COLUMN

鷹野凌 今月の出版業界気になるニュースまとめ

鷹野凌 今月の出版業界気になるニュースまとめ
2017年5月「巨大違法サイト『フリーブックス』をめぐる騒動」など

takano
鷹野凌が毎月お届けする、出版業界気になるニュースまとめ。10本のニュースをピックアップし、理由、経緯、感想、ツッコミ、応援などのコメントをしています。なお、ピックアップは鷹野の個人的興味関心に基づくため、かなり電子出版関連に偏っています。あらかじめご了承ください。

◇ ◇ ◇

【2017年4月27日】 著作権法第35条の規定で「学校その他の教育機関」の授業で用いる際は、無断コピーが認められています。が、営利目的の予備校は「学校その他の教育機関」ではありません。また、著作権者の利益を不当に害する恐れがある場合もこの規定は適用されません。詳細はガイドライン(PDF)を参照。

【2017年4月27日】 株式会社メディアドゥホールディングスの誕生。同時に、出版デジタル機構を完全子会社に。産業革新機構から取得していた株式は70.52%でしたが、残りをメディアドゥの株式と交換で100%子会社。これで、出版デジタル機構に出資していた講談社、集英社、小学館、大日本印刷、凸版印刷、KADOKAWA、光文社、新潮社、文藝春秋、インプレスホールディングス、筑摩書房、有斐閣、勁草書房、版元ドットコム、平凡社の持ち株は、1株あたり40株で交換されます。交換予定は121万7600株ですが、メディアドゥの発行済株式数は1000万株以上あるので、交換後の持ち株比率を計算すると、小学館が5.62%、講談社が5.42%、集英社が3.42%といった感じに。3%を超えるので、帳簿閲覧権、取締役等の解任請求権、総会招集権が手に入ることに。少し出版社の発言力が大きくなるかもしれません。

【2017年4月28日】 日販からするとアマゾンは取引先の1つに過ぎませんが、アマゾンとしては売れている本をもっと売るため優先的に在庫を充当して欲しい。となると、出版社とのあいだにいる取次の存在は、邪魔になってきます。今回終了するのは日販非在庫品の取り寄せ発注のみですが、出版社との直接取引「e託販売サービス」拡大へ向けての施策の一環と言っていいでしょう。「この本、売れるかも」という見込みで多めに仕入れておくのではなく、「いま売れている」という情報に基づいて仕入れに動いているから遅い、という見方もできるかもしれません。

【2017年5月1日】 これは是非一度、公式サイトや受賞サイトをご覧いただきたい。縦書き・横書きを効果的に用いると、ウェブにおける表現の幅はここまで広がるのです。範囲選択してみてください。画像じゃないんですよ!

【2017年5月3日】 海賊版電書サイトが閉鎖。5月1日にはてな匿名ダイアリーで取り上げられ話題になりアクセスが集中、恐らくDoS攻撃もあって陥落したようです。削除申請を完全無視する「DMCA IGNORE(防弾ホスティングサービス)」を利用しているというかなり巧妙なやり口のサイトでした。これで出版関係者に、海賊版サイトにはDoS攻撃が有効(ただし威力業務妨害)であると認識されたかも。
 同様の海賊版サイトは探せばいくつも見つかりますが、「フリーブックス」はアングラ感がまったくなく、一般ユーザーが正規のサイトと区別する手段がないことが恐ろしいと思いました。音楽・映像配信系の「エルマーク」のように、権利者から正規に許諾を得たサイトですよという印を、日本書籍出版協会あたりが用意すべきではないかでしょうか。
 なお、警察が捜査に動き出したという日経の続報がありました。その記事中にある新潮社のコメント「同様のサイトが登場しないよう法整備を進めてほしい」が、ちょっと気になります。すでに、2015年1月施行の改正著作権法により、出版社が電子出版権を取得していれば違法サイトを訴える当事者になれます。つまり、今回警察が動くのは法整備のおかげです。これ以上なにを求めているのでしょうか。もしかして、音楽・映像と同様の、海賊版ダウンロード違法化? もしくはネット検閲でサイトのブロッキング?

