COLUMN

鷹野凌 今月の出版業界気になるニュースまとめ

鷹野凌 今月の出版業界気になるニュースまとめ
第5回:2015年4月「紙本購入履歴で電子版が半額になる『読割50』開始」

takano
 フリーライターの鷹野凌が毎月お届けする、出版業界関連の気になるニュースまとめ。毎月10本のニュースをピックアップし、理由、経緯、感想、ツッコミ、応援などのコメントを付けています。なお、ピックアップは鷹野の個人的興味関心に基づくため、著しく電子出版関連に偏っています。あらかじめご了承ください。

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2015年3月25日 3月のまとめを書いた日のニュース。「NextPublishing」のことは前から知っていたので、改めてこういうニュースが出たのをなんとなく眺めていたのですが、その後、インプレスホールディングスの株価が数日で約4倍に高騰して驚きました。以前から「少部数出版はPOD(プリントオンデマンド)になっていくだろう」と言われていましたが、このサービスが業界を大きく変えていくきっかけになるのかもしれません。

2015年3月31日 3月のまとめを書いた後のニュースで、こちらもインプレスR&D。国立国会図書館(NDL)のパブリックドメイン古書コンテンツを販売する「NDL所蔵古書POD」の発展版で、岩波書店との協業。これまではPODだけだったのが、電子版での配信も始まった、というニュースです。ちなみに同じくNDLのデータを使っている「Kindleアーカイブ」には岩波書店の本が含まれておらず、インプレスR&Dとは住み分けできているようです。

インプレス R&Dによるプレスリリースより(スクリーンショット)

インプレス R&Dによるプレスリリースより(スクリーンショット)

2015年4月6日 オーディオブック市場の定期的な計測・分析や、出版・制作・流通ビジネスに関する情報共有などを目的とした協議会が設立されました。私も記者会見へ行きましたが、小学館社長相賀氏が半分冗談のように「『出版社が既得権を守るための新たな団体設立』なんて書かないでね」と言っていたのが印象的でした。「出版社がまた呉越同舟」みたいな反響も目にしましたが、むしろ創立10周年のオトバンクが名だたる大手出版社に混ざって常任理事になっている点に注目すべきでしょう。凄い。

2015年4月6日 有隣堂は以前から書店内Koboストアを展開していましたが、これは規模拡大バージョンといったところ。渋谷の楽天カフェに書店が併設されるようなイメージです。来店特典で楽天スーパーポイントが付与される仕掛けがうまい。同様の来店促進策は、ヤマダ電機などでも行われています。ちなみに小田急百貨店新宿店本館10階は、2月末まで三省堂があった場所です。

楽天によるプレスリリースより(スクリーンショット)

楽天によるプレスリリースより(スクリーンショット)

2015年4月8日 倒産増の要因を「書籍販売が落ち込む中、昨年4月の消費税増税で消費者心理が冷え込んだ」としていますが、実際のところはどうなんでしょう? もちろん要因の1つではあるとは思いますが、主要因ではないような。なお、2017年4月には消費税率10%への引き上げが予定されています。

帝国データバンクによるレポートより(スクリーンショット)

帝国データバンクによるレポートより(スクリーンショット)

2015年4月8日 同社による昨年3月の調査と比較すると、無料の利用経験が21.8%から42.8%へ、有料の利用経験が14.5%から25.3%へと伸張しています。とくに無料が大幅増でほぼ倍増しているのは、comicoやマンガボックスなどの無料アプリが影響しているのでしょうか。

2015年4月15日 予想以上にネガティブな反応が多くて驚きました。「タダで付けろ!」という意見が結構多い。hontoカードが使える丸善・ジュンク堂などで紙の本を買う→読む→すぐ古本屋に売る→データだけでも手元に残しておきたい場合は「読割50」で電子版を買う、みたいな使い方が、本棚スペースを圧迫せずに済むうまい活用法ではないでしょうか。

2015年4月17日 ドコモ「dマガジン」の最新動向。2015年3月末で会員数190万件を突破しているそうです。しかし、月間アクティブユーザー(Monthly Active Users : MAU)率が2割強というのは、要するに使わずお金だけ払っている人が8割近くいるということ。アクティブ率を高める工夫が欲しいところです。

2015年4月22日 新聞社や出版社が軽減税率適用を求めるのは、別に悪いことではないと思うのですが、このニュースには少し気になることが。「書店やコンビニエンスストアで区分陳列されている成人向け雑誌などは対象に含まない方針」とあるのですが、「成人向け」というのは東京都青少年健全育成条例の「不健全図書」指定に基づくとはいえ、原則は業界団体(出版倫理協議会)による自主規制です。そこで税負担が軽くなる/重くなるの線が引かれるというのは、どうなんでしょう? 軽減税率適用狙いで一般向けにしてしまい、不健全指定を受けて慌てて回収という事例が頻発し、更なる規制強化という流れになってしまいそうな気がします。

2015年4月22日 取次飛ばし。もっとも、Amazonは以前から直接取引可能な「e託販売サービス」を提供しており、利用している中小出版社は結構多かったはず。ニュースバリューとしては「大手で初」でしょうか。1年ほど前に、KADOKAWAが所沢市に製作・物流拠点を置くというニュースがありましたので、その流れで考えると自然な成り行きかもしれません。

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 4月もいろいろ興味深い動きがありました。さて5月はどんなことが起こるでしょうか。

 
 ではまた来月(=゚ω゚)ノ

[今月の出版業界気になるニュースまとめ:第5回 了]


PROFILEプロフィール (50音順)

鷹野凌(たかの・りょう)

フリーライター。NPO法人日本独立作家同盟理事長。『月刊群雛』『群雛ポータル』編集長。ブログ『見て歩く者』で電子出版、ソーシャルメディア、著作権などの分野について執筆中。ITmedia eBook USER、ダ・ヴィンチニュース、INTERNET Watch、マガジン航などに寄稿。アイコンは(C)樫津りんご。近著は『クリエイターが知っておくべき権利や法律を教わってきました。著作権のことをきちんと知りたい人のための本』(インプレス)。


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