第14回「北アフリカ/モロッコ編」
モロッコは、フォーヴィズム絵画のような土地です。
アンリ・マティスは、モロッコの港町タンジェを訪れ、
その鮮やかな色彩に衝撃を受けて「野獣のような」絵画を生み出しました。
ジミヘン、バロウズ、大竹伸朗さんなどが魅了されたのも納得です。
果てしなく続くサハラ砂漠。どこまで行っても何も見えません。
こんなところに本屋さんは、あるのでしょうか……。途方に暮れてしまいます。
僕が巻いているのは、ベルベル人のトレードマーク、青いターバン。
顔を砂や強い日差しから守ってくれる優れものです。
フェルメールが「青いターバンの少女」をなぜ描いたのか、少しわかった気がしました。
とにかく美しい色です。
虫除けにもなり、機能的です。
ラクダに乗ること、3日。
股が痛くなって結構、つらいです……。
砂漠の中で食べる食事も、常に砂が口の中でじゃりじゃりと混ざり、
「砂のスープ」を食べているような感じ。景色も特に変わりなし。
本屋さんどころか、本も見かけません……。
しかし、地元のガイドさんに、おもしろい物を見せてもらいました。
サハラ砂漠に住むトゥアレグ族の「ティフィナグ文字」です。
モロッコでは、今でも一部の小学校でこの文字を教えています。
ティフィナグ文字の形は古代から受け継がれたもので、
自分たちの民族的アイデンティティを主張するために使われるのだそうです。
日本の神代文字にも似ていますが、何か関係あるとしたらおもしろいですね。
さらに、アラビアンナイトの世界に迷い込んでしまったようなフェズへ。
世界遺産でもある旧市街は、タンネリ(革なめし職人街)が有名です。
インディゴやサフランなどの植物によって、牛、羊、ラクダの革が染め上げられていきます。
美しいパレットのような景色です。
城壁に囲まれた旧市街は、無数の路地がどこまでも続き、地元の人でも迷子になるそうです。
ガイドブックの地図もあてになりません。
そんな、世界一複雑な迷路の町、フェズにちいさな本屋さんがありました。
文房具や教科書、ガイドブックなどが多く売られています。
さらに、こんな書店も。
国際的に有名な町なので、観光客向けの英語の本も多く売られています。
こちらは村上春樹の『ノルウェイの森』。
イスラム圏では理解されにくい微妙な性的な表現を、ちゃんと翻訳されているのか、気になりますね。
そして『スプートニクの恋人』。
なんで同じデザインなのかよくわかりませんが、きっとこれでも過激なデザインなのでしょう。
さらに、大西洋に面した隠れ家リゾート地、エッサウィラへ。
フェニキア時代から港として栄え、3000年近い歴史があります。
本は、青空市場で売られていました。
アフリカらしい光景ですね。
しかし、モロッコでの買い物では、基本的に定価がなく値段交渉が必要です。
言い値をすべて聞いていると、実はとんでもない高い金額を言われたりするから疲れてしまいます。
お金持ちは、高い金額で買うのは当たり前、という発想はちょっと日本人には馴染みませんが、イスラム圏ではよくあること。
定価が決まっている本屋さんは、便利だなとしみじみ実感しますね。
モロッコにこんなことわざがあるそうです。
「俺の話を聞け。でも俺を信じるな」
本を買うのも一苦労なモロッコの本屋さん。
今年は、アフリカの本屋さんをもっと巡ってみたいと思っています。
[世界の果ての本屋さん:第14回 了]
(次回は「世界の移動する本屋さん」について書いてみたいと思います。)
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〈モロッコについて〉
正式国名:モロッコ王国(Kingdom of Morocco)
面積:44.6万平方キロメートル(日本の約1.2倍,西サハラ除く)
人口:3,252万人(2012年 世銀)
首都:ラバト
民族:アラブ人(65%)、ベルベル人(30%)
言語:アラビア語(公用語)、ベルベル語(公用語)、フランス語
宗教:イスラム教(国教)スンニ派がほとんど
通貨:モロッコ・ディルハム(MAD)
在留邦人数:384名(2012年10月)
在日パラグアイ人数:381名(2011年12月)
日本からのアクセス:直行便がないため、ヨーロッパや中東の主要都市で乗り継ぐのが一般的。
[外務省:モロッコ基礎データ のページより]
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