COLUMN

まちづクリエイティブ 寺井元一×西本千尋×小田雄太 アソシエーションデザイン つづく世界のつくり方

まちづクリエイティブ 寺井元一×西本千尋×小田雄太 アソシエーションデザイン つづく世界のつくり方
第8回「地域アート/アートでまちづくり に関する一考」

ad2014

第8回 「地域アート/アートでまちづくり に関する一考」

 あけましておめでとうございます、まちづクリエイティブです。連載第8回目、2015年のスタートは、昨年の『すばる』の藤田氏の寄稿 *1 以降、さまざまなところで同テーマに関して触れられてきました *2 地域アートに関しての考察となります。本年もよろしくお願いします。

▼地域アートに関する見解

 まずは冒頭で触れた、藤田氏の地域アートに対する見解を簡単にまとめてみます。おおまかには、日本の現代アートのなかで昨今とくに隆盛な「地域アート」 *3 が、現代アートの本質的な価値を生み出さないものになっているのではないか、という批判です。
 その理由として、第一に、地域アートのコンテンツが現代アートの一部として「関係性」をモチーフに組み立てられることが多いことが挙げられています。確かに「関係性の美学」はかつて現代アートにおける新しい枠組みの提示として評価されたが、SNSなどの関係性のインフラが発展し日常的になってしまった今では、単なる現状追認になりつつあるのではないか、そうだとすればアートとしての価値が薄れているという意見です。
 次に、地域アートへの評価が行われていない、という指摘がなされています。昨今、地域アートの主なクライアントは行政となりつつありますが、行政は地域アートを地域活性化の道具として理解していてアートとしての価値を評価しない/できないし、地域アートにおける現代アートはどこまでも現在進行中であるものが多く、そもそもアート内でも評価しづらいことがまかり通っているというものです。結果として、(評価がない以上)地域活性化するものが地域アートであり現代アートであるとみなす逆転現象が起きるのではないか、本末転倒に陥るのでは、という提起がなされています。

▼まちづクリエイティブ社の考え

 さて、上記のような地域アートをめぐる議論は、基本的にはアート側で行われているやり取りです。その舞台で日常的に活動する、まちづくり側として、私たちの考えを書いてみたいと思います。

 ◇地域アートの始まりと今
 そもそも現在言われている地域アートの代表的な先行事例として、越後妻有の「大地の芸術祭」がしばしば挙げられます。こういった地域アートは実際に多くの市町村で採用され、第一義的には行政による委託事業となっています。行政的には流行りの施策として採用しやすい、観光やシティプロモーションの関連事業であり、一方でアーティストにとっては利益とキャリアアップ機会を得るための仕組みに収斂しつつあるように感じます。つまり地域アートは、地域活性化という社会ニーズと公共事業利権に与するようになったといえます。そうした地域アートの現状の善悪は個々の価値観に譲るとして、いずれにしても「割り切られた」場であることは明確化されるべきでしょう。地域アートにおける多くのアーティストの存在意義は、地域の課題解決(活性化)と利益を売りにするデザイナーのように感じられ、アートの本質とは確かに別個の事業だと私たちは考えます。

 ◇架け橋の功罪
 そして現状、地域アートへの参加アーティストが地域活性とまちづくりを容易に語りがちであるというところに大きな問題があると考えます。地域活性とは、政治や経済の領分であり、あくまでも成果によって判定されなければなりません。一方、アートはその性格上、そうでない部分を色濃く持ち合わせています。この視点からも両者の架橋は容易ではないにもかかわらず、「アートもまちづくりもできるアーティスト」はアート好きな一部の市民、典型的にはアートに関心があるボランティアを「みんな」と位置づけて盾にしながら、アートと地域の架け橋という立場をとっています。
 彼らはそこで自分たちのことをデザイナーではなくアーティストを名乗り、地域アートを利用してきた、とも言えると思います。利用しあう関係性は持続する事業モデルには必要なことです。しかし残念ながらまちづくり側がアートの中核になれないように、アート側にとってもまちづくりの中核を担うことはできない、というのが私たちが感じることです。地域アートに必要なプレイヤーは「アートができて、まちづくりもできるアーティスト」ではなく「まちづくりができて、アートもできるデザイナー」が適切なのであり、その意味でもっとも優秀な現在の地域アートの旗手は山崎亮氏のような方なのかもしれません。

