韓国・ソウル編 その3:
「YOUR MIND」はソウル版「ユトレヒト」?
【以下からの続きです】
その1:弘大エリアの体験型書店「THANKS BOOKS」
その2:注目を集める韓国の絵本文化/延南洞エリアのインディーズ系書店
そして、行きたかったもう1か所の本屋さん「ユアマインド/YOUR MIND」へ。
実は、ここも何度も迷ってしまい、見つけるのに苦労した。Wifi無しで歩くと、かなり迷子になる確率が高くなる。いくら韓国がネット社会だと言っても、どこでも無料の電波が飛んでいるわけではないので、気をつけてほしい。
結局30分ほど迷って、ようやくビル発見。
この小さな看板だけが目印。
5〜6年前にできたと言うから、6次元ともほぼ同じくらい。
「ユアマインド」は、書店の名前でありながら、出版社の名前でもある。
小さな建物の5階にあるが、エレベーターはない。
「ユアマインド」は、マンションの一室のようなスペースが、本屋さんと事務所になっている。
自分が作りたい本を自分で作り、売る。
そんなコンセプトのリトルプレス専門書店だ。
オンライン書店から始め、実店舗を持つまでになったのがすごい。
もちろん本以外に、ポストカード、バッグなども雑貨も販売。東京の「ユトレヒト」に似た雰囲気のお店。木で作られた平台に素っ気なく、本を平積みにするのがZINE系書店の特徴だ。
オリジナルのトートバッグもかわいい。 出版だけでなく、ライブ、映像の上映会、ワークショップなどの活動もしているそうで、6次元ともかなり共通の感覚を持っている印象。
猫もいるので、なんだがほっこりする。
店内をうろうろ歩いているので、飽きない。
お客さんもみんな写真を撮って、楽しんでいる。
猫カフェのような本屋さんでもある。
座って本を読める場所も用意されており、窓からの景色もとてもいい。
不便な場所にあるにも関わらず、お客さんも次々とやってくる。
もはや場所が不便というのは、あまり関係ないのかもしれない。
不便さが、独特の隠れ家感を醸し出して魅力のひとつになっている。
「50部~100部ほどのリトルプレス」という可能性は、今後さらに需要が増えるのだろう。
そんな未来像を実感できる本屋さんだ。
「アンリミテッド・エディション」というイベントは、本を作家さんが直接販売するイベントだそうで、こちらも世界共通のトレンドなのかもしれない。
毎年開催しているというこのイベントには、独立系出版社が50以上参加し、2日間で3000人以上が訪れたらしい。The Tokyo Art Book Fairのような感じなのだろうか。とても気になる……。
この店では、ZINEを何冊か購入した。もちろん言葉はわからない。しかし、ここに来ると何か欲しくなる。そして、この文化を支えたくなる。それくらい、魅力的な活動に感じた。
今日マチ子さんの作風に似た漫画が、とても気に入った。
日本と似ているようでいて、何かが違う韓国。
インディーズ系の書店を巡ると、ソウルのソウル(魂)を強く感じる。
▶YOUR MIND(公式サイト)
▶UNLIMITED EDITION – SEOUL ART BOOK FAIR(YOUR MINDが主催するソウルのアートブックフェア。2015年は11月に開催予定)
「ユアマインド」を出ると、BOOK & COFFEEという文字を見つけた。
検索してもどこにも出ていない。
気になるので、とりあえず入ってみた。
どうやらネットカフェのような、勉強カフェのような場所らしい。
漫画や本もたくさん置いてある。
店員さんに聞いてみると、
「オレイソドケンチャナ(오래있어도 괜찮아)」、つまり「長くいても大丈夫ですよ」という名前のカフェらしい。
「ケンチャナ」は、大丈夫という意味。
そして、驚いたことにとても賑わっている。図書館の自習室のような雰囲気。このような勉強カフェは、日本にもあるといえばあるが、ここはとても居心地がいい。
受験競争が激しいことでも知られる韓国。
高校生は、大学受験の勉強をし、大学生になっても就職のために、勉強する。
とにかく、一年中勉強しているのだ。
しかも、店内で話をしている人は、まったくいない。
ひたすら勉強しているのが驚いた。なんというか、すごい集中力だ。
店内を見てみると、みんな学校のレポートや、調べものなどに集中している。
韓国は、国全体でも教育費がアメリカを上回っているらしい。
競争社会を勝ち残って行くには、やはり勉強が欠かせないようだ。
少し前の日本を思い出す。
しかし、ここは広くておしゃれな空間。静かに本を読むのも良いし、勉強や仕事もはかどりそう。コーヒー1杯で何時間でもいられるのがいい。東京にもこんな店があったら人気が出るだろう。
このようなブックカフェは、ほとんどのお店で、Free-Wifiが使えるため、便利。
旅人にとっても、拠点となる重要なスペースとなる。
ちゃぶ台付きのお座敷席まである。
公共の図書館にはない、ゆるさと、快適さがある。
店員さんも少し、日本語が話せた。
ソウルの学生は日本語を勉強している人が多いとのこと。
カフェと本好きには、楽園のような場所だ。またぜひ行ってみたい。
▶オレイソドケンチャナ/長くいても大丈夫(FourSquare内の紹介ページ)
それにしても、公共の図書館はどうなっているのだろうか……?
調べてみると、近くに大きなソウル図書館があるらしい。
さっそく地下鉄を乗り換えて、訪ねてみた。
少し歩くと、巨大な波のようなガラスの建物が見えてきた。
ここは、2012年に完成したソウル市庁舎。
地元の方は「ツナミ」と呼んでいるのだとか。
ザハ・ハディドの「東大門デザインプラザ(DDP)」と同じようなインパクトがある。
日本以上に新しい建築を積極的に公共施設にまで取り入れる感性に驚いた。
そして、お隣にあるのが、ソウル図書館。かつてソウル市庁舎だった建物だ。
1926年に建設された当時の外壁やホールはそのままの状態に復元。
中には、ブックカフェもあり、市民1人当たり年間20冊以上読むといわれる読書文化を推進している。
その夜、偶然、おもしろいイベントに遭遇した。
景福宮のプロジェクションマッピングショーだ。
これがまたとても斬新な演出で驚いた。
古い城壁に過去と未来を映し出すという実験的な演出。
七色に光り輝く映像と踊りは、観客の心にも何か新しい未来の可能性を照らし出していた。
[アジア本屋紀行 第1回 韓国・ソウル編 了]
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