COLUMN

太田泰友 2031: A BOOK-ART ODYSSEY(2031年ブックアートの旅)

太田泰友 2031: A BOOK-ART ODYSSEY(2031年ブックアートの旅)
第6回 ライプツィヒ・ブックフェア2017(その1)

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第6回 ライプツィヒ・ブックフェア2017(その1)

◯本連載のバックナンバーはこちら

 2017年3月23日から26日にかけて、本連載中で何度か登場したライプツィヒ・ブックフェアが今年も開催され、僕も出展者として参加しました。
 今回は、あくまで僕目線ではありますが、ブックアートとの関わりを中心に今年のライプツィヒ・ブックフェアをレポートしたいと思います。

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会場入り口の様子

会場入り口の様子

▼ライプツィヒ・ブックフェア・トゥデイ

 ライプツィヒ・ブックフェアは、フランクフルト・ブックフェアに次いでドイツで2番目に大きい書籍見本市で、毎年3月中旬に開催されています(フランクフルトは毎年10月)。春先に新しいものを発表する大事な機会という立ち位置でもあると思います。
 ライプツィヒ・ブックフェアの歴史を見ていくと、話は17世紀まで遡ります。ドイツの東西分裂期にも、東からも西からも本に関わる人々が集まる重要なポイントとなっていたようです。長い歴史を持つブックフェアですが、今も時代と共に進化を続けていて、今年は285,000人を超える来場者、2,439に及ぶ出展、会期中に3,400以上のイベントが開催されました。自ら出展していたため僕はあまり追えていませんが、デジタルメディアとして移行した本もどんどん活性化し、これもフェアの拡大につながっているのだと思います。また、マンガ・コミックに特化した部門も年々とてつもない熱気を帯び、おびただしい人数のコスプレイヤーたちは、このフェアの風物詩にさえなってきています。

ライプツィヒ・ブックフェア会場。その他様々な見本市やイベントの行われる場所です

ライプツィヒ・ブックフェア会場。その他様々な見本市やイベントの行われる場所です

これも風物詩の一つの階段

これも風物詩の一つの階段

ここがコスプレイヤーたちで溢れかえっていきます

ここがコスプレイヤーたちで溢れかえっていきます

会場の様子

会場の様子

 フェア会場につながる路線の電車は、普段はがらがらですが、この時ばかりは乗客で溢れかえり、乗り切れない人もたくさん出てしまいます。本数の少ない電車(おそらく1時間に1本)なので、大騒ぎです。「まるで日本のようだ」という声を何度も聞きました。
 最寄り駅からフェア会場まで、すべての人が会場に向かう行列となり、これもまた「この季節が来たな」という感覚を覚えます。

オープン前の会場に向かう道

オープン前の会場に向かう道

駅から会場に向かう道

駅から会場に向かう道

 そんな中に、今年から新しい景色が増えました。会場に到着する少し前に、全ての人が荷物検査を受けて通過しなければならないテントができました。世界で相次ぐテロへの対策ですね。刃物を持っていないか毎度丁寧にチェックを受けます。一度僕が長い紙筒を持っている日があったのですが、「それは刀ではないか?」と確認されたこともありました。もちろんこのやり取りは、冗談で楽しくされたものですが、荷物検査自体はかなりしっかりとされていました(※僕は昨年はこのフェアに参加していないのですが、昨年もまだ荷物検査はなかったと聞きました)。

荷物検査のテント

荷物検査のテント

▼ライプツィヒ・ブックフェアにおけるブックアート

 全部で6つある大きなホールに、それぞれの部門が振り分けられているのですが、〈ホール3〉の中に、〈Buchkunst & Grafik〉(Book Art & Graphic)という部門があります。ここには、日本でもよく知られた〈世界で最も美しい本〉の展示があったり、工房のようなものがあったりして、そして本連載第5回にも登場した〈Marktplatz Druckgrafik〉(Market place print graphics)があります。〈Marktplatz Druckgrafik〉は、その名の通り、〈書籍〉というよりも〈印刷〉や〈グラフィック〉へのイメージが強く、版画や活版印刷の一枚ものの作品も展示・販売されていたりします。こういった内容も然ることながら、もう一つここには、他の部門にはない特徴があります。それはフェア全体の中で、最も小さいブースの単位を持っているということです。通常のブースでは、最小単位が5㎡からとなっていますが、ここは2㎡を最小単位としており、個人で活動する作家があまり負担の大きくない中で出展し、新しい作品を展示・販売することができるようになっています。

Marktplatz Druckgrafik の様子

Marktplatz Druckgrafik の様子

日本でも人気の Steidl もホール3に

日本でも人気の Steidl もホール3に

 また、ライプツィヒ・ブックフェアには、フランクフルト・ブックフェアよりも多くドイツ国内を中心とした美術大学内で本を扱うような学科が出展もしています。ライプツィヒとフランクフルトにおける美術大学の出展数の違いは、おそらく出展料の違いによるものだと思われます。学生のうちにこの出展を経験できることは、ドイツの本の文化を将来的に担っていく世代にとって、非常に重要な機会であると思います。
 ドイツで唯一のブックアート学科を持つブルグギービヒェンシュタイン芸術大学ももちろん出展しています。ライプツィヒ・ブックフェアの会場は、ライプツィヒと、ブルグのある町ハレの間にあり、フランクフルトへの遠征と比べると、かなりホーム感があります。

ブルグのブースの様子

ブルグのブースの様子

第7回「ライプツィヒ・ブックフェア2017」(その2)に続きます


PROFILEプロフィール (50音順)

太田泰友(おおた・やすとも)

1988年生まれ、山梨県出身。ブックアーティスト。2017年、ブルグ・ギービヒェンシュタイン芸術大学(ドイツ、ハレ)ザビーネ・ゴルデ教授のもと、日本人初のブックアートにおけるドイツの最高学位マイスターシューラー号を取得。これまでに、ドイツをはじめとしたヨーロッパで作品の制作・発表を行い、ヨーロッパやアメリカを中心に多くの作品をパブリックコレクションとして収蔵している。平成28年度ポーラ美術振興財団在外研修員。 www.yasutomoota.com[Photo: Fumiaki Omori (f-me)]