COLUMN

まちづクリエイティブ 寺井元一×西本千尋×小田雄太 アソシエーションデザイン つづく世界のつくり方

まちづクリエイティブ 寺井元一×西本千尋×小田雄太 アソシエーションデザイン つづく世界のつくり方
第6回「MAD City エリア範囲の設定 ――まちづくりの最大のパートナーとしての歴史」

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第6回 「MAD City エリア範囲の設定 ――まちづくりの最大のパートナーとしての歴史」

 まちづクリエイティブのお送りする「アソシエーションデザイン」第6回目です。

 安倍政権の新施策「地方創生」が始まるみたい。限界集落を活性化、空き家を活性化、商店街を活性化、リノベーションで活性化、アートで活性化、歴史的建築物で活性化。本で活性化、自転車で活性化、サーカスで活性化。

「プロセス重視」の、「多様な人に開かれた」、「みんなとつながりをつくる」地域活性化のための何かをいくらしようとも、未来の子どもたちからお金を調達しながらも、決して「地域活性化」はやってこないという、非常にエグい時代がやってきました。

 さて、そんなバブった「地域活性化」狂乱時代に今日も文字通りMADなCityづくりに勤しむまちづ社ですが、皆さんいかがお過ごしでしょうか。

▼まちづくりに、なぜエリア設定が必要なのか

 第6回目の今日は、「MAD Cityエリア範囲の設定」について書きたいと思います。MAD Cityの範囲がおよそ半径500メートル圏に設定され、その中の「空き」不動産を借上げ、貸出す(転貸する)ことで、新しい入居者を招くことにより形成された新しいエリアであることには既に何度か触れてきました。

 私たちは今日はこのエリアについてより詳しくみていきます。寺井が、この半径500メートルという範囲を設定したのは

 ・生活圏内に入居者が集まることで日常的な関係性が生まれる
 ・小投資で効果をあげるためにできるだけエリアを絞りたい
 ・遊休物件の転貸管理のコストを圧縮したい
 ・地主や地元の人々とのコミュニケーションがしやすい
 ・ブランディングの効果(小さいエリアのほうが響くと思った)
 ・徒歩で日常使用するコンビニ商圏がだいたい500mと聞いて
 ・(地図上で半径500メートルで円をつくると)ちょうど江戸川に接するぐらいの円だった

 という理由からとのこと。手前味噌で恐縮ですが、いい選択肢だったな *1 と思っています。

 半径500メートル圏内というのは、歩くことが出来る、入居する人たちがすぐに会うことが可能な範囲です。クラスターとして、多様な職種の居住者や就業者による集積密度の高まりがどれほど私たちをワクワクさせてくれるのかは、東京やNYといった大都市の魅力、最近だったらポートランド?を想像するときっとすごくわかりやすいのではないかと思います。やっぱり、ぎゅっと狭いエリアに、ひとのクリエイティビティが溢れるのは、活力のほかならないし、すごく刺激的な魅惑です。歩いていくことができる範囲に、日常機能(住む、働く、買い物をする等)を集積させていくことは、人と人との接触頻度を高め、コミュニケーション、文化を生むことを手助けします。そして、まちづ社にとっては、ビジネスの観点からも、物件を仕入れ、その後の管理の効率化の観点から、エリアの設定は非常に大切です。小資本しか持たない私たちは、大手デベロッパーのように更地にして、大きな複合施設をドカンと建てるといった大規模な再開発をしない(できない)からこそ、まちづくりの対象とするエリアをどのように設定するかは、とても重要な鍵となってきます。

▼最大のまちづくりパートナーである歴史

 もっと……このエリア設定のヒミツについて書きたいのですが、紙面も限られてまいりましたので、最後にまちづ社のエリアの設定のやり方としてもっとも特徴となる点を記し、第6回目の連載を閉じたいと思います。

 MAD Cityは既成市街地である、水戸街道の千住宿から2つ目の宿場町である松戸宿の範囲に設定 *2 されています。

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 代表の寺井はMAD Cityをつくるほんとうに初期の頃からこのことを決めていたけど、寺井が本能的に直観でなぜそうしたかは何度聞いても、この土地を愛しすぎる強烈な町衆の存在の話 *3 をして大盛り上がりして終わってしまうので、結局、わからずじまいという。まあ、それは冗談としても、自分たちがまちづ社で出来ること「以外」のまちづくりをしてきた最大のパートナーとして、歴史を選んだのは間違いない。これが吉と出るか、凶と出るかは、今後のMADなお楽しみであります。

