第6回 ライプツィヒ・ブックフェア2017(その1)
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2017年3月23日から26日にかけて、本連載中で何度か登場したライプツィヒ・ブックフェアが今年も開催され、僕も出展者として参加しました。
今回は、あくまで僕目線ではありますが、ブックアートとの関わりを中心に今年のライプツィヒ・ブックフェアをレポートしたいと思います。
▼ライプツィヒ・ブックフェア・トゥデイ
ライプツィヒ・ブックフェアは、フランクフルト・ブックフェアに次いでドイツで2番目に大きい書籍見本市で、毎年3月中旬に開催されています(フランクフルトは毎年10月)。春先に新しいものを発表する大事な機会という立ち位置でもあると思います。
ライプツィヒ・ブックフェアの歴史を見ていくと、話は17世紀まで遡ります。ドイツの東西分裂期にも、東からも西からも本に関わる人々が集まる重要なポイントとなっていたようです。長い歴史を持つブックフェアですが、今も時代と共に進化を続けていて、今年は285,000人を超える来場者、2,439に及ぶ出展、会期中に3,400以上のイベントが開催されました。自ら出展していたため僕はあまり追えていませんが、デジタルメディアとして移行した本もどんどん活性化し、これもフェアの拡大につながっているのだと思います。また、マンガ・コミックに特化した部門も年々とてつもない熱気を帯び、おびただしい人数のコスプレイヤーたちは、このフェアの風物詩にさえなってきています。
フェア会場につながる路線の電車は、普段はがらがらですが、この時ばかりは乗客で溢れかえり、乗り切れない人もたくさん出てしまいます。本数の少ない電車(おそらく1時間に1本)なので、大騒ぎです。「まるで日本のようだ」という声を何度も聞きました。
最寄り駅からフェア会場まで、すべての人が会場に向かう行列となり、これもまた「この季節が来たな」という感覚を覚えます。
そんな中に、今年から新しい景色が増えました。会場に到着する少し前に、全ての人が荷物検査を受けて通過しなければならないテントができました。世界で相次ぐテロへの対策ですね。刃物を持っていないか毎度丁寧にチェックを受けます。一度僕が長い紙筒を持っている日があったのですが、「それは刀ではないか?」と確認されたこともありました。もちろんこのやり取りは、冗談で楽しくされたものですが、荷物検査自体はかなりしっかりとされていました(※僕は昨年はこのフェアに参加していないのですが、昨年もまだ荷物検査はなかったと聞きました)。
▼ライプツィヒ・ブックフェアにおけるブックアート
全部で6つある大きなホールに、それぞれの部門が振り分けられているのですが、〈ホール3〉の中に、〈Buchkunst & Grafik〉(Book Art & Graphic)という部門があります。ここには、日本でもよく知られた〈世界で最も美しい本〉の展示があったり、工房のようなものがあったりして、そして本連載第5回にも登場した〈Marktplatz Druckgrafik〉(Market place print graphics)があります。〈Marktplatz Druckgrafik〉は、その名の通り、〈書籍〉というよりも〈印刷〉や〈グラフィック〉へのイメージが強く、版画や活版印刷の一枚ものの作品も展示・販売されていたりします。こういった内容も然ることながら、もう一つここには、他の部門にはない特徴があります。それはフェア全体の中で、最も小さいブースの単位を持っているということです。通常のブースでは、最小単位が5㎡からとなっていますが、ここは2㎡を最小単位としており、個人で活動する作家があまり負担の大きくない中で出展し、新しい作品を展示・販売することができるようになっています。
また、ライプツィヒ・ブックフェアには、フランクフルト・ブックフェアよりも多くドイツ国内を中心とした美術大学内で本を扱うような学科が出展もしています。ライプツィヒとフランクフルトにおける美術大学の出展数の違いは、おそらく出展料の違いによるものだと思われます。学生のうちにこの出展を経験できることは、ドイツの本の文化を将来的に担っていく世代にとって、非常に重要な機会であると思います。
ドイツで唯一のブックアート学科を持つブルグギービヒェンシュタイン芸術大学ももちろん出展しています。ライプツィヒ・ブックフェアの会場は、ライプツィヒと、ブルグのある町ハレの間にあり、フランクフルトへの遠征と比べると、かなりホーム感があります。
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