鷹野凌が毎月お届けする、出版業界気になるニュースまとめ。10本のニュースをピックアップし、理由、経緯、感想、ツッコミ、応援などをコメントしています。なお、ピックアップは鷹野の個人的興味関心に基づくため、かなり電子出版関連に偏っています。あらかじめご了承ください。
【2016年3月24日】 「DMM.com 電子書籍」のWindowsアプリなどで採用されている画面キャプチャーを禁止する仕組みを、回避するアプリを提供していて逮捕された事件の判決。ちょっと不思議なのが、逮捕時の容疑は「著作権法違反(技術的保護手段を回避するプログラムの製造)と特定商取引法違反(誇大広告)」なのですが、求刑は「不正競争防止法違反罪」であること。画面キャプチャー禁止回避が、著作権法120条の2(技術的保護手段を回避するプログラムの製造)では立件できなかったということなのでしょうか?
【2016年4月3日】 ブックオフが2016年3月期に、営業利益で1.5億円の赤字に陥っています。「ブックオフが赤字」というニュースの見出しだけを読んで「古本事業」がダメになったと勘違いしている方が散見されましたが、IR資料を見る限り「書籍」は好調に推移しており売上も伸びています。この記事のタイトル後半にもありますが、新たに始めた「中古家電」が大きく足を引っ張っている状況のようです。

ブックオフ 家電買取の案内ページより(スクリーンショット)
【2016年4月6日】 Amazonの「全商品送料無料」が終了。とりあえず「Amazon.co.jpが発送する書籍」は今後も送料無料なので、出版業界に与える影響は少なそうです。なお、この変更はプライム会員入会促進策の一環だと思ったのですが、記事によるとAmazonは「プライム会員獲得にはサービスやオプションの魅力を訴求することで取り組んでいく姿勢。今回の変更意図とは無関係」と回答しているそうです。えー?

Amazon.co.jp「配送料について」より(スクリーンショット)
【2016年4月11日】 アシェットがマンガ・ライトノベル出版事業を分社化し、KADOKAWAと合弁会社を設立。KADOKAWAが株式の51%を取得するので、議決権の過半数を手に入れることに。なお、提携するクランチロールには、テレビ東京が出資していたり、出版社では講談社が2013年に翻訳マンガ配信を始めていたりと、他社のほうが動きは先行しています。
【2016年4月12日】 本の買取は昨年6月3日に始まったばかりだったのですが、いきなり「一時休止」になってしまいました。ゲームソフト、DVD/ブルーレイ、音楽CD、本と、だんだんサービス領域を拡大してきたのですが、ぜんぶまとめて休止です。しかも当初「終了」と表記されていたのが、後から「一時休止」に書き替えられており、Amazon社内のバタバタぶりが想像できます。本の購入履歴から自動で買取価格を表示するなど意欲的な取り組みで、競合となるブックオフオンラインの「宅本便」にも影響が出るだろうと思っていたのですが。

Amazon.co.jp「Amazon買取サービス」のページより(スクリーンショット)
【2016年4月13日】 広告表示される一番安いモデルで3万5980円。史上最高値です。正直、「Kindle Voyage」の2万3980円でさえ「高ッ!」と思ったのに、誰がこれを買うんだろう? と思いました。ところが、本稿執筆時点のAmazonでは「一時的に在庫切れ」になっています。買う人、いるんですね。素直に驚きです。「Kindle Voyage」が相対的に安く感じるので、そろそろプライム会員価格を設定して拡販を図ると予測しているのですが、さてどうなるか。

「Kindle Oasis」販売ページより(スクリーンショット)
【2016年4月19日】 無料でマンガが読めるアプリ「マンガボックス」が、1000万ダウンロード突破。ちなみにライバルの「comico」は1200万ダウンロード突破しています(2月2日時点のプレスリリース)。「マンガボックス」は「ネイティブ広告」を始めてから、ダウンロード数に関しては伸びが鈍化している感があります。もっとも、より重要な指標はMAU(月間アクティブユーザー数)など「生きた」利用者の数で、こちらは非公開なところが多いのですが。

DeNAのプレスリリースより(スクリーンショット)
【2016年4月19日】 「Fujisan.co.jp」が、雑誌の横断検索を提供開始。同様の機能を提供しているサービスにはオプティム「タブホ」がありますが、オプティムは昨年6月時点で180誌が対象、Fujisan.co.jpは4000誌が対象と、数に大きな差があります。なお、一般書籍の横断検索には、「Googleブックス」「Kindleストア」「BOOK☆WALKER」などが対応しています。横断検索は「電子書籍」ならではの仕組みなので、もっと広まって、もっと便利になって欲しいところです。

Fujisan.co.jpのプレスリリースより(スクリーンショット)
【2016年4月20日】 タイトルがミスリードを誘ってますが、要するに「著作権」とは違った形の制度を用意する、という話。「検索エンジン」ではアメリカ企業がフェアユースでガンガン進め、日本企業は遅れを取ってしまったので、政府としては二の舞を避けたい思惑があるのでしょう。ただ、座長の中村伊知哉さんがブログに書いていますが、事務局が整理した論点に対し議論百出で、まだ当面まとまりそうにない感じではあります。いずれAIが人より優れた創作物を生み出すようになる未来が訪れるでしょうから、いまのうちから議論しておくことは必要でしょう。
【2016年4月20日】 「楽天Kobo」とは完全に別系統の電子書店「楽天マンガ」を開始。同じ楽天IDでログインしても本棚は共有できません。急速に成長している日本の電子コミック市場でシェアを拡大するため、社外と提携してでもさっさとやる、という判断だったのでしょう。「楽天マンガ」が採用した携帯キャリア決済+月額課金方式というのは、フィーチャーフォン時代によく用いられていた手法で、クレジットカード決済できない若者を取り込む狙いです。実は「楽天Kobo」や「Kindleストア」は、携帯キャリア決済未対応だったりします。これは楽天に限らず、Amazon、Apple、Googleなども同様ですが、世界戦略で動いている企業は、日本向けだけのために開発リソースが割きづらい事情があります。大きい組織はどうしても動きが鈍重になってしまうんですよね。

「楽天マンガ」トップページより(スクリーンショット)
4月もいろいろ興味深い動きがありました。さて5月はどんなことが起こるでしょうか。
ではまた来月(=゚ω゚)ノ
[今月の出版業界気になるニュースまとめ:2016年4月 了]
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