 もうすっかり秋で、袖がないダウンのヤツ(モコモコのベスト)が欲しい私たちですが、みなさまも風邪などひきませぬよう。MAD Cityでお会いしましょう。

[アソシエーションデザイン つづく世界のつくり方:第6回 了]
執筆:アップルパイペロリ


*1:半径500メートルという範囲

いいエリア(界隈)をつくっているまちづくりをされている、仏生山温泉の岡さんや、松山の三津浜地区の岡部くん(横浜の寿町でも活動)も、一定エリアを限定して、1つずつ建物を直し、新しい仲間と店づくりや、宿泊施設づくりをして日常を着実に楽しくしています。理論的には少し複雑なので、一概に支えとなる理論を探すことは難しいですが、ペリーの近隣住区論の人口規模のイメージ(小学校区くらいの狭い範囲)、ハワードの田園都市論のイメージ、ジェイコブスの近隣住区(もっと自己完結せず、広くダイナミズムを許容する範囲)などMAD Cityと近しいエリア概念がいくつか存在しています。

*2:MAD Cityと松戸宿の関係
厳密に記すと、この図では、MAD Cityの(半径500mの)南部エリアが、松戸宿の北側50%ぐらいでもあるのです。だから、松戸宿とMAD Cityの範囲は完璧にイコールではなく「被って」いるというのが正確です。ちなみにMAD Cityの範囲の設定当時と比較し、現在の実態としてのMAD Cityエリアは南北に少し伸びた楕円形になってきていて、その際には松戸宿はほぼ包含されています。事業開始当時にMAD Cityエリアを半径500mで定めた後に、4年という時間を経、実務的に松戸宿を包含するように沿わせていった、というのが、MAD Cityの現場で起きたことです。

*3:この土地を愛しすぎる強烈な町衆
松戸は江戸時代、天領でした。
http://www.city.matsudo.chiba.jp/miryoku/kankoumiryokubunka/rekisi-bunka/rekishi/chiikinorekishi/matsudo.html
古くから住む町衆の中には、明治政府以降、近代政府、今の松戸市当局のまちづくりの成果よりも、江戸時代のまちづくりの資産に深く敬意を抱く方が多数いらっしゃいます。街道沿いに呉服屋、和菓子屋、提灯屋、料理店(天丼、蕎麦)など、古くから続く老舗が残るのも大きな特徴です。


PROFILEプロフィール (50音順)

まちづクリエイティブ(まちづくりえいてぃぶ)

松戸を拠点としたMAD Cityプロジェクト(転貸不動産をベースとしたまちづくり)の他、コミュニティ支援事業、DIYリノベーション事業を展開するまちづくり会社。 http://www.machizu-creative.com/ https://madcity.jp/

寺井元一(てらい・もとかず)

株式会社まちづクリエイティブ代表取締役、アソシエーションデザインディレクター。早稲田大学卒。NPO法人KOMPOSITIONを起業し、アートやスポーツの支援事業を公共空間で実現。まちづクリエイティブ起業後はMAD Cityを立ち上げ、地方での魅力あるエリアの創出に挑んでいる。

小田雄太(おだ・ゆうた)

デザイナー/アートディレクター。COMPOUND inc.代表/まちづクリエイティブ取締役。多摩美術大学、横浜美術大学非常勤講師。 ’04年多摩美術大学GD科卒業後にアートユニット明和電機 宣伝部、その後デザイン会社数社を経て’11年COMPOUNDinc.設立。’13年に(株)まちづクリエイティブ取締役に就任、MADcityプロジェクトに参画。最近の主な仕事として「NewsPicks」UI/CI開発、diskunion「DIVE INTO MUSIC」、COMME des GARÇONS「noir kei ninomiya」デザインワーク、「東京ONEPIECEタワー」CI/サイン計画、「BIBLIOPHILIC」ブランディングなど。

西本千尋(にしもと・ちひろ)

株式会社まちづクリエイティブ取締役、ストラテジスト。 埼玉大学経済学部、京都大学公共政策大学院卒業。公共政策修士(専門職)。株式会社ジャパンエリアマネジメント代表取締役。公共空間の利活用、古民家特区などの制度づくりに携わる。