韓国・ソウル編 その2:
注目を集める韓国の絵本文化/延南洞エリアのインディーズ系書店
【以下からの続きです】
その1:弘大エリアの体験型書店「THANKS BOOKS」
続いて向かったのは、人気の観光スポットとして有名になりつつある、弘大の近くの「延南洞(ヨンナムドン)」というエリア。
昔は食堂街だった家賃の安い場所が、いまでは人気スポットへと変わりつつある。
弘大からも歩いてすぐなので、ちょうどいいお散歩コースになる。
ちょうど訪れた日は、アートフリマの日。ものすごい人で溢れている。
かつて市場だったらしきスペースを丸ごと使って、若い作家さんが多数出店している。
おしゃれなハンドメイドアクセサリーやお菓子屋さんがずらりと並び、どこも大盛況だ。
どれくらいの頻度で開催しているか聞きそびれてしまったが、きっと毎月のようにやっているのだろう。京都のお寺や東京の鬼子母神でも「手創り市」を毎月開催しているが、少し雰囲気や規模などが近いかもしれない。こんな場所が近くにあったらうれしい。
こちらのムーミン風?クッキーをまとめ買い。
「アート×食」というのも、注目のトレンドだ。
いまは「クラフト系菓子」というジャンルも確立されつつあるので、要チェック。
実は、かわいい手作りマーケットが盛り上がっているのは、アジア全体のトレンド。
日本でも、ハンドメイドマーケット市場規模は約8600億円にもなり、これからもますます拡大することは間違いない。文学フリマを発展させたような「ハンドメイド本」や「クラフト本」のマーケットも生まれたら、電子化とは違った展開が広がり、おもしろくなるのかもしれない。
お次は、マーケットを出てすぐのところにあるカフェへ。
「SALON de CEYLON & MACARON」と書いてある。
古民家のような外観が素敵なカフェ「シーロンサロン」だ。
コーヒーが大好きな韓国にしては珍しい紅茶のカフェ。
ほとんどのお客さんがアイスティーを飲んでいる。こちらは本棚もあり、ブックカフェにもなっている。
椅子もバラバラで、那須のSHOZO CAFEを思い出した。こういうジャンク感は、どの国も共通の美意識なんだな……と実感。何時間いても大丈夫な雰囲気があって、この日もずっと満席だった。個人的に、ここはオススメ。座布団が置いてある縁側の席もあったりして、タイムスリップした気分になる。
▶Salon de Ceylon & Macaron(Time Out Seoul内の紹介ページ)
そして、この先にあるのがオープンしてまだ1年ほどの絵本専門店「ピノキオ」。
やはり黄色と青の鮮やかな外観が印象的。いまやこの付近は「第2の弘大(ホンデ)」とも呼ばれているようで、若い女性でにぎわっている。
置いてあるのは、絵本、外国絵本、ZINEなど。独立出版物や洋書がほとんどなのがおもしろい。
店内は、一日中お客さんで埋め尽くされ、みんな立ち読みしている。
日本の絵本屋さんにはない光景だ。
500冊ほどにセレクトされているせいか、ほとんどが珍しい絵本ばかり。
インドのタラブックスや日本の駒形克己さんの絵本もずらりと並び、こだわりが強く感じられる。
中央のテーブルには、韓国の若手作家さんのビジュアルブックもたくさん並んでいる。
いま韓国の絵本は世界的に注目を集めている。
今年のボローニャ・ラガッツィ賞では全部門で韓国の作家が入選し話題となったように、空前の絵本ブームなのだ。
店主のイ・ヒソン(Lee Hee Song)さんに聞いてみると、「国際機関で働いた経験を活かし、海外の出版社から直接買い付け、本当に良いと思った絵本だけを紹介している」とのこと。
「日本の本屋さんでは、京都の恵文社一乗寺店が憧れのお店」なのだとか。なるほど。日本のブックシーンがこういう形で、韓国にも影響を与えているのが、おもしろい現象だと思う。
さらに「絵本屋さんであるだけでなく、豊かなコミュニティでありたい」という信念を持ち、「小さな美術館のような絵本文化を語り継ぐ空間」を目指しているとのこと。
店内には、ギャラリーがあり、若手イラストレーターの作品を展示中。
確かに、とても魅力的がある空間作りに成功している。
スタッフの皆さんもとても気さくに、話を聞かせてくれた。
好きな本は?と聞くと韓国の作家さんを何人か教えてくれた。
店内には、かわいらしい椅子もありゆっくりと絵本を読むことができる。
原宿にある絵本カフェ「シーモアグラス」にも似た感じ、と言えばわかるかもしれない。
大人も子供も楽しめるこだわりの絵本空間「ピノキオ」は、今後ますます人気が高まるだろう。
▶ピノキオ(ワウソウル内の紹介ページ)
そして、お隣にあるのが、「ハローインディブックス」。
昨年、他の場所から移転してきたので「ピノキオ」同様、新鮮な感じが漂っている。
こちらは、ZINE専門の店だ。
店内は、基本的にZINEを中心としたインディーズ系の出版物やポストカードなどが並んでいる。
そのこだわりがすごい。ここまで一般書がまったくないというのもすごい。
こちらもなぜか壁と本棚が黄色い。装丁にも黄色い紙をちらほら見かける。
ほぼすべてが、ハングル語のため、内容がわからないのが本当に残念だ。
きっと翻訳したら、日本人でも楽しめる内容のものもあるはず。
やはりバイリンガル表記の必要性を強く感じる。
6次元に来店するお客さんもみな、英語の翻訳版がないのかとよく聞かれる。
きっと、英語の普及はアジア全体の課題なのだろう。
謎のオブジェなども売られており、とてもおもしろい。本とはいったい何だろう?という素朴な疑問が湧いてくる。ここは、「本屋さん」というよりは、本を作るクリエイターのための本屋さんと言った方が正しいかもしれない。しかし、こういう本の「物質性」こそが電子化に対抗する武器にもなる。もしかすると実験的な造本から未来の本屋さんの可能性が開かれるのかもしれない。
「ハローインディブックス」のような韓国中の若手クリエイターの情報がまとまって見られる場所は、貴重な存在。そのお店の名前の通り「インディブックス」に出会えるきっかけのようなお店だ。言葉が読めなくても、その情熱が造本から伝わってくる。
▶ハローインディブックス(Facebookページ)
ちなみに弘大(ホンデ)のインディーズ系書店は、なぜかみな夜遅くまでオープンしているところが多いので、ぜひソウルに行った際は立ち寄ってほしい。
1日あればかなりの数の書店を巡ることができる。
そして、行きたかったもう1か所の本屋さん「ユアマインド/YOUR MIND」へ。
[その3:「YOUR MIND」はソウル版「ユトレヒト」? に続きます]
(2015年7月14日更新)
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