INTERVIEW

本のしごと研究所

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【募集終了】第1回 綾女欣伸 2/2(朝日出版社〈アイデアインク〉シリーズ編集者)

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職との出会いは、人との出会いでもあります。DOTPLACE編集部オススメの本に関する求人情報と、そこで活躍する人の思考の裏側をご紹介する「本のしごと研究所」。第1回のゲストは、2012年に創刊した〈アイデアインク〉シリーズの生みの親であり、全作を編集している朝日出版社第5編集部・綾女欣伸(あやめ・よしのぶ)さん。人気シリーズはどうやって作られているのか、書籍の編集ってどんな仕事なのか、未来のスタッフに求めることなどなど、お話しいただきました。
※求人情報は記事の末尾にあります。

前編からの続きです

自分が面白いと思うものを信じられる人がいい

朝日出版社第5編集部・綾女欣伸さん

朝日出版社第5編集部・綾女欣伸さん


―― 今回の求人は多忙な綾女さんの右腕的存在がほしいということで。やる気があればいろいろ携われるんですか?

綾女:やりたいと強く思えば全部できます。今回はのちのち正社員登用の可能性があるアルバイト採用なんですけど、〈アイデアインク〉を含めた僕のスタッフという感じなので。〈アイデアインク〉にダメ出ししてもらってもいいし、僕は一般書もやるので写真集でも翻訳物でも。究極的には本じゃなくてもよくて、自分で企画を立てて何かコンテンツにするっていうことをどんどんやってほしい。手伝いっていうよりは、「自分でこういうことやりたい」っていう人がいいですね。

―― 経験がなくても大丈夫なのでしょうか。

綾女:「経験」って難しいですよね。経験を重視しすぎると、実務は出来るんだけど企画は面白くない……とか、すごくあると思うんです。実際に辞めていく人は、企画が思いつかないとか、企画を出したとしても弱くて通せない人が多い。校正などの実務はやりながらいくらでも覚えられるので、最終的には企画を立てて、作れて、できれば作った後の販促とかまで面倒を見れるほうがいいです。

―― 任される範囲が広くて、すごく穴場な求人ですよね。でも“編集”っていう仕事をやりたいと思っても、実際どんな仕事なのかイメージするのが難しいと思うんです。

綾女:よく聞かれるんですよ、「編集って何するの?」って。先生のところに原稿取りに行くんですよね、とか。それって結構古いイメージですよね(笑)。本質的には、面白い人を見つけて、その人に文章を書いてもらう、っていうのが分かりやすいでしょうか。

―― いろんなことに興味がある、好奇心旺盛な人がいいですよね。

綾女:面白がれる人がいいし、自分が面白いと思うことを信じられる人がいい。面白いものを見つけても、結局そのことを信じられないと形にならないんじゃないかと思っていて。信じていないと企画も通らないし、売るとなった時も人がついてこない。本当に「面白い」と思っていれば、読んでほしいから自費で出張して書店回りとかしちゃうし、その姿を見ている周りの人間もついてきてくれる。あと「なんで面白いんだろう」っていうのを考えられることですね。編集の段階において「面白さの理由」を考えることは、どうやったら他人からも興味を持ってもらえるかを客観的に考えることにつながると思います

―― 肉体的にはハードな職種だと思います。

綾女:まあそうですね。けっこう夜遅いことも多いですし。でも、土日で疲れていても気になるものがあったらイベントなり映画なりを見に行っちゃう。そういう人は面白いですよね。ついつい休みの日でも書店を見に行っちゃうとか、自然にできる人がいいです。オフィスのボードに「17時帰社」って書いてあるのに2日間くらい帰ってこなくて電話してみたら「今福岡にいるんですけど、すごい面白い著者見つけました!」みたいなのとか。そういう人が来てほしいです(笑)。

朝日出版社・第5編集部オフィスの一部

朝日出版社・第5編集部オフィスの一部


―― ちなみに綾女さんなりのインプット方法ってあるんですか?

綾女:新聞はけっこう好きです。小学生の頃から。今は忙しいので週末に1週間分の朝刊と夕刊をまとめ読みするんです。文化欄も多い夕刊まで取るのがおすすめなんですけど、記事だけでなく広告を見ればどんな本が出ているかだいたい分かるし、その他の広告や新商品の紹介、「新社長」欄まで、本当に雑多な情報が企画のヒントになります。新聞を読んでる時が一番好きです(笑)。

―― 綾女さんのスタッフになるということは、人間的な付き合いもあるじゃないですか。たとえば“お酒は飲めるほうがいい”とか、キャラクター的には何か希望がありますか?

