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鷹野凌 今月の出版業界気になるニュースまとめ

鷹野凌 今月の出版業界気になるニュースまとめ
2017年4月「LINEマンガ躍進、利用者数で首位に」など

takano
鷹野凌が毎月お届けする、出版業界気になるニュースまとめ。10本のニュースをピックアップし、理由、経緯、感想、ツッコミ、応援などのコメントをしています。なお、ピックアップは鷹野の個人的興味関心に基づくため、かなり電子出版関連に偏っています。あらかじめご了承ください。

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【2017年3月28日】 ヤフージャパンの子会社になったイーブックイニシアティブジャパンが、「Yahoo!ブックストア」のストア運営業務を受託。まずは、販売促進施策の企画立案を担当するようです。「Yahoo!ブックストア」のブラウザビューアはボイジャーの「BinB」が採用されていますが、イーブックイニシアティブジャパンも自社開発のブラウザビューアを持っているので、今後どうなるかが気になります。

【2017年3月28日】 ニールセンデジタルによる調査。月間利用者数(MAU)による比較。これまで首位だった「comico」が「LINEマンガ」に逆転されています。「comico」のMAU減少は、11月29日のリニューアルによって「レンタル券」や「応援ポイント」が導入されるなど、一部有料化が図られたことが影響しているものと思われます。なお、4月11日に開催された「LINEマンガ」のプレスセミナーを取材してレポートを書きましたので参考まで。リアル書店の取次であるトーハンの方が登壇し、「LINEマンガ」無料連載がリアル書店の売上に好影響を与えていると断言していました。すごい。

【2017年4月3日】 従来の「NewsPicks」有料会員向けオリジナル特集記事の閲覧に加え、毎月1冊「NewsPicks」オリジナル書籍の送付、テーマと連動したイベントや講演に毎月1回無料で参加できるといったサービス。先着500名限定です。本の制作を幻冬舎が担う、ということでしょう。なかなかうまいビジネスモデルだと思います。

【2017年4月5日】 科学技術振興機構の「J-STAGE」へ一本化するという国の方針により、「CiNii」の「電子図書館事業(NII-ELS)」が2017年3月で終了したことによる余波。一本化の方針は3年前の2014年4月に出ていたのですが、「J-STAGE」への移行作業が間に合わなかったようです。無料公開の論文とはいえ権利は著者や学会が持っているので、「CiNii」や「J-STAGE」が勝手に移行することはできません。「CC BY」など、権利者側があらかじめ許諾しているなら話は別なのですが。結局、翌週に「利用者の利便性を考慮」して、一部の提供が再開されました。

【2017年4月7日】 電子書店「まんが王国」の運営会社ビーグリーは、2017年3月17日に東証マザーズ上場を果たしています。電子出版関連で株主向けに詳細な業績情報を開示する企業がまた1つ増えました。2016年12月期の売上高は、83億3773万3000円。2017年12月期は、91億6500万円予想。前期比10%増です。詳しくはIR情報をチェック。

【2017年4月7日】 メディアドゥの2017年2月期決算。売上高は前期比38.2%増の155億3200万円。少し前に、電子出版市場で売上高を公開している企業の情報を調べて記事にしたときは、メディアドゥが関わっている小売額(2016年2月期)を約150億円と試算しました。1年経って、恐らく200億円前後になったものと思われます。

【2017年4月8日】 検索結果にファクトチェックを表示。ただし、提携する第三者機関が検証した記事のみです。日本にも導入されるそうですが、本稿執筆時点で私はまだ目撃できていません。提携しているファクトチェック専門組織は「GoHoo」を運営している一般社団法人日本報道検証機構かな? と思ったのですが、いまのところそういう事実はないというリリースが出ています。

【2017年4月10日】 隔週発行の「漫画アクション」と「ヤングチャンピオン」で、1つの連載マンガを交互に掲載。実質週刊ペースになります。異なる出版社でのコラボというのは、以前「少年マガジン」と「少年サンデー」が創刊50周年でやったことがあるのは知っていますが、連載マンガでのコラボって過去に事例ありましたっけ? 重なっていない読者層への接点が増やせる、面白い試みだと思います。

【2017年4月11日】 「Windows 10」の大幅アップデート。私は事前に手動でアップデートしましたが、大きな不具合にはいまのところ遭遇していません。「Edge」でEPUBが開けるようになったのはいいのですが、日本語表示はどうなのか? というのが気になるところ。「電書魂」の田嶋淳さんがInsider Preview版の時点で調査した不具合は、今回のリリース版ではまだ直っていないようです。縦中横がうまく表示できない(text-combine非対応)のは少々痛いところ。

【2017年4月12日】 キュレーションサービス問題へ積極的に切り込んでいった「BuzzFeed」の次のターゲットは、黒いアフィリエイト。ランキング記事の上位掲載を確約したステルスマーケティング、つまり「やらせランキング」や「やらせ比較」です。ランキング記事って、検索結果で上位になりやすいみたいですね。今回問題視されているのは「日本アフィリエイト協議会」に加盟していない5社の所業。擁護する気はまったくないのですが、やり玉にあげられている記事の商品比較が実際に「根拠不明」なのかどうか、自分で確かめたわけじゃないからわからないのが正直なところ。逆に当の「BuzzFeed」自身も記事広告やアフィリエイトをやっていますから、広告主に忖度していないと断言するのは難しい。メディア側の立場としては、黒い噂のある広告主であっても、黒だと確証が得られない限り掲載を断るのは難しかったりします。ライバル企業による、根も葉もない悪評という可能性もあるからです。実際問題、手心を加えず徹底的に商品比較をやろうと思うと「暮しの手帖」のように広告を載せないメディアにするしかないのではないでしょうか。

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 4月もいろいろ興味深い動きがありました。さて5月はどんなことが起こるでしょうか。

 ではまた来月 ٩( ‘ω’ )و

[今月の出版業界気になるニュースまとめ:2017年4月 了]


PROFILEプロフィール (50音順)

鷹野凌(たかの・りょう)

フリーライター。NPO法人日本独立作家同盟理事長。『月刊群雛』『群雛ポータル』編集長。ブログ『見て歩く者』で電子出版、ソーシャルメディア、著作権などの分野について執筆中。ITmedia eBook USER、ダ・ヴィンチニュース、INTERNET Watch、マガジン航などに寄稿。アイコンは(C)樫津りんご。近著は『クリエイターが知っておくべき権利や法律を教わってきました。著作権のことをきちんと知りたい人のための本』(インプレス)。


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