セルフパブリッシングの現在に迫るべく、Amazon Kindle ダイレクト・パブリッシングなどで注目の作家にメールインタビューしていくシリーズ。今回は、元自衛隊員という経歴を活かし、2013年10月に『ほんとうの自衛隊ごはん』を発表されたセルフパブリッシング作家、廣川ヒロト(ひろかわ・ひろと)さんです。
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作品紹介
『ほんとうの自衛隊ごはん』は、
Amazon Kindleで立ち読みできます。
陸自の大食堂で食事をしてきました。
本書はその体験を綴った喫食体験記です。
糧食班長や、専属栄養士のインタビューも収録。
ほか、委託売店である駐屯地内の有料喫茶店「Cafe Camp Metabaru」での人気メニューや、オーナーのお話なども収録しています。
後半は、取材に至るまでの経緯や、駐屯地広報資料館についてなど、食事以外の点に的を絞った体験記を収録しています。
著者プロフィール
1974年生まれ。
福岡県福岡市博多区出身。
陸上自衛隊に4年在籍した後、任期満了退職。
現在調理師。
愛猫は白と黒のブチネコ。
公式サイト http://hirokawahiroto.com/
メールインタビュー
Q01・まずはじめに、性別やご年齢、お住まいの場所、ご職業など、お話しいただける範囲で構いませんので、自己紹介をお願いします。
年齢は39歳。
男です。
福岡県の糟屋郡に住んでいます。
職業は調理師です。
Q02・廣川さんが、電子書籍でのセルフパブリッシングに着目するようになったきっかけは何でしたか。
紙の自費出版と違って、ほとんど元手がかからない、という点は大変素晴らしいと思います。
あとは、デジタルデータなので売り切れもなく機会損失を考えなくて良い、という点も。
Q03・廣川さんが、『ほんとうの自衛隊ごはん』を執筆されるに至った動機を教えてください。
以前、自衛隊の食事について書いた本を出版しました。
取材をした訳ではなく、思い出しながら書いたのですが、とても評判が良くて半年ほどで2千部ほども売れました。
ただ、グルメ本というよりは青春記という側面が強くて、料理本と考えて読んだ方にとっては不評でした。
タイトルと内容がかみ合ってなかった、という面も確かにありますし、何よりそれほど売れるとは思っていなかったので、言葉は悪いですが、自分自身に甘えがあったり、適当な部分があったりしたのは間違いありません。
いただいたレビューを読んでいるうちに、じゃあ真っ正面から自衛隊の食事に取り組んでみたらどうだろう、という考えが頭をよぎりました。
Q04・『ほんとうの自衛隊ごはん』の取材・執筆には、どのくらいの期間と時間がかかっていますか。
陸上自衛隊の目達原駐屯地に取材したのは3日間です。
当初は1週間ほどを予定していましたが、自衛隊側に対応が難しい、と難色を示されまして、3日間に落ち着きました。
執筆はおよそ1ヶ月程度です。
Q05・『ほんとうの自衛隊ごはん』の制作過程の中で、もっとも苦労した点はどのような点でしたか。
モデルとなるものがありませんでしたので、その意味では、どのような構成にすればいいのか、という点も含めて色々と悩みました。
未だにあれで良かったのかどうか自信はありません。
ただ、シリーズ化するつもりでしたので、第一作目ということで、無難な感じに収まったのでは、とは考えています。
Q06・『ほんとうの自衛隊ごはん』の発売から2か月ほどが経ちましたが、読者からの反応や、ご自身で感じている手応えなどがあれば教えてください。
前作に比べると、売れ行きは良くはありません。
レビューサイト「つんどく速報」の記事に、ジャーナリストの佐々木俊尚氏が興味を持ってくれて、そのおかげで一瞬だけドカッと売れて、有料ランキングの70位ほどまで行きました。
かつては売り上げでカテゴリ1位になると、キンドルストアのトップページに書影が出たのですが、リニューアルされたようで、カテゴリでトップとなったとしても、影も形も出なくなりました。個人的には、この部分が大きいかな、とは考えています。
