INTERVIEW

VOYAGER SPEAKING SESSIONS

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第4回 高島恒雄(講談社デジタルビジネス局 デジタルプロモーション部部長)「本が人に会いに行く ――講談社の全刊行物をプロモーションする仕事」4/4

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言わずと知れた日本最大級の出版社・講談社。膨大な数に上る既刊本だけでなく、年間3,000タイトル以上も刊行されていく新刊本のプロモーションを一手に引き受ける「デジタルプロモーション部」では、どのように本と読者の出会いの場を作り出しているのでしょうか。
PC・モバイル両対応を遂げたBinBリーダーも巧みに活用しながら「講談社コミックプラス」や「講談社BOOK倶楽部」など直営のプロモーションサイトを盛り上げる高島恒雄部長に、“本が人に会いに行く”ためのさまざまな工夫を語っていただきました。

※2014年7月4日に第18回国際電子出版EXPOの株式会社ボイジャーブースで行われた高島恒雄氏の講演「BinBはすごいヤツ ——講談社が取り組む試し読み活用法」を採録したものです。元の映像はこちら

【以下からの続きです】
1/4「本が人に会いに行く ——講談社のすべての刊行物をプロモーションする仕事」
2/4「本が人に会いに行く ——講談社のすべての刊行物をプロモーションする仕事」
3/4「本が人に会いに行く ——講談社のすべての刊行物をプロモーションする仕事」

BinBの4つの利点

高島:いよいよ「BinBはすごいヤツ」という今日のタイトルの「すごい」内容についてお話しようと思います。何がすごいかというと、4つほどあります。まずポイントだけ先に述べますと、1つが「簡単」、もう1つが「どこでもいつでも」、もう1つが「読みやすい」、もう1つが「共有、シェアできる」ということです。
 まず1つ目、「簡単」。

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 BinB体験が初めての方、これがBinBです。今「簡単」と申し上げたのは、試し読みボタンを押すと、すぐにこの(試し読み)画面に遷移することができるということです。「プラグインが必要です」とか「時間が掛かります」といったメッセージが出てくることなく、「読もう」と思った気持ちの0.2秒後ぐらいには、もうこの試し読み画面に来ることができる。

 そして、「どこでもいつでも」。PCだけではなく、みなさんお手持ちのスマホとかタブレットでもあっという間に読むことができます。このトークが終わってからお手持ちのスマホもしくはタブレットでコミックプラスにアクセスしていただければ、立ちどころに試し読みが体験できると思います。

 それから「読みやすい」。このようにサクサクとページがめくれます。よくページをめくる(音やアニメーションなどの)ギミックが入っているリーダーもありますが、あれはたくさん読んでいると飽きちゃうし、面倒くさいんですね。でも、これは本当にすぐに次のページを見ることができて、ストレスがありません。

 さらに「シェアができる」。BinBリーダー内のシェアアイコンをクリックするだけで、Facebook、Twitterでシェアすることができる。つまり、「このキャラのこの表情はいいよね」というようなことをページ単位でつぶやくことができるというのは、非常にポイントが高いんじゃないかなと思っています。

「好きっていいなよ。」(葉月かなえ著)より

「好きっていいなよ。」(葉月かなえ著)試し読みページより

蒲生淳(株式会社ボイジャー事業部/以下、蒲生):ボイジャーの蒲生です。今、「このページについてつぶやく」を選択して、実際にTwitterにリンクをツイートしました。

株式会社ボイジャー開発部・蒲生淳氏(左)

株式会社ボイジャー開発部・蒲生淳氏(左)

 ツイートのリンクを別の人がTwitterのタイムライン上でクリックすると、ツイートした人が開いていたのと同じページが開いて、その人が受けた印象をすぐに共有できるという仕組みになっています。

高島:先ほどの車の例えで言えば「試乗してみなきゃわかんないよね」、「中身をちゃんと見てみなきゃわかんないよね」というときに、スムーズにそこに遷移できるというところが、BinBの非常に大きなポイントかなと思います。興味を持ったところから、実際に試すまでがすごく短く、早く、しかもきれいに、どこでも見られるので、非常にいいんです。

BinB導入前後の大きな変化

高島:そんなBinBを去年(2013年)の11月に導入して、具体的にどのように数字が変化したのかということをこれから見ていただきます。
 まず、PV数(総試し読み数)・直帰率の推移。

