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まちづクリエイティブ 寺井元一×西本千尋×小田雄太 アソシエーションデザイン つづく世界のつくり方

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第7回「そもそも『エリアマネジメント』とは? ――ポスト『国土の均衡ある発展』の行方」

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第7回 「そもそも『エリアマネジメント』とは? ――ポスト『国土の均衡ある発展』の行方」

 みなさん、こんばんは。まちづクリエイティブ第7回です。師走、わたしたちの国では解散総選挙。空前絶後の空々しさで街頭の公共空間がいっぱいですが、ついに12月8日に、仏経済学者のピケティによる話題騒然のヒット作“Capital in the Twenty-First Century”の待望の日本語訳が出て(みすず書房から)、民主主義と資本主義のまさに「日常の現れ」であるまちづくり分野にとっても、とても楽しみだったり。そんなこんなな、師走ですが、みなさんはいかがお過ごしですか?

 今回は、まちづ社が大切にしているまちづくりの概念のひとつである「エリアマネジメント」についてお話したいと思います。

▼エリアマネジメントって? 背景とその概念

 さて、はじめに、我が国のエリアマネジメントの誕生背景を遡ってみてみたいと思います。戦後、日本のまちづくりの全体戦略というのは、基本的には政府が全国開発総合計画(全総)というものを立て、『国土の均衡ある発展』 *1 という理念のもとで実施されてきました。その結果、私たちは日本の隅々にまで高速道路、空港、新幹線を見ることができます。この『国土の均衡ある発展』という理念は、経済合理性や効率性では説明がつかないプロジェクトに正統性を与えるものでしたが、そのために投じた多額の公共投資は財政を圧迫させ、人口減少時代、その維持管理コスト含め、重くのしかかっています。このような状況のもと、「今後、政府は全国の総合計画を立てない。地域が主体性を持って個性と活力をつくるべし。」 *2 という政策決定がなされました。エリアマネジメントは、こうした背景より生まれた「地域や個性を活かした、地域主体」のまちづくり要請から誕生した概念です。

▼エリアマネジメントの具体的事例(国内)

 具体的にエリアマネジメントとは、エリアは自治体の範囲よりも、より狭い範囲を対象として、行政がすべての計画をし、執行するのではなく、その「地域の担い手」が持続的な発展のための総合計画を立てて、マネジメントしていくというものとされています。

 現在、エリアマネジメントとよばれる事例は、大都市では、大丸有 *3 や虎ノ門地区、汐留地区、横浜黄金町、大阪うめきた地区、福岡天神地区などに、都市近郊では、松戸や埼玉県の越谷のような住宅地や団地に、また、地方都市の歴史地区では兵庫県篠山市や福岡県八女市の福島地区などに拡がっています。

 大都市や大都市近郊郊外のエリアマネジメントと、地方都市や過疎地域などのエリアマネジメントとは言わずもがな、全く異なる手法です。具体的な取組内容としては、前者は清掃、防犯、環境活動、イベントなどを、後者は定住人口の増加、就業支援、空き家活用を主な取組としています。尚、MAD Cityはエリアとしては大都市近郊の郊外(前者)に属しますが、定住人口の増加、就業支援、空き家活用といった後者的な手法を用いながら、居住者のアソシエーションに基づく自治的な取組を行ってきています。

▼今後のまちづ社のエリアマネジメント

 冒頭、ピケティに触れましたが、私たちは自分たちの活動の理念でもある「つづく世界」のために、眼前の民主主義を耕し、その自治を支えることのできる経済モデルをつくるということしかないと思っています。そのために、どういうまちづくり、エリアマネジメントが要るのか。この極めてマイクロな地区の取組が、「持続的であり」「行政依存ではなく、主体的に」「自立・自律した」「国一律のまちづくりではなく、地域の資源や特性を活かした多様な」とは、本当はどういうことなのか。別に空き家や空き部屋がただ埋まればいいわけでも、観光客が増えればいいだけでもない。この国でおそらく誰からも答えが与えられていないことですから、はりきって攻めて行こうと思っています。

みなさん、師走です。どうかお体お気をつけて。また次回元気でお会いしましょう。
まちづクリエイティブがお送りしました。

[アソシエーションデザイン つづく世界のつくり方:第7回 了]
執筆:アップルパイペロリ


*1:『国土の均衡ある発展』

国土法に示された「国土利用の過度の地域的偏在に伴う諸問題を是正しつつ国土が発展すること」。「人口と産業の大都市集中に伴う諸問題を是正」することが目指された。

*2:地方の主体性を生かした社会資本整備への転換
「国土の均衡ある発展」を目標に国によって推進されてきた全国総合開発計画(全総)は1998年、第5次をもって終了。また、2001年6月、小泉政権における「今後の経済財政運営及び経済社会の構造改革に関する基本方針」において、「国土の均衡ある発展」について「本来、地域の個性を活かした考え方であったが、現実には、これまでややもすれば、全国どこへ行っても同じような特徴のない地域が形成されがちであった」とされ、「個性と活力ある『地方』の構築を目指して、国の関与する事業は限定し、地方の主体性を生かした社会資本整備に転換していく」と記載された。

*3:大丸有
大手町・丸の内・有楽町地区のこと、大丸有エリアマネジメント協会というエリアマネジメント組織が同地区のエリアマネジメントを担っている。日本の代表的な団体。


PROFILEプロフィール (50音順)

まちづクリエイティブ(まちづくりえいてぃぶ)

松戸を拠点としたMAD Cityプロジェクト(転貸不動産をベースとしたまちづくり)の他、コミュニティ支援事業、DIYリノベーション事業を展開するまちづくり会社。 http://www.machizu-creative.com/ https://madcity.jp/

寺井元一(てらい・もとかず)

株式会社まちづクリエイティブ代表取締役、アソシエーションデザインディレクター。早稲田大学卒。NPO法人KOMPOSITIONを起業し、アートやスポーツの支援事業を公共空間で実現。まちづクリエイティブ起業後はMAD Cityを立ち上げ、地方での魅力あるエリアの創出に挑んでいる。

小田雄太(おだ・ゆうた)

デザイナー、アートディレクター。COMPOUND inc.代表、(株)まちづクリエイティブ取締役。多摩美術大学非常勤講師。2004年多摩美術大学GD科卒業後にアートユニット明和電機 宣伝部、その後デザイン会社数社を経て2011年COMPOUND inc.設立。2013年に(株)まちづクリエイティブ取締役に就任、MADcityプロジェクトを始めとしたエリアブランディングに携わる。最近の主な仕事として「NewsPicks」UI/CI開発、diskunion「DIVE INTO MUSIC」、COMME des GARÇONS「noir kei ninomiya」デザインワーク、「BIBLIOPHILIC」ブランディング、「100BANCH」VI・サイン計画など。

西本千尋(にしもと・ちひろ)

株式会社まちづクリエイティブ取締役、ストラテジスト。 埼玉大学経済学部、京都大学公共政策大学院卒業。公共政策修士(専門職)。株式会社ジャパンエリアマネジメント代表取締役。公共空間の利活用、古民家特区などの制度づくりに携わる。


PRODUCT関連商品

21世紀の資本

トマ・ピケティ (著), 山形浩生 (翻訳), 守岡桜 (翻訳), 森本正史 (翻訳)
単行本:728ページ
出版社:みすず書房
発売日: 2014/12/8