鷹野凌が毎月お届けする、出版業界気になるニュースまとめ。10本のニュースをピックアップし、理由、経緯、感想、ツッコミ、応援などのコメントをしています。なお、ピックアップは鷹野の個人的興味関心に基づくため、かなり電子出版関連に偏っています。あらかじめご了承ください。
【2017年1月27日】 「主力の書籍やソフト、アパレルの販売が低調」とのこと。環境省「リユースの市場動向調査結果」レポート(PDF)によると、古書市場全体は縮小傾向にあります。しかし、ブックオフのIR資料を確認してみたところ、2016年3月期実績が売上765億6400万円、前回発表の今期予想が850億円で、修正予想が800億円。つまり計画には届かなかったものの、売上は伸びているのです。FACT BOOKには商品別の売上構成比も載っていたので逆算してみたところ、多少の増減はあれど「コミック」も「活字」も売上は増加傾向にあります。その一方で、販売管理費も伸び続けている傾向が見られます。これは、人員を増やしても計画ほど売上が伸びなかったので赤字になっている、と捉えるべきなのでしょう。
【2017年1月31日】 「ライバル電子書籍ストアより優遇するように」と明文化されていた条件を撤廃するとのこと。これは、日本で昨年8月に公正取引委員会がアマゾンに立ち入り調査を行った理由でもあるので、日本にも波及するかもしれません。ただ、もしかしたら、他ストアでのセールに勝手に自動追随するのを利用して稼ぐ、いわゆる「アマゾンハック」も同時に対策されるかもしれません。
【2017年1月31日】 非常に物議を醸していた記事。簡単に言えば「市場規模がまだ小さい」という主張なのですが、マンガに関してはそうでもないという視点が欠けています。恐らく、既にコミック市場の3分の1が電子になっているはずなのです。同じメディアに“「電子書籍の購入は作家の応援にならない」はずがない”という反論記事を寄稿しておきましたので、詳細はこちらをご覧ください。
【2017年2月1日】
【2017年2月3日】
3本まとめてピックアップ。FacebookとGoogleがほぼ同時に、捏造記事とキュレーションサービス対策です。Facebookの対策は「今拡散している話題を素早く表示する」施策と同時に行われるため、正直不安を感じます。Googleの対策は日本限定で、しかもGoogleが極めて異例の公式発表までしています。効果は既に、そして劇的に現れているようです。ただ、恐らくまた新アルゴリズムを悪用する輩は出てくるでしょうし、新たな対策も必要になるでしょう。イタチごっこです。
【2017年2月8日】 Reader端末専用ストアが終了するだけで、Reader端末で読めなくなるわけではありません。アプリ内購入ができない多くのiOS版アプリと似たような状態になるだけです。恐らく、Reader端末専用ストアの利用頻度は極めて低かったのだと思われます。文字が入力しづらい電子ペーパー端末で、購入するたびにパスワードを入力しなければならないので、端末から購入する気になれないのです。読み終わったタイミングで続刊や関連本を勧めるようなレコメンドも、ありません。だから、この終了による実際の影響は皆無に近いと思いますが、反響を見るに、ユーザーの心証に与える影響は大きそうです。
【2017年2月10日】 出版社がデジタルで儲かるようになっている事例その1。紙と電子を合わせた出版事業では、売上高は前年同期比7.3%増なのに対し、営業利益が同59.3%増とすさまじい伸びです。そのいっぽうで、ドワンゴのニコニコ動画はプレミアム会員が初の減少と、KADOKAWAとは明暗が分かれています。
【2017年2月11日】 それ「Google Books」じゃん! と思ったら、「全文を読む」ではちゃんと触れられていました。アメリカでの集団代表訴訟(クラスアクション)和解案に全世界が巻き込まれ、日本でも猛烈な拒絶反応とその後に「出版社にも著作隣接権を!」という動きを巻き起こすことになった事件を思い出します。Googleは最終的に「フェアユース」だと認められたわけですが、日本でもこの改正が成れば同様のサービスを著作権者に無断で展開可能になります。改正できるかな……?
【2017年2月14日】 半年経ってから「コンテンツガイドラインを侵害している」と問答無用で作品ページ削除。非常にアマゾンらしい対応です。なお、正確には、個人出版の「Kindleダイレクト・パブリッシング」からの撤退であり、読み放題からの撤退ではありません。今後は電子取次を経由することで、複数ストアへ配信した上で「Kindle Unlimited」にも載せる形を狙うそうです。私はサービス開始当初から「Kindleダイレクト・パブリッシング」だと独占配信にしなければ「Kindle Unlimited」に載らないのは不公平だと主張してきましたが、残念ながらそれを裏付ける形になってしまいました。なお、直接取引から取次経由に切り替えると、「施策の反映に時間がかかる」「結果がわかるまでに時間がかかる」点などに不満を覚えるようになります。
【2017年2月17日】 補償金セットで著作権者を納得させる方向というのは、実現可能性が高いように思えます。「教育利用に関する著作権等管理協議会」という団体を知らなかったので調べてみたところ、去年の12月に設置されたばかりのようです(PDF)。すでに文藝家協会や脚本家協会など37団体が参加していてすごい。周到に準備を進めてきた感がありますね。
【2017年2月21日】 出版社がデジタルで儲かるようになっている事例その2。デジタル分野の売上高が前期比44.5%増の175億円(逆算すると前期は121億円)。出版科学研究所『出版月報』2017年1月号によると、電子出版市場は前年比27.1%増の1909億円。講談社は2016年11月期なので集計期間に1カ月ズレがありますが単純計算すると、成長率は業界平均の1.64倍、市場占有率は9.17%ということになります。
2月もいろいろ興味深い動きがありました。さて3月はどんなことが起こるでしょうか。
ではまた来月 ٩( ‘ω’ )و
[今月の出版業界気になるニュースまとめ:2017年2月 了]
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