本最北端の本屋さんが近くにあるとのこと。
 
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さっそく行ってみました。クラーク書店さんです。
 
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行ってみてびっくり!
夕方の7時くらいだというのに、かなりにぎわっています。
 
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やはり北海道の本が、充実しています。
 
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サハリンの遺跡とか。
 
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まりも特集とか。
 
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地元の文芸誌まであります。
 
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北海道の本屋さんでよく見かける本は、やはり「熊」関係の本。
 
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北海道の花や方言の本も定番です。
 
 
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店員さんにお願いし、日本最北端のブックカバーをもらい、記念撮影。
「ここ、日本最北端の本屋さんですよね」
「そうです……」
「やはり訪ねてくる人たくさんいますか?」
「いませんね……」
「……」

話は盛り上がりませんでしたが、感激です。
次は、やはり最南端の本屋さんでしょうかね。
 
 
そういえば、日本最北端の喫茶店は、どんなお店なのか?
店員さんに聞いてみると、老舗の純喫茶「挽香」ではないかとのこと。
 
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さっそく訪ねてみると。いい感じの古いお店。
 
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ご主人は、なんと元航空自衛隊員!
「昔も今も国境を守ってるんだよ」と笑いながら、温かく接客してくれます。
お店は朝6時からあいているそうです。
 
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名物は、鍋焼きうどんです。
開業以来40年使い続けている鍋には、歴史が染み込んでいます。
 
 
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メニューにはロシア語も併記されています。
稚内は、貿易が盛んなのでロシアの船乗りさんたちがよく来るんだとか。
カルピスなど日本製のお土産をあげると、なんと半年後に戻ってきて、
ロシアのお土産を持ってきてくれるそうです。
このお店では、さりげない国際交流が日々、繰り広げられています。
 
 
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稚内の夜の海を封じ込めたような、漆黒の珈琲です。
 
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日本最北端の本屋さんを探しにきて、見つけたのは、日本最北端の「つなぎ場」。
挽香のご主人に、どんな本が好きですか?と聞くと、
「毎日、どんな知らない人が来るかワクワクして楽しいんだよ。それだけで充分」。
毎日毎日、新しい物語が生まれる国境の店は、まるで琥珀色の夢のような小説に見えました。
 
[世界の果ての本屋さん:第18回 了]
(次回の世界の果ての本屋さんは「台湾の古本屋さん巡り」です!)


PROFILEプロフィール (50音順)

ナカムラクニオ(なかむら・くにお)

1971年東京生まれ。荻窪にあるブックカフェ「6次元」店主。フリーランスで美術や旅番組などのディレクターとして番組制作に携わり、これまでに訪れた国は40ヶ国以上。趣味は世界の本屋とカフェ巡り、うつわの金継ぎ。+DESIGNING「デザインガール図鑑」、朝日小学生新聞「世界の本屋さん」mille「世界の古道具屋」連載。著書に『人が集まる「つなぎ場」のつくり方~都市型茶室「6次元」の発想とは』(阪急コミュニケーションズ)がある。


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『人が集まる「つなぎ場」のつくり方 -都市型茶室「6次元」の発想とは』

著者: ナカムラ クニオ(6次元)
単行本(ソフトカバー): 222ページ
出版社: 阪急コミュニケーションズ (2013/10/24)
発売日: 2013/10/24