INTERVIEW

マンガは拡張する[対話編]

マンガは拡張する[対話編]
加藤隆生(株式会社SCRAP代表)×山内康裕 4/6「コスプレも、物語の装置になる。」

マンガは拡張する対話編_加藤

マンガを取り巻く現況を俯瞰し、マンガと人々がいかにして出会うことができるか。マンガナイト代表・山内康裕さんが連載コラム「マンガは拡張する」全10回の中で描いた構想を、第一線でマンガ界を盛り上げる人々に自らぶつけていく[対話編]の6人目のゲストは、株式会社SCRAP代表取締役の加藤隆生さん。「リアル脱出ゲーム」という大きな器の中で、「新世紀エヴァンゲリオン」「ワンピース」「進撃の巨人」「名探偵コナン」など出版社を問わずさまざまなマンガ・アニメ作品と次々とコラボした公演を制作し、その動員数は年々増え続けています。それぞれの作品の魅力を最大限に引き出し、リアルの場での新感覚の体験に再構築していくプロに、マンガ制作サイドや作品そのものとの距離感、そしてこれから先のリアルの場での作品体験の可能性を伺ってきました。

【以下からの続きです】
1/6「『リアル脱出ゲーム』はほとんどの作品に対応できるハードなんです。」
2/6「世の中は出会いに左右されている。」
3/6「新しく作るより、既にあるものを書き換える。」

コスプレも物語の装置になる空間

山内康裕さん

山内康裕さん

山内:海外のマンガイベントをやっている方に世界でのコスプレ文化について聞いたことがあるのですが、国によってはコスプレが舞台芸術に近いものとして捉えられているところもあるようです。日本でも見方を変えれば、「テニスの王子様」(集英社)のミュージカルも“コスプレをした役者の舞台公演”と見ることもできる。コスプレイヤーと演者の境界をあいまいにできる可能性をリアル脱出ゲームに感じました。つまり、脱出ゲームの公演の中で参加者である自分がコスプレをして演者になりつつ楽しむこと。日本でも海外でも舞台と組み合わせる可能性ってもっとある気がします。

加藤:進撃の巨人」のときにはコスプレして参加したいというという問い合わせが多くて。でも更衣室などは用意できないので、「コスプレできるけど設備はありません」という方向にしようと思っていたら社内のコスプレ好きからすごい反対意見があって。「マナー違反ですよ」って。「コスプレ可」にするなら設備を用意するのは主催者責任なんだということをそこで知りました。

進撃の巨人×リアル脱出ゲームの公演「ある城塞都市からの脱出」では、コスプレでの参加も可能にした(スクリーンショット)

進撃の巨人×リアル脱出ゲームの公演「ある城塞都市からの脱出」では、コスプレでの参加も可能にした(スクリーンショット)

山内:それ、僕も初めて聞いたときには驚きました。

加藤:なので急遽そこでわざわざ追加で部屋を借りて、更衣室を用意したんですが、実際にやってみたらすごくいい効果があったんですよ。一つは単純にコスプレをしたかった人に喜んでもらえたこと。それともう一つはコスプレをしていない人にとっても、コスプレをした人が会場にいることによって、作品の世界観が高まったんですよね。コスプレが物語の装置になったんです。僕はそれが嬉しくて。お客さんも世界観を作る側に回ってくれている。こういうカルチャーは本当にすごいな、と思いましたね。

山内:参加者も演者になって、世界観を作っている。一歩引いてみると、コスプレをした参加者も演者に見えるんですね。

加藤:「巨人」のコスプレをしてきた人もいてね……ある意味では、その人は世界を壊しているとも言えるけど(笑)、そういうことも冗談として受け入れる素養が日本人のマンガカルチャーの中にはありますよね。魔王城からの脱出」というオリジナル企画があって、それは「魔王を倒した後の城から脱出する」という設定なんですが、そこでは勇者とか盗賊の格好をした参加者がいました。この場合は作品というよりは、“RPGの世界観”という共通言語の中でコスプレをしているんですね。

アジトオブスクラップ京都第3弾「魔王城からの脱出」

アジトオブスクラップ京都第3弾「魔王城からの脱出

5/6「読んで終わりではなく、もっとリアルなものにしたかった。」 へ続きます](2015年1月16日更新)

構成:松井祐輔
(2014年12月2日、株式会社SCRAPにて)


PROFILEプロフィール (50音順)

加藤隆生(かとう・たかお)

1974年岐阜県生まれ、京都府育ち。同志社大学心理学部卒。バンド「ロボピッチャー」のギターボーカル。2004年にフリーペーパー「SCRAP」創刊。08年、株式会社SCRAP設立。誌面と連動したイベント企画のひとつとして開催したリアル脱出ゲームが好評を博し拡大化する。教室やマンションの1室から夜の遊園地、東京ドームなど幅広い場所に謎を仕込む。2014年までに世界中で120万人以上を動員した。

山内康裕(やまうち・やすひろ)

マンガナイト/レインボーバード合同会社代表。 1979年生。法政大学イノベーションマネジメント研究科修了(MBA in accounting)。 2009年、マンガを介したコミュニケーションを生み出すユニット「マンガナイト」を結成し代表を務める。 また、2010年にはマンガ関連の企画会社「レインボーバード合同会社」を設立し、“マンガ”を軸に施設・展示・販促・商品等のコンテンツプロデュース・キュレーション・プランニング業務等を提供している。 主な実績は「立川まんがぱーく」「東京ワンピースタワー」「池袋シネマチ祭2014」「日本財団これも学習マンガだ!」等。 「さいとう・たかを劇画文化財団」理事、「国際文化都市整備機構」監事も務める。共著に『『ONE PIECE』に学ぶ最強ビジネスチームの作り方』(集英社)、『人生と勉強に効く学べるマンガ100冊』(文藝春秋)、『コルクを抜く』(ボイジャー)がある。http://manganight.net/