 今、地域アートがアートでもなくデザイナーでもない人材を生み出す仕組みになってしまっているのだとしたら、まちづくり側でも、それらを利用して「アートでまちづくり」といったテーマを安易に用いて、まちづくりを行ってきたことも反省しなければなりません。地域アートに生きるアーティストは、アートで地域活性化に奉仕すると言って新たな既得権益の保持者となるのではなく、アートを名乗るのであれば地域アートの枠組み自体を更新するべきであり、一方、同様にまちづくりサイドも、まちづくりを名乗るのであれば「アートでまちづくり」の枠組み自体を更新すべきであると考えます。
 尚、同分野には厳密に定義された手法や概念、比較可能なデータがほとんど存在しておらず *4 、本稿も直観的な意見の域を出るものとは決して言いがたいです。したがって、引き続き、私たちは今後もみなさんとこのテーマについてお話していきたいと思っています。次回も元気でお会いしましょう。まちづクリエイティブがお送り致しました。

[アソシエーションデザイン つづく世界のつくり方:第8回 了]
執筆:アップルパイペロリ


*1:昨年の『すばる』の藤田氏の寄稿

藤田直哉「前衛のゾンビたち―地域アートの諸問題」、『すばる』2014年10月号、集英社

*2:地域アートをめぐるさまざまな言及
池田剛介「アートと地域の共生についてのノート」(MAD City、2014年12月)
https://madcity.jp/2014/12/note01_ikeda/
藤田直哉、星野太「まちづくりと「地域アート」──「関係性の美学」の日本的文脈」(10+1 web site、2014年11月)
http://10plus1.jp/monthly/2014/11/issue-02.php
小崎哲哉「リレーショナル・アーキテクチャー」(REALKYOTO、2014年12月)
http://www.realtokyo.co.jp/docs/ja/column/outoftokyo/bn/ozaki_263/

*3:地域アート
藤田氏は地域アートを、国際展やアートプロジェクトなど地域性を絡めたアートイベント業態を広く含んだものとして定義しており、その是非にはここでは触れない。

*4:地域アートに関する定義、データ
熊倉純子「日本型アートプロジェクトの歴史と現在」(Tokyo Art Research Lab)などにおいては、同テーマにおいての概念や課題の一定の整理がなされているが、事例紹介や対談(鼎談)の域を超えるものではない。


PROFILEプロフィール (50音順)

まちづクリエイティブ(まちづくりえいてぃぶ)

松戸を拠点としたMAD Cityプロジェクト(転貸不動産をベースとしたまちづくり)の他、コミュニティ支援事業、DIYリノベーション事業を展開するまちづくり会社。 http://www.machizu-creative.com/ https://madcity.jp/

寺井元一(てらい・もとかず)

株式会社まちづクリエイティブ代表取締役、アソシエーションデザインディレクター。早稲田大学卒。NPO法人KOMPOSITIONを起業し、アートやスポーツの支援事業を公共空間で実現。まちづクリエイティブ起業後はMAD Cityを立ち上げ、地方での魅力あるエリアの創出に挑んでいる。

小田雄太(おだ・ゆうた)

デザイナー/アートディレクター。COMPOUND inc.代表/まちづクリエイティブ取締役。多摩美術大学、横浜美術大学非常勤講師。 ’04年多摩美術大学GD科卒業後にアートユニット明和電機 宣伝部、その後デザイン会社数社を経て’11年COMPOUNDinc.設立。’13年に(株)まちづクリエイティブ取締役に就任、MADcityプロジェクトに参画。最近の主な仕事として「NewsPicks」UI/CI開発、diskunion「DIVE INTO MUSIC」、COMME des GARÇONS「noir kei ninomiya」デザインワーク、「東京ONEPIECEタワー」CI/サイン計画、「BIBLIOPHILIC」ブランディングなど。

西本千尋(にしもと・ちひろ)

株式会社まちづクリエイティブ取締役、ストラテジスト。 埼玉大学経済学部、京都大学公共政策大学院卒業。公共政策修士(専門職)。株式会社ジャパンエリアマネジメント代表取締役。公共空間の利活用、古民家特区などの制度づくりに携わる。


PRODUCT関連商品

すばる2014年10月号

出版社: 集英社; 月刊版
発売日: 2014/9/5