けど売れ行きは特に気にしていません。
面白いからやっている、という部分が大きいですね。
Q07・『ほんとうの自衛隊ごはん』をセルフパブリッシングするにあたって、参考にされた本やサイトなどがあれば教えてください。
参考にした本やサイトは、特に覚えがないのですが、忌川タツヤさんには、執筆途中に相談にのっていただいたり、初稿を読んでもらって感想を聞いたり、また、実際の出版前には、彼は様々な端末を所持していますから、動作確認など色々と協力してもらいました。
家が近いので、時々会ってご飯を食べます。
Q08・廣川さんが書き手として、影響を受けていると感じる作家や作品などがあれば、教えてください。
これはもう数限りなくありますね。
自衛官として先輩である浅田次郎さんの作品はよく読みます。
宮部みゆきさんやスティーブンキング、貴志祐介さんも大好きです。
ノンフィクション系では、杉山隆男さんや、青山繁晴さんが好きです。
Q09・DOTPLACEでは「これからの編集者」という連載を通じて、セルフパブリッシング時代の編集者の役割についても考えています。もし、作家としての廣川さんのことを新たにサポートしたいという編集者が現れたとしたら、その人に期待したい役割は何ですか。
他者の視点は是非欲しいですね。一人でやっていると不説明なところが出てきたり、独りよがりになる傾向があります。
特に、感情面で熱くなると、周りが見えなくなったり……。だから、そういう時に、ちゃんと舵取りしてくれる人がいればとても良いかと思います。
いまのところ忌川タツヤさんを、利用といったら言葉は悪いですが、ご協力いただいています。
Q10・『ほんとうの自衛隊ごはん』が、今後、紙の本として書店に並ぶとして、この本の隣に並べて欲しいというような本を、3冊挙げてください。
かなりおこがましいのを承知で……杉山隆男さんの自衛隊シリーズ(『兵士に聞け』『兵士を見よ』『兵士を追え』)ですね。
もう一冊だけ挙げさせてください。数多久遠さんの『黎明の笛』。
数多さんは航空自衛隊の幹部自衛官の経験があります。
ディテールは真に迫っており、大変質の高いミリタリー小説であると思います。
Q11・次回作の構想がありましたら、お話しいただける範囲で教えてください。
次回作のテーマは航空自衛隊の食事です。まだ取材の日時は決まっていませんが、2014年の1月の半ばぐらい、出版は3月ぐらいでしょうか。
場所は芦屋基地です。
前作のフィードバックも含めて、かなり内容の濃いものが書けるのでは、と考えています。
3作目は海上自衛隊、そして4作目で、陸上自衛隊に戻ってこようかと考えています。
実はこの4作目で陸自に戻る、という案は、忌川タツヤさんが言い出したことなのですが、私は「それ、いいアイデアだね」とは思えませんでした。
いや、もちろんとても良いアイデアなのですが、私が抱いたのは、パズルのピースが嵌まった、という感触です。忌川さんに言われなくても、たぶん自然と思いついたのでは……半分は負け惜しみですが、そのように考えています。
Q12・廣川さんが注目していて、このコーナーで取り上げてほしい、ほかのセルフパブリッシングをされている作者がいらっしゃいましたら、教えてください。
忌川タツヤ(けど本人が断ったそうで)。
山田佳江さん……すでにインタビューがありましたね(実は山田さんとは一度お会いしたことがあります)。
プロフィール画像を真似てみました。
澤俊之さん……も、すでにインタビューがありました。澤さんの『440Hz -1978-』はグルメ本としても秀逸な出来なので、ネタを拝借できれば……と密かに考えています。
数多久遠さん。元幹部自衛官ならでは、という視点で、非常にマニアックな内容の小説を発表されています。
Q13・最後に、このインタビューの読者の方に、メッセージをお願いします。
読んでいただいてありがとうございます。
今後一年ぐらいは自衛隊シリーズを執筆していきたいと考えています。
折に触れた時に思い出していただければ嬉しいです。
(了)
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