韓国・ソウルの未来派書店編
その2:“雑貨店”化する書店「教保文庫 光化門店」
【下記からの続きです】
その1:ソウル版「一箱古本市」in 光化門広場
「教保文庫」光化門店がオープンしたのは1981年。
現在では、韓国全土に20店舗を展開。
大きな生命保険の会社が運営しているそうだ。
大型書店と言えば、本探しが大変ですが、
こちらでは、QRコードにスマホをかざせば棚が調べられたり、
作家のインタビューなどが見られたりするらしい。
(※ハングル語だったので、検索機は使いませんでしたが……)
大型フロアが、ものすごく細かいカテゴリーに分かれている感じは
ジュンク堂のきめの細やかさに似ている。
それにしても、日本の「手編みの本」が多い。
翻訳ではなく、日本語そのままで売っているのが不思議。
読めるのだろうか。
もちろん本の横には、編むための棒も売っている。
こうやって本と物を売るスタイルは、今後も増えていくに違いない。
日本でも、「本×雑貨」としてライフスタイルを売る店が増えているが、
未来の書店が、ライフスタイルを提案する文化複合施設化するのは間違いない。
子供用の本もよく見ると、日本のものが多い。
こちらも翻訳版ではなく日本語のまま。
文字を読まなくても楽しめるのだろうか。
こちらは、ハンコ屋さん。
日本でいう「遊印」のようなもの。
漢字ならわかるけど、ハングル語でも
ハンコが人気だとは知らなかった。
韓国では、本は「贈り物」としても使われるようで、
店内の至るところのコーナーが工夫されている。
この棚の形は、ギザギザで本がとりやすい。
「NEW」とか「HOT」というタイトルで区切られていたり、
とにかくいろいろな仕掛けがある。
「感謝の気持ちを本で伝えましょう」というコーナー。
「誰の本を読むか」と言うよりは
「どうやって本を読むか」「どうやって本を使うか」に注目しているところがいい。
この日は、ちょうど母の日だったので、カーネーションを売るコーナーもある。
しかも、花が、どんどん売れている。
これ、日本でもできるのでは?
子供たちには、やはり「妖怪ウォッチ」が大人気。
韓国でも、テレビアニメの放映がはじまり大ブームになっているらしい。
韓国といえば、雑誌のおまけが充実していることで知られていますが、
こちらのアート雑誌は、かわいいトート付き。
あまりに雑誌のおまけが多いため、
付録だけ別のケースに入れて展示してある。
やはり女性用の化粧品サンプルや、ダイエットグッズが多い。
靴下、下着、時計、メガネ、ポットなど、日本ではありえないような商品もある。
しかし、この「おまけ文化」は、本の可能性を拡げてくれるような気がした。
なんといってもダウンロードできないし、コピーもできない。
もしかすると未来の出版は、今より雑貨的存在になっていくのかもしれない。
そういえば「塗り絵」のコーナーも人気があるようで種類も多い。
画材と一緒に売られており、子供が塗り絵を体験するスペースもある。
やはり読むというよりは、体験する本だ。
こちらの「音が出る詩集シリーズ」もおもしろい。
贈答用のカードで、開くと韓国の有名詩人の作品の音声が流れる。
ここは、フードコートが充実していて便利。
休憩して、また本探し、という感じで一日中いても困ることはない。
そして、気になったのが会員制電子書籍サービスの「sam」だ。
会員制だが月額15000ウォン(約1500円)で最大5冊まで、読むことができるというもの。
定額制の音楽配信サービス「アップルミュージック」は、月9.99ドル(約1200円)で3000万曲が聴き放題になるから、
それに比べるとまだそれほどインパクトはないものの、近い将来には、電子書籍も定額配信されるのだろうか。
さらに、自分が作った写真集などを本として制作し、購入できるサービスなどもあるらしい。
最近注目されているPOD(Publish On Demand=注文型出版)では、
品切れ、絶版、海外の本なども購入することができる。
日本でも神田神保町にある三省堂書店では「エスプレッソ・ブック・ マシーン」という小型の印刷&製本機が導入されたが、まだそれほど普及していない。
近い未来には、在庫がない本も店頭で印刷し、販売する日が来るのだろうか。
教保文庫は、時代の流れに合わせた書店を目指し、進化した感じが魅力的だ。
ソウルで読むべきなのは、この未来の書店の空気感なのかもしれない。
▶教保文庫 光化門店(KONESTの紹介ページ)
[第3回 韓国・ソウルの未来派書店編 了]
(次回のアジア本屋紀行は「韓国・ソウルで大人気の観光書店編」です!)
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