COLUMN

菅俊一 まなざし

菅俊一 まなざし
第5回「行列が生むリハーサル」

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第5回 行列が生むリハーサル

 
前から気になっていた本を手に取り購入を決断した私は、まずレジを探そうと、自分の首を上に向け、店内をキョロキョロと見回す。斜め左を向いた時に飛び込んできた“¥”というマーク、そしてその先にある“CASHIER”と書いてある看板が目に入った瞬間、「あっちだ」と看板の方向に向かおうとする。向かいながらも、「“CASHIER”って書いてあるだけだと英語だし、多くの人に対して全く直感的で無いから、あまり意味が無いな」と思いながら、結局看板は頼りにせずレジとそこで会計している店員の姿を見つけて、そちらへ向かって本棚をするすると避けながらレジへと近づいていく。

レジの前に到達すると一本の長い列が目に入り「長いな」と思う。今日は金曜日の夜だから、本を買って週末のんびり読もうという人が多いのだろうか。そんなことを考えながら、列の先に複数のレジがあることも同時に確認する。1つずつのレジにそれぞれ一本ずつ行列を作るタイプではなく、一本の列だけを作っておくタイプだ。最近行列の在り方に凝っていた私はそれを見て「フォーク型だな」と思い、次の予定までだいぶ時間があるため行列に並んでも問題無いことを確認した上で、長い列の最後尾に並んだ。

行列の最後尾についた私は、改めて自分の前に何人並んでいるか数えていく。1、2、3、4、5、6、これはカップルだから二人だが一人と数えよう。7、8、9、10、11。結構並んでいる。

前の人の持っている本をチラっと見る。若い女性がビジネス書を持っている。そういえばさっき通った時に平積みされていた本だなということを思い出しながら、「ああ、あの本を買うのか。結構あの本は売れているのか」等と思ったりする。さらにその前の人がたくさんの本を抱えている様子が目に入り、「これは人数以上に結構時間がかかりそうだな」と思う。

★この続きは、DOTPLACEの書籍レーベル「DOTPLACE LABEL」から発売された
電子版『まなざし』からお読み頂けます。

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PROFILEプロフィール (50音順)

菅俊一(すげ・しゅんいち)

研究者/映像作家。多摩美術大学美術学部統合デザイン学科専任講師。 1980年東京都生まれ。人間の知覚能力に基づく新しい表現を研究・開発し、さまざまなメディアを用いて社会に提案することを活動の主軸としている。主な仕事に、NHKEテレ「2355/0655」ID映像、21_21 DESIGN SIGHT「単位展」コンセプトリサーチ、21_21 DESIGN SIGHT「アスリート展」展示ディレクター。著書に『差分』(共著・美術出版社、2009年)、『まなざし』(電子書籍・ボイジャー、2014年)、『ヘンテコノミクス』(共著・マガジンハウス、2017年)。主な受賞にD&AD Yellow Pencil など。 http://syunichisuge.com/