#01:はじめに
◆まずはご挨拶から
初めまして! greenz.jp(グリーンズ)編集長の兼松佳宏です。
グリーンズは、「ソーシャルデザイン(社会の仕組みづくり)」をキーワードに、さまざまな社会的な課題をクリエイティブに解決する人たちを紹介しているウェブマガジンです。
ウェブマガジンの他にも、アイデアとアイデアをつなげる「green drinks」やアイデアを形にする「green school」、ブックレーベル「green Books」など、情報の編集や対話の場づくりを通じて、自分たちの手でほしい未来をつくる人たちを応援しています。
ちなみにDOTPLACE編集長・内沼晋太郎さんの『本の逆襲』と同じ〈アイデアインク〉シリーズ(朝日出版社)で、『ソーシャルデザイン』と『日本をソーシャルデザインする』という二冊の本が出ています。「ソーシャルデザインって何?」という方は、ぜひそちらをご一読いただけますと幸いです。
◆「ソーシャルデザイン」に必要なこととは?
青い地球の姿を初めて外から眺めた20世紀は、まさにグローバリズムの時代でした。“Think Global, Act Local” と言われるように、知識や思想が世界を牽引し、その結果、僕たちの暮らしはとても便利になりました。
一方、経済性や効率性ばかりを偏重してきた消費型文明の裏側で、さまざまな軋轢や格差を生んでしまったのも事実です。戦争、貧困、気候変動といった社会問題は、それらが顕在化したものに他なりません。
今こそ消費から貢献へ。不足から充足へ。お金からいのちへ。もっと踏み込んでいうなら、“万物が共生する循環型文明”を目指して。そのためには、その場しのぎの対処療法ではなく、根底で絡み合っているそもそもの原因を解いていく必要があります。「ホリスティック(全体的)に状況を捉え、課題の本質を見極める」(『ソーシャルデザイン』p.45)ことが大切なのです。
「ふーん。で、どうすればいいの?」と思った方もいるかもしれません。「真似してみるから、ヒントをくれ」と。
でも。きっとそれって、言うは易く行うは難し、“思考”や“考え方”といった簡単にシェアできる類の話ではなく、もっと深いところにあるそれぞれの“あり方”そのものを見つめなおすことになるのかな、と何となく予感しています。言わば “Think Global, Act Local.” から “Feel Cosmical, Act Local” へのアップデート。その道なき道を模索する上で、導かれるように出会ったのが、次の空海の言葉です。
顕薬は塵を払い、真言は庫を開く
(密教の働きは、ものごとの表面にたまった塵を払って、見た目を美しくすることではなく、庫を開いて、奥に秘蔵されている宝を見つけ出すことである。)
――『秘蔵宝鑰』より
時代のキーワードとして注目される「ソーシャルデザイン」。とはいっても、その本質は決して新しいものではなく、僕たち日本人が本来兼ね備えている宇宙観と呼応する部分がたくさんあることに、空海の言葉に触れれば触れるほど気付かされます。
さまざまな課題を解決するためのヒントは、既に僕たち自身の内に秘められていて、世界を眺める見方を変えるだけで、誰でもそれに気付くことができるのだと。
1200年前に空海が紡いだ大切な言葉を、インスピレーションにあふれるその発見を、現代を生きる僕たちの暮らしや仕事に、どう具体的に応用できるのか。
この連載では、その終わらない旅路の過程を、読者のみなさんと分かち合いたいと思います。この先どこに至るかわかっていませんが、とにかく目の前に進むべき道があることに、そしてご縁をいただいたみなさまに感謝しているところです。
というわけで、少し長めの前置きはこの辺で。いよいよ「空海とソーシャルデザイン」の幕開けです。
[空海とソーシャルデザイン:#01 了]
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