COLUMN

まちづクリエイティブ 寺井元一×西本千尋×小田雄太 アソシエーションデザイン つづく世界のつくり方

まちづクリエイティブ 寺井元一×西本千尋×小田雄太 アソシエーションデザイン つづく世界のつくり方
第3.5回「まちづクリエイティブの考えるまちづくり ドキドキ7」

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第3.5回 「まちづクリエイティブの考えるまちづくり ドキドキ7」

 こんにちは。暑い日が続きますが皆様いかがお過ごしですか。さて、今回は1〜3回目にわたってお話したまちづクリエイティブの考えるまちづくりについてのまとめを行います。
 

(1)
「つづく世界」をつくる

 かつて、私たちがこの世界にやってきたように、今日もこの世界は新しくやってくる人を迎えます。まちづくりは一過性のものでなく、新参者に開かれた「つづく世界」をつくる活動です。
 
 
(2)
国家と個人の関係性

 私たちは、そうした世界をつくろうといった際に、無意識に国家に依存しがちで、国家はリヴァイアサンのように大きくなってしまいました。それに対して、個人の力はあまりに小さい。豆粒みたいに。巨大な国家はそうした個人の「多数」の声を聴いたと見做し、しばしば「みんなのため」のまちづくりが謳われます。でも、本当にそれが「みんなのため」なのか、誰も適切なチェックが出来ません。「みんなのため」に行われたまちづくりが「誰のためにもならない」まちづくりになってしまったとき、わたしたちは国家(行政)のせいにするのは、見当違いなことです。
★「リヴァイアサン」について、詳しくは第3回へ。
 
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(3)
「みんなのため」のまちづくりとの決別

 だけど「みんなのため」の「まちづくり」や「地域おこし」と聴いて、それはよくないことだと思う人はとても珍しい。ただし、このように多くの人がきっといいことであると感じて、善意と同じ色をした無関心が蓄積すると、その中に「善意の間違い」が生まれることがあります。そしてその総体は、巨大な国家の力を介して暴走し、引き返せないほど、よくない事態を引き起こすかもしれません。よくない事態とは、個人がこれ以上、無力化して、自由や自律性をまったくもって失ってしまうことです。
 
 
(4)
国家と個人の間の中間領域の必要

 そこで、巨大な国家に代わって「つづく世界」をつくるためには中間領域のデザインが大切です。かつて中間領域では、コミュニティが注目されてきたけれど、まちづ社ではコミュニティではなくアソシエーションに注目します。その理由は、「みんなのため」を一元的な価値観(かつてのコミュニティ)のもとでつくるのではなく、アソシエーションの要素である個人個人の活動の自発性や自律性でつくることが大切であると考えるためです。
★「コミュニティ」と「アソシエーション」の違いについて、詳しくは第2回へ。
 
 
(5)
さよなら、コミュニティ施策

 ところで、コミュニティって何でしょう。コミュニティは元来、自然発生的に出来上がる、人がともに集まることでつくりあげる集まりであり、「つづく世界」の土台になる、とても重要な文化や伝統や価値観を醸成するものです。
 
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 だけれど、国家によるコミュニティ再生施策は、ちっとも功を奏すことなく、元来、自然発生的に出来上がるコミュニティの多くを再生させることができませんでした。私たちは国家に依存して行政のわるくちを言ったり、コミュニティデザインに代表されるような、行政の委託に基づいたワークショップ等ではなく、それらとは「別のやり方」で、コミュニティを自律的に再構築する必要があると考えました。
 
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(6)
アソシエーションへの着目

 「別のやり方」、それがまさしく当連載のタイトル「アソシエーションデザイン」です。アソシエーションはコミュニティとは異なり、共通の目的の達成のために、自発的に作ることができるものです。私たちが欲しいのは、国家の施策対象としての衰退したコミュニティの再生ではなく、自分たちの自発的な活動の結果、ほんとうに自分たちに似合う伝統や規律や文化です。それをつくれるのは(国家ではなく)アソシエーションであると私たちは考えています。
 
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(7)
ユートピアとリアリティの架橋

 さいごに。自発的な活動を愛していて、そういうものをベースとしたまちがいいという願望、ユートピア。一方、現行の秩序や伝統、課題を抱えるリアリティ。前者はアソシエーションで、後者はコミュニティに近いと思います。前者の大切さを強調する私たちは、一見、後者の現実主義的な利害感覚を持っていないようにみえるかもしれません。でも、そうではないんだよということを書き記して、3.5回を閉じたいと思います。
 
 私たちは常に課題ある現実と向き合うことを引き受け、現実とアソシエーション的な願望の架橋を自律的に試みます。
 
 さて、眩しかった8月ももう終わり!
 