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 システム変更前の総試し読み数(グラフ内・青色)は、だいたい50〜60万PVくらいで推移していて、あまり変化がありませんでした。BinBを導入した2013年11月からギューンと伸びて、もう今はだいたい導入前の2、3倍になっていますね。また、PV数もさることながら、直帰率(グラフ内・緑色/1ページのみを閲覧してサイトを離脱した訪問の割合)の低下がもうすごいですね。

蒲生:導入前の直帰率は90%ぐらいありましたね。

高島:「スマホだと試し読みはできないよね」と、これまで直帰してしまっていた人たちがガクーンと減った。これはもちろん(BinBの導入によって)スマホでも試し読みが可能になったからなんですけど、すごく決定的な変化でした。

蒲生:先ほどご覧いただいたPV数は折れ線グラフでお見せしましたが、それを円の大きさで模式的に表したものです。

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 上段が2013年4月から2013年10月——ちょうどシステムの変更前ですね。そして下段、システム変更後の11月からの差を見ていただくと非常にわかりやすいと思うんですが、このようにして円がどんどん大きくなっています。

高島:金星がもう木星になったみたいな感じですかね?

蒲生:はい。膨張してこのままどんどん大きくなっていく、そして輝きを増していく……というような変化を見せています。
 そしてですね、この大きさに対して使われているデバイスの比率も、今回、講談社さまのご厚意で数字を出していただいてグラフにしました。

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 緑色がモバイルで、青色がデスクトップ(PC)、黄色がタブレットですね。
 BinB導入直前の2013年10月ではデスクトップが66%、モバイルとタブレットで合わせて35%。この時点での「コミックプラス」は主にPCでの閲覧のみに対応していて、モバイルデバイスでの作品の試し読みはできなかったわけですから、「システム変更前は直帰率が高めに推移していた」という先ほどの話と照らし合わせると、この35%の人が「サイトに訪れはしたけれど、試し読みができなくて帰ってしまった」と考えることができると思います。
 それがシステム変更後(グラフ下段、2013年11月〜2014年5月)になると、まずiPhoneやAndroidに代表されるスマートフォン、モバイルデバイスが30%からいきなり40%に上がっています。2ヶ月後の2014年1月にはもう49%、そしてそこからまた数ヶ月経たないうちに60%になっている。システムの変更後からは、緑色のモバイルデバイスの部分がもう過半数を超えて、最近ではほぼ3分の2に迫る勢いで伸びている。そして円(PV数)自体も大きくなっています。
 システム変更前後の最大の違いはやはり、すべてのユーザーが自分の持っている端末で試し読みができるようになったというところ。この変化が数字に現れています。

高島:ということは、この比率と円の大きさを掛け合わせると、モバイルでの試し読み総数が相当大きくなっているんです。現状ではあらゆるサイトがモバイルにシフトしていっていると言われていますが、ここでも明らかにそういう差が現れているかなと思います。

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 私からはあと一つだけ、最後に宣伝なんですけれども、先ほどご紹介しました講談社コミックプラスと講談社BOOK倶楽部は、今月末にリニューアルをします(※編集部注:2014年7月31日にリニューアル済)。リニューアル後は、講談社BOOK倶楽部でも書籍の試し読みをBinBで行えるようにしていきます。最初は児童書を中心に、今後は書籍や文庫、どんなものでも試し読みできるようにしていきたいと思いますので、BinBを使って実際の作品の中身をわかってもらった上で、作品をたくさん楽しんでいただけるようにしていきたいと考えております


※動画中の0:24:50から0:35:56までの内容がこの記事(「本が人に会いに行く ——講談社の全刊行物をプロモーションする仕事」4/4)にあたります。

[本が人に会いに行く ——講談社の全刊行物をプロモーションする仕事 了]

編集協力:松村孝宏(numabooks)
(2014年7月4日、第16回国際電子出版EXPOのボイジャーブースにて行われた講演「BinBはすごいヤツ——講談社が取り組む試し読み活用法」より)


PROFILEプロフィール (50音順)

高島恒雄(たかしま・つねお)

1983年、講談社入社。週刊少女フレンド編集部、週刊モーニング編集部、人事部、児童図書第二出版部を経て、2011年よりデジタルプロモーション部に所属。「講談社BOOK倶楽部」、「講談社コミックプラス」などのサイトを中心としながら、自社の全刊行物のプロモーションを精力的に推進している。