【2017年5月8日】 本や音楽・映像ソフトなどの「エンタメ・ホビー」カテゴリーを専用アプリに。記事の終わりのほうにさらっと書いてある「今後は、出版取次業者と協力し、メルカリ カウル上で中古の商品だけではなく新刊の販売も予定するという」という記述にびっくり。アマゾンと同じように、新刊と古本が同じ場で販売されることになるわけです。日経の続報で、パートナーはトーハンだということが判明しています。

【2017年5月11日】  4月末でサービス終了した「R25」のMedia Shakers(リクルート子会社)を、サイバーエージェントが買収。DeNA「Welq」などのまとめサイト問題で延焼しかけていた「Spotlight」をブランド統合し、「新R25」として再出発するとのこと。悪い評判が付いてしまったから、看板を付け替えるということでしょうか。再開後、どのような運営になるかを注視しておきたいところです。

【2017年5月16日】 正式オープンに伴う、講談社の担当者インタビュー。狙いはわかりますが、もう少し使い勝手をなんとかして欲しい。β版の時にはあえて言わなかったのですが、不満なところがいっぱいあります。まず、モバイルウェブしか考慮していないUIが非常に使いづらく、登録が捗らないので早期になんとかして欲しいこと。せっかくのアフィリエイトなのに、ブログに貼るウィジェットすら用意されていないこと。料率10%はアマゾンより良い(Kindle本は8%)のですが、本気でユーザーに売ってもらいたいならもっと料率を上げて欲しい。出版社直営なんですから。あとは、講談社以外の展開も早く、といったところでしょうか。期待してるんですよ!

【2017年5月19日】 歌詞の一部を利用した式辞を、京大がウェブサイトに公開。それに対しJASRACが著作権使用料を「請求した」という記事。実際に公開されている式辞を見ると、引用の要件である必然性、明瞭区別、主従関係、出典明示まですべてクリアしています。これでダメならなにが引用なの? という感じです。
 ところが弁護士ドットコムの続報で、そもそもJASRACは問い合わせをしただけで「請求はしていない」という事実が判明。京大広報の「困惑すらしていない」というコメントが秀逸です。また、JASRAC理事長も定例記者会見で「JASRACは引用として判断している。(著作権使用料を)請求はしない」と明言しています。となると、最初の京都新聞はなんだったのでしょうか? また、どう見ても引用なのになぜJASRACが問い合わせをする必要があったのか? という疑問も残ります。
 なお、マンガで歌詞の一部が載っているケースがありますが、演出の一環として歌詞を利用すると必然性の引用要件を満たしません。そのため、ちゃんとJASRACに許諾を得て、欄外に許諾番号を明記している場合がほとんどだと思われます。

【2017年5月24日】 著作権者が見つからない「オーファンワークス(孤児著作物)」は、二次利用できないままでは人々の記憶から消えていってしまいます(作品の死)。それを防ぐため、文化庁に「著作権者不明等の場合の裁定制度」があります。ところが権利者を探す「相当な努力」がとても手間だったり、費用が多くかかる(裁定申請手数料と広告費が申請1回ごとに必要)など、使い勝手が悪い制度でした。これをもっと利用しやすい仕組みにするための実証事業に、9つの権利者団体が「オーファンワークス実証事業実行委員会」を結成し、協力していたのです(昨年11月開始時の記事)。今年3月にはシンポジウムが行われ、報告書が公開されています。なお、当初は4月から本格運用の予定でしたが、今年度も実証事業を継続する方針とのことです。

◇ ◇ ◇

 5月もいろいろ興味深い動きがありました。さて6月はどんなことが起こるでしょうか。

 ではまた来月 ٩( ‘ω’ )و

[今月の出版業界気になるニュースまとめ:2017年5月 了]


PROFILEプロフィール (50音順)

鷹野凌(たかの・りょう)

フリーライター。NPO法人日本独立作家同盟理事長。『月刊群雛』『群雛ポータル』編集長。ブログ『見て歩く者』で電子出版、ソーシャルメディア、著作権などの分野について執筆中。ITmedia eBook USER、ダ・ヴィンチニュース、INTERNET Watch、マガジン航などに寄稿。アイコンは(C)樫津りんご。近著は『クリエイターが知っておくべき権利や法律を教わってきました。著作権のことをきちんと知りたい人のための本』(インプレス)。


PRODUCT関連商品

出版業界気になるニュースまとめ2016

鷹野 凌 (著)
フォーマット: Kindle版
ファイルサイズ: 3334 KB
紙の本の長さ: 305 ページ
同時に利用できる端末数: 無制限
出版社: 見て歩く者 (2017/1/20)