 まちづ社は、今月より新しいメンバーを迎え、にぎやかになりました。また、9月6日に4周年パーティがあり、新規事業のお披露目や、この連載のトークショーを行います。
 
 まちづ社は4年前から、松戸駅の駅前半径500メートル圏をMAD Cityと名付け、同地区を核として、旧・原田米店、MADマンション、いろどりマンションなど「DIYsのための改装可能な物件」を借り受け、貸し出す取組を中心に活動してきました。現在、150人を超えるクリエイターやアーティスト、子育て世代が移住したり、アトリエや工房をもったり、店を構えたりしながら、くらしています。これまでどんな取組をしてきたの? これからどういったことをしていくの? まちづ社の歩みをベースにこれからの展開について、ドキドキ、ワクワク話し合えたらと思っています。MAD Cityのツアーも開催致しますので、みなさま、是非足を運んでいただければうれしいです。
 
 では、みなさま、今日も元気でお過ごしください。
 まちづクリエイティブがお伝えしました。
 
[アソシエーションデザイン つづく世界のつくり方:第3.5回 了]
執筆:アップルパイペロリ
 
 

MAD City4周年トークセッション『DIYsによるまちづくり』第一部/第二部
開催日:9月6日(土) 第一部:15:00~17:30(開場14:45)、第二部:19:30~22:00(開場19:15)
出演:第一部:禿真哉(トラフ建築設計事務所)、ナカムラケンタ(日本仕事百貨)、堤英幸(バイチャリ)、森純平(建築家)、寺井元一 第二部:小野裕之(greenz.jp)、後藤知佳(dotplace.jp)、寺井元一、西本千尋、小田雄太
参加費:第一部:1,500円(1ドリンク付) 第二部:2,500円(フード付)
会場:FANCLUB
アクセス:千葉県松戸市本町20-10 ルシーナビル7F(JR常磐線/新京成線松戸駅から徒歩2分)
主催:株式会社まちづクリエイティブ
お問い合わせ:TEL:047-710-5861 MAIL:info(a)machizu-creative.com
★詳しくはこちらへ。


PROFILEプロフィール (50音順)

まちづクリエイティブ(まちづくりえいてぃぶ)

松戸を拠点としたMAD Cityプロジェクト(転貸不動産をベースとしたまちづくり)の他、コミュニティ支援事業、DIYリノベーション事業を展開するまちづくり会社。 http://www.machizu-creative.com/ https://madcity.jp/

寺井元一(てらい・もとかず)

株式会社まちづクリエイティブ代表取締役、アソシエーションデザインディレクター。早稲田大学卒。NPO法人KOMPOSITIONを起業し、アートやスポーツの支援事業を公共空間で実現。まちづクリエイティブ起業後はMAD Cityを立ち上げ、地方での魅力あるエリアの創出に挑んでいる。

小田雄太(おだ・ゆうた)

デザイナー、アートディレクター。COMPOUND inc.代表、(株)まちづクリエイティブ取締役。多摩美術大学非常勤講師。2004年多摩美術大学GD科卒業後にアートユニット明和電機 宣伝部、その後デザイン会社数社を経て2011年COMPOUND inc.設立。2013年に(株)まちづクリエイティブ取締役に就任、MADcityプロジェクトを始めとしたエリアブランディングに携わる。最近の主な仕事として「NewsPicks」UI/CI開発、diskunion「DIVE INTO MUSIC」、COMME des GARÇONS「noir kei ninomiya」デザインワーク、「BIBLIOPHILIC」ブランディング、「100BANCH」VI・サイン計画など。

西本千尋(にしもと・ちひろ)

株式会社まちづクリエイティブ取締役、ストラテジスト。 埼玉大学経済学部、京都大学公共政策大学院卒業。公共政策修士(専門職)。株式会社ジャパンエリアマネジメント代表取締役。公共空間の利活用、古民家特区などの制度づくりに携わる。