フリーライターの鷹野凌が毎月お届けする、出版業界関連の気になるニュースまとめ。ピックアップした理由、これまでの経緯、感想、ツッコミ、応援などのコメントを付けています。私のピックアップなので、著しく電子出版関連に偏っています。
2015年2月27日 2月のまとめを出した後のニュース。リアル書店の店頭で電子書籍を販売する実証事業「BooCa」が終了し、事業化へ向けて動き出します。運営は楽天が行うそうですが、コンソーシアムに参加していても実証事業には参加していない、ソニーマーケティング(Reader Store)、大日本印刷(honto)、ブックウォーカー、紀伊國屋書店(Kinoppy)の動向が気になります。なお、日経の同記事には「アマゾンに対抗」という見出しが付いていますが、JPOのリリース資料にはどこにもそんなことは書いてありません。朝日新聞の「ジャパゾン」と同じくらい、読者にあらぬ偏見を植え付ける意味で罪深い。
2015年3月5日 老舗出版社の大型倒産。負債額は2014年3月末時点で約19億6300万円とのこと。業界関係者に衝撃が走っていました。救済に名乗り出るところが現れるでしょうか?
2015年3月6日 林智彦氏の「出版復活」シリーズ。読書離れの主役は「若者」ではなく、60代~70代だというデータを示しています。老眼で小さな文字を読むのが辛くなりますからね。ちなみに私は以前、実家の母親に「BookLive! Reader Lideo」をプレゼントしたのですが、かなり活用していて嬉しかったことがあります。電子書籍の特徴である「文字が大きくできる」点だけでも、本へのアクセシビリティは飛躍的に高まるという実例です。
2015年3月6日 情報通信技術(ICT)活用教育の普及に、水を差すようなニュース。教材ソフトは全て県費で負担しており、1年間の利用ライセンス契約だから、という理由。しかし、そういう期間限定ライセンスなのに、手作業でアンインストールしなければいけないというのも、ちょっと間抜けな話。一方で、政府がデジタル教科書の無償配布解禁を検討というニュースもあったりします。教育関係も、いろいろ目が離せません。
2015年3月13日 他にも多くのメディアが取り上げていますが、最も詳しいこちらをピックアップ。相次ぐ「保護期間延長」や「非親告罪化」などの情報リークに対し、知財は秘密協議で決めず情報開示して欲しいという声明です。なお、thinkTPPIPでは個人・団体の賛同者を募っています。政府の方針は、国民の声によって決まります。
2015年3月17日 編集プロダクションの設立。リストラクチャリング(事業の再構築)の一環でしょう。他にも、編集して終わりではなく読者へ届ける方策まで意識するため「編集局」を「事業局」として再編するとか、ハースト婦人画報社の書店販売業務を受託するなど、さまざまな動きを続けざまに発表しています。
2015年3月19日 楽天がOverDriveを買収し、100%子会社に。Koboを買収した時以上の衝撃をもって受け止められているようで、視界の範囲が騒然としていました。なお、国内展開は今後もメディアドゥとの提携で進めるようです。図書館への配信許諾は電子書店とは別に必要なので、取次であるメディアドゥの役割は依然重要だということでしょう。楽天の主な狙いは、むしろ海外だと思われます。
2015年3月19日 楽天×OverDriveのニュースに埋もれてしまった感がありますが、こちらも大きなニュース。hontoポイント(ジュンク堂・丸善・文教堂で使える)と紀伊國屋ポイントの共通化は、書店で本を買う人にはメリットが大きいのでは。将来的に、Tポイントや楽天ポイントなどの、共通ポイントカードと連携するのか、それとも独自路線で行くのか。仕入れ・物流業務システムの共有化、リアル書店とネット書店の相互連携、海外事業など5つの企画・検討課題がありますが、両社がそれぞれ力を入れている「図書館」には言及されていない点も気になります。
2015年3月24日 KADOKAWA、講談社、紀伊國屋書店が設立した日本電子図書館サービス(JDLS)の電子図書館サービス「LibrariE(ライブラリエ)」が、いよいよ4月から本格稼働です。3年目からは貸出がない限り費用がかからないというのは、よく練られたビジネスモデルだと思います。なお、このJEPAセミナーの翌日に、前述の楽天×OverDriveと、紀伊國屋書店×大日本印刷の発表がありました。界隈が一気に動き出した感がありますね。
2015年3月25日 紙の本と電子の本を同時に扱う、ハイブリッド型書店が誕生。通販のヨドバシ・ドット・コムは評判が良いので、電子書店サービスへの参入も比較的好意的に捉えられているようです。記事中にもありますが、アプリのUIや、XMDF対応だけどドットブックには非対応といった特徴から、シャープの「EBLIEVA(エブリーバ)」を採用しているものと思われます。同ソリューションのブラウザビューアASPは、未来屋書店「mibon(ミボン)」やフジテレビオンデマンドなどにも提供されていますが、ヨドバシは今のところ不採用。本家「GALAPAGOS STORE」にはまだ存在しない、Mac版のリリースが予告されている点も気になるところです。
3月もいろいろ興味深い動きがありました。さて4月はどんなことが起こるでしょうか。
ではまた来月(=゚ω゚)ノ
[今月の出版業界気になるニュースまとめ:第4回 了]
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