作家として活躍する傍ら、新たにこの夏株式会社を立ち上げ、作家と読者をつなぐSNS「CRUNCH MAGAZINE」の運営を始めた今村友紀さん。その活動の真意はどこにあるのか、作家のエージェンシー「コルク」代表の佐渡島庸平さんが探っていくうちに、話はなぜか次第に今村さんの人生相談に……!?
編集者と作家は、どのようなやりとりを経て1つの作品を作り上げていくのか。トークの中で展開されるベテラン編集者・佐渡島さん流の「打ち合わせ」の様子はまさに目からうろこです!
★2013年11月6日、本屋B&B(東京・下北沢)で行われた、今村友紀「CRUNCHERS」創始記念トークイベントのレポートです。
※以下からの続きです。
今村友紀+佐渡島庸平「今村さん、僕と打ち合わせやりましょうよ!」 1/5
今村友紀+佐渡島庸平「今村さん、僕と打ち合わせやりましょうよ!」 2/5
今村友紀+佐渡島庸平「今村さん、僕と打ち合わせやりましょうよ!」 3/5
今村さんて、めちゃくちゃおもしろい人じゃないですか!
佐渡島:「クランチマガジン」はビジネスとしては考えているんですか?
今村:正直、マネタイズはあまり考えていないんですよね。
佐渡島:それはなぜですか? お金がなくても続けていられるのはなぜ?
今村:簡単に言うと、このサイトをつくるのにお金が掛かっていないからですね。僕はプログラミングができるので、このサイトもこの8月にひとりでつくり始めました(※編集部注:「クランチマガジン」のオープンは2013年8月16日)。コストはたかが知れていますし、1〜2週間あればだいたいなんでもできますよ。
佐渡島:マジすか!? いつからプログラムを学び始めたんですか?
今村:会社をつくったのが7月19日なんで、確か7月22日くらいから勉強を始めて……
佐渡島:え……え!? ちょっと待って(笑)! プログラムの勉強ってどうやるんですか?
今村:つくりたいものがあれば、あとは必要な情報を探してきてやるみたいな簡単な感じだったんですけど……。
佐渡島:それまで、自分でサイトを作ったりはしてたんですか?
今村:ブログとか、Tumblrとか……
佐渡島:ブログとかTumblrやってた人が一週間でこれできるんですか!?
適応能力むちゃくちゃ高いじゃないですか! それを小説に表せたら超おもしろいエンターテイメント小説が書ける気がするんですけど……(笑)。
そんな能力があったら、誰かとやった方が絶対おもしろいんじゃないの? 逆に僕はもうプログラマーとしての今村さんの方がむしろ興味あるよ!
今村:でもプログラムも毎日やってると楽しいんですよ! ……なんかやっと良い感じでトークがノッてきましたね(笑)。
プログラムも言ってしまえば小説と同じなんですよ。キーボードで文章をカチャカチャと書いている訳なんで。プログラムというのは、「こうやれば動く/動かない」が明確で、すぐつくれるし、楽しさが分かる。
佐渡島:自分がやっていることがどれくらい難しいかは、自分自身で分かっていますか?
今村:実は昔、コンピューターのシステム開発の仕事をしていたんです。受験の本を書いていたときに学習システムを作って経営をしようと。同時に塾も経営していましたね。
佐渡島:どういうモチベーションで「塾を経営しよう」とか思ったんですか?
今村:まずは塾講師のバイトから入って、そのうち経営陣に入ってくれないかって言われて……。
佐渡島:今村さんて、むちゃくちゃおもしろい人じゃないですか!
今村:そうですか! ありがとうございます。
佐渡島:なのに、イマイチそのおもしろさが小説に書ききれてないんじゃないのかな(笑)?
今村:まだ弾けきれてないところがあって……。
佐渡島:それが出たら小説もっとおもしろくなるよ!
今村さんの小説は今、正直どのくらいの位置にいると自分自身では思っていますか?
今村:反響がすぐリアルに出るネット社会にもともといたので、今の状態はパッと急に梯子を外されたような、今自分がどこにいるのか全く分からない状態。編集者さんが何か言ってくれる訳でもないので、一体何をやったらいいのか、正直今は悩んでいますね。
佐渡島:だからこそ編集者と話し合って、どんどんつくっていくべきなんだと思いますよ。文章を書き直したりするのは苦じゃないですか?
今村:文章を書き直すのは全然苦じゃないですね。1万字くらいの直しでもだいたい何時間かおきには必ず送りますし……。
佐渡島:だったら僕と毎日打ち合わせやりましょうよ!
今村:ぜひお願いします! だいたい編集者からフィードバックが来ると、直しをその日のうちにしてるんですけど、返事が来るのは、いつも1~2ヶ月後なんで……。
佐渡島:イライラしませんか?
今村:しますよそれは! だからこういう会社とかやって、時間を潰している感じですよね。
佐渡島:(笑)。その出版社のシステムに関して異議は申し立てないんですか?
今村:してますよ! 「なんでこんなに長期間メール来ないんですか!? 理解できません!」みたいなことは言いましたし……でもいつも「すみません」みたいな感じで流されちゃうんで、そのやりとりを2年程続けているうちに、それならもう自分ができることをやっていこうと思うようになって。
「分かる人には分かる」って、ダメな言葉だと思ってます
佐渡島:今村さんが自分の人生で印象に残っていること3つ教えてもらってもいいですか。
今村:3つですか?
佐渡島:3つ!
今村:真っ先に思い浮かぶのは、この会社を主要メンバーと一緒にやっていることですけど……
佐渡島:いや、そういうのじゃなくて……幼少時代で思い浮かぶシーン3つ!
今村:小学生の頃、地元秋田県の作文コンクールで金賞を受賞して、自分の作文が新聞に載ったことですかね。
佐渡島:僕が聞きたいのはそういう話じゃなくて……それってテストの回答に書くような「印象的な話」じゃないですか。たとえば、「幼稚園の年長のときに親と一緒に歩いていた帰り道でつまらなくて柵の中に入ってみたら、一歩目で犬のフンを踏んだからその柵には二度と入れなくなった」みたいな。
今村:あぁ、ありますよ! 小さい頃、おじいちゃんおばあちゃんの家によく行くことが多くて、よくひとりで泊まることもあったんですが、そこで夜寝るときに天井を眺めるのが好きでした。天井って真っ白じゃなくて、うねうねした模様があるものがあるじゃないですか?それをずっと眺めていたら距離感を消失して変な気持ちになってしまって……。「厳密な直線ってあるのかな?」なんてことをずっと考えてました。
佐渡島:なぜ直線にこだわったんですか?
今村:厳密な直線っていうのは美しいと思うんですが、実は厳密な直線ってないような気がして……印象に残るんですよ。
佐渡島:うん。僕の打ち合わせって、今みたいに話してもらって、そのことを周りで聞いている人から「なんか変なこと言ってるな」と思われずに、「おもしろい話してるな~」って感じられるようにできればパーフェクトなんですよ。自分の幼少時代のこだわりを、どういう風にしたらおもしろく書けるのか?みたいなことが簡単に言うと打ち合わせだと思ってて……。
★この続きは、DOTPLACEの書籍レーベル「DOTPLACE LABEL」から発売された
『コルクを抜く』からお読み頂けます。
[5/5に続きます](2013/11/29更新)
★「これからの編集者」佐渡島庸平さんのロングインタビューはこちら
構成:後藤知佳(numabooks)
編集協力:高橋佑佳
[2013年11月6日 B&B(東京・下北沢)にて]
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