マンガを取り巻く現況を俯瞰し、マンガと人々がいかにして出会うことができるか。マンガナイト代表・山内康裕さんが連載コラム「マンガは拡張する」全10回の中で描いた構想を、第一線でマンガ界を盛り上げる人々に自らぶつけていく[対話編]の6人目のゲストは、株式会社SCRAP代表取締役の加藤隆生さん。「リアル脱出ゲーム」という大きな器の中で、「新世紀エヴァンゲリオン」「ワンピース」「進撃の巨人」「名探偵コナン」など出版社を問わずさまざまなマンガ・アニメ作品と次々とコラボした公演を制作し、その動員数は年々増え続けています。それぞれの作品の魅力を最大限に引き出し、リアルの場での新感覚の体験に再構築していくプロに、マンガ制作サイドや作品そのものとの距離感、そしてこれから先のリアルの場での作品体験の可能性を伺ってきました。
リアル脱出ゲームは一つのハードなんです
山内康裕(以下、山内):今日はよろしくお願いします。今回のゲストの加藤さんは株式会社SCRAPの代表であり、「リアル脱出ゲーム」の火付け役です。最近ではマンガ作品とコラボした企画も多く手がけていらっしゃるので、今日はマンガと「場」との関係をテーマにお話できればと思っています。実は僕、リアル脱出ゲームには頻繁に行っていて、「ワンピース」や「進撃の巨人」とコラボした公演にも行きました。なかなかゴールするのは難しいですね(笑)。
加藤隆生(以下、加藤):そうなんですか! ありがとうございます。
山内:そもそも、リアル脱出ゲームがマンガ作品とコラボするようになったきっかけはなんだったんでしょうか。
加藤:マンガと言っていいかどうかはわからないですが、最初のコラボは「エヴァンゲリオン」(「ある使徒からの脱出」、2011年11月)ですね。「エヴァンゲリオン」ってコンテンツの横、縦の展開がすごく多いじゃないですか。それを担当されているスタッフの方も、誰もやっていないような革新的なものをつかむスピード、それを実現する熱量がすごく高くて、僕らにとっても素晴らしい仕事になりましたね。その企画がきっかけになって、他の作品とのコラボのお話もいろいろいただくようになりました。
山内:今は「ワンピース」(集英社)や「進撃の巨人」(講談社)、「名探偵コナン」(小学館)など、さまざまなマンガ作品とコラボされていますね。コラボ作品はどうやって選ばれているんですか。
加藤:こちらから企画を持ち込んだことはほとんどないんです。どちらかというとSCRAPは容れ物、ハードだと思っています。そこでどのソフトを入れるかという考えになるんですが、うちのハードはほとんどのソフトに対応できるし、いいソフトも世の中に無数にあるんです。だから、そもそもソフトがうちを好きになってくれないことには話が始まらないと思っています。だからこちらから選ぶのではなく、まずは相手に選んでいただいてから交渉が始まる、というケースが多いですね。
山内:依頼してくるのはどういった方なんですか。マンガ作品一つとっても、マンガ家や編集者、出版社やアニメ制作会社などいろんな方が関わっていますよね。
加藤:依頼はアニメ制作会社や企画会社よりも、出版社の編集部から直接持ち込まれることが多いですね。
山内:そうなんですね。僕もいろんな編集者の方とお話させてもらっていますが、編集者って脱出ゲームのような企画が好きな方が多いんです。マンガ家さんと一緒になって作品を作っていく方々なので、新しいことや今までなかったものへの興味が強いですね。
加藤:そういう側面もあるのかもしれません。「ワンピース」はアニメ制作会社からの依頼でしたが、それ以外は編集者がきっかけですね。
[2/6「世の中は出会いに左右されている。」へ続きます]
構成:松井祐輔
(2014年12月2日、株式会社SCRAPにて)
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