第2回「電車で見かけた、白い本」
電車に乗るといつも、車内広告や乗っている人たちの様子をキョロキョロと観察してしまう癖がある。今朝も、通勤中に色々見回しながら考えていたのだが、思い返してみると自分が働き始めた10年前とは、車内の様子はだいぶ様変わりしている。
新聞を読む人が減り、本を読む人も減り、音楽を聞く人も減った。今の主流はご存じの通り、スマートフォンでSNSやゲームをやることだ。
この変化について、ここで是非を論じるつもりは無い。きっとかつては「電車の中で新聞を読むこと」自体がマナー違反だと煙たがられていた時代があったことは容易に想像できるし、今となっては「電車で新聞を読む人が減った。けしからん!」という意見さえも出てきている。みんなの「当たり前」は常に変化し、更新される。
さて、そんな昨今の状況でも電車の中を見回すと、少なくなった本を読んでいる人の中に一定の割合で「白い本」を読んでいる人がいる。
「白い本」とは、そういうタイトルの本というわけではなく、本当に表紙が真っ白で何も書いていない本だ。
最初に見かけた時は遠目で見ているだけだったので何の本かよく分からず、「あの本たまに電車で見かけるけど、真っ白で表紙に何も書いてないかなり挑戦的な装丁なのに、結構長いこと売れているんだな」などと思っていたのだが、ある朝、通勤中に目の前で見かけた時に、その本が何であるか分かった。
「白い本」は、カバーを裏返して付けているために、表紙が「白く」なっていた本だった。
試しに自分も、バッグの中に入っていた本のカバーを裏返して「白い本」を作ってみたのだが、元々付いていた折り目を逆にしなければいけないため、裏返してカバーをかけ直すのはかなり大変だった。だから、そんな思いをしてまでわざわざカバーを裏返すのには「なんとなく」では無い明確な理由があるはずだ。
もう少し観察を続けていると、どうやら書店で会計をした時にかけてくれるカバー(以下書店カバー)を付けた本を読んでいる人は、書店カバーのまま読んでいる。
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