綾女:自分が上に立つってことがほとんどなかったので、接し方とか逆に教えてほしい……。ただ、「みんなで楽しくやろう」みたいなのは苦手かもしれないですね、「週末何してたの?」とか言ってイスをくるっと回転させてみたいなのは(笑)。一匹狼同士の友情というか、実際の仕事をしてる中で関係を確認するというか、そういう方が好きですね。でも、これは僕の元上司から教わったんですけど、入って1週間くらいはお昼に神保町界隈のおいしいお店を紹介して回りますよ(笑)。

―― じゃあ仕事においても「育ててやるぞ」というよりは「ついてこいよ」っていうスタイルですね。

綾女:基本的に見て学ぶものだと思ってるので。そもそも一から全部教えられないですよね。取材や著者との面会に連れていったり、イベントを一緒にやったりしながら覚えてもらうしかないと思うんで。ある意味古いタイプの人間だと思うんですけど、自分が正解というわけではないし、すごく至らないところもあると思うので反面教師にでもしてもらえればいい。見て覚えられる勘のいい人っているじゃないですか。お茶の出し方ひとつにしても、見てる人はすごい見てますよね。学ぼうっていう気があればいくらでも学べると思うんです。
 

「言葉で本質を捉える」編集という仕事の可能性

―― 朝日出版社さんでお仕事をすることで、「将来こういう道に活かせる」とか、「こういう風になりたい人に来てほしい」といったようなことはありますか。

綾女:「編集」って今後ますます重宝される仕事になると思うんです。それは「本」を作るという意味だけじゃなくて、ざっくり言えばコンテンツを作る仕事ってことだと思います。人と人を結んだり、ウェブや動画を編集したり、企業のイメージを打ち出したり、イベントのオーガナイズをしたりとか。情報がさらに氾濫していく中で、情報を結びつけて編集し、新しいコンテンツを作る能力にはすごく可能性があると思います。出版業界が傾いても全然余裕というか。その基礎体力を鍛えるのに、本の編集はすごくいいと思うんです。内沼晋太郎さんが『本の逆襲』で書いているように、本っていうのは常に拡張している大きな器みたいなものなので、そこには何でも入るんです。そこで学んだことが、たとえばカレー屋を始めるにあたって役に立つかもしれないし。ただそこで、ちゃんと文章が読めて書ける力は必須だと思います。それを抜かして「編集」っていうのは、僕はちょっと違うかなと思ってます。

―― 文章にするという行為は何をするにしても必要なことですよね。絶対に他人に伝わる形にするということですし、頭の中も整理されます。

綾女:たとえばテレビ番組を作るにしても、「こういう番組です」って説明するためには文章が必要ですよね。作るだけじゃなくて、作ったものを外に伝えるためにも絶対文章が要る。本にどんなタイトルを付けるか、売るために帯にどんなコピーを入れるか、それを考えるのは、ものの本質を捉えるということ。本の編集は基本的に、著者の本質をつかんだうえでやり取りし、それを他者にも伝えることのような気がするんです。それは別に出版の世界だけじゃなくて、飲食業でも製造業でも他の業界でも通じることかと。そういった意味でも、「言葉でものの本質を捉える」という書籍の編集はすごく汎用性のある仕事だと思います。

[第1回:綾女欣伸(朝日出版社〈アイデアインク〉シリーズ編集者) 了]
聞き手・構成:井上麻子(2013年12月13日、朝日出版社にて)
 
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そんな朝日出版社・綾女さんが、一緒に仕事をする仲間を現在募集中です!
※この求人の募集は、2014年1月14日(火)をもって終了しました
※下記以外の職種の募集もあります。詳細は朝日出版社採用情報ページをご参照ください

【職種】編集アルバイト

【内容】〈アイデアインク〉シリーズおよび一般書の書籍編集・校正

【条件】・本気でプロの編集者になりたい方
    ・原稿整理・校正(+テープ起こしなど)がひととおりできる方
    ・できればイラストレータやフォトショップが使える方
    ・〈アイデアインク〉の著者に興味がある方

【勤務開始日および待遇】最短で2014年1月から(要相談)/交通費全額支給

【勤務地】東京都千代田区西神田3-3-5 朝日出版社ビル内2F
    (東京メトロ・都営地下鉄「九段下」駅より徒歩3分/「神保町」駅より徒歩5分
     /JR「水道橋」駅より徒歩7分)

【勤務時間】午前10時~午後7時

【応募方法】履歴書(写真貼付/メールアドレスと電話番号明記)を下記宛に郵便またはメールで送付ください。書類選考のうえご連絡いたします。(応募書類不返)

【応募締切】2014年1月14日(火)必着

【連絡先】株式会社 朝日出版社第5編集部 担当:綾女(あやめ)
     〒101-0065 東京都千代田区西神田3-3-5
     電話:03-5214-5662 E-MAIL:5hen@asahipress.com

★「本のしごと研究所」では、本に関する求人情報を随時募集しています。出版社に限らず、編集プロダクションや書店など、本に関わる機会のある求人であれば職種などは特に問いません。この記事のようなインタビュー形式の求人をDOTPLACEに掲載してみたいという採用ご担当者の方は、dotplace@numabooks.com(担当:後藤)までお気軽にお問い合わせください。


PROFILEプロフィール (50音順)

綾女欣伸(あやめ・よしのぶ)

1977年生まれ。朝日出版社で編集職。内沼晋太郎『本の逆襲』ほか〈アイデアインク〉シリーズ、武田砂鉄『紋切型社会』、Chim↑Pom『エリイはいつも気持ち悪い』などを編集。