INTERVIEW

本のしごと研究所

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【募集終了】第1回 綾女欣伸 1/2(朝日出版社〈アイデアインク〉シリーズ編集者)

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職との出会いは、人との出会いでもあります。DOTPLACE編集部オススメの本に関する求人情報と、そこで活躍する人の思考の裏側をご紹介する「本のしごと研究所」。第1回のゲストは、2012年に創刊した〈アイデアインク〉シリーズの生みの親であり、全作を編集している朝日出版社第5編集部・綾女欣伸(あやめ・よしのぶ)さん。人気シリーズはどうやって作られているのか、書籍の編集ってどんな仕事なのか、未来のスタッフに求めることなどなど、お話しいただきました。
※求人情報は記事の末尾にあります。

「変なことやってるな」と思われてる部署です(笑)。

朝日出版社第5編集部・綾女欣伸さん

朝日出版社第5編集部・綾女欣伸さん

―― 今回は綾女さんの所属する第5編集部でスタッフ募集ということで、まずは会社と部署について教えてください。

綾女:朝日出版社は1962年の創立で、もとは語学テキストの会社としてスタートしたんです。いまも出版物の中心は語学系のもので、大学生向け語学教材のほかに、『CNN English Express』という雑誌や参考書も作っています。僕のいる第5編集部は一般書籍の部門。〈アイデアインク〉シリーズの他にも単行本を出していて、それぞれ独立して編集を行なっている社員がいま2名います。うちの会社は刊行点数のノルマよりも面白い企画を尊重する空気がある。「誰もやっていないもの」に対しての包容力があると思いますね。

―― そんななかで生まれたのが〈アイデアインク〉シリーズなんですね。

綾女:入社4年目でいまの部署に移ってきて、自分の企画に集中できるってなった時に、対外的に新しく社内的にも意義のあるものを作りたくて。うちの会社は文庫も新書も持っていないので、そんな機能を持つ別の「容れ物」、つまり“レーベル”っていうものがあるかなと。シリーズのようなものですが、新書など既存の分野に入り込むのではなくて、新しいコンテンツに見合った新しいパッケージの器。それで2011年の夏前くらいに、過去に一緒に仕事をした編集者の菅付雅信さんに話を持ちかけ、共同編集で〈アイデアインク〉を立ち上げることになりました。

 アイデアインクをはじめ 、綾女さんが近年編集した本たち

〈アイデアインク〉シリーズをはじめ、綾女さんが近年編集した本たち

―― 社内的にも期待されている部署なんじゃないですか。

綾女:うーん「変なことやってるな」って感じですかね(笑)。でも読者に「朝日出版社って面白い」って思ってもらえるのであれば、少しは会社の役にも立ってるのかなって思います。
 

〈アイデアインク〉は行動へのパスポート

―― 以前、インタビュー記事で綾女さんが〈アイデアインク〉を“ウェブと紙の中間をいくメディア”という風に表現されててなるほどなと思いました。紙ものの深さもありつつ、ウェブの速度もあるという。

綾女:本当に今のウェブの「速い世界」で面白い人ってたくさんいますよね。それはある種、今の雰囲気とか時代感を汲み取ってすごくいい形でアウトプットしている方々だと思うんです。でも、ウェブだけだと読み足りない感じがあって。インタビューや記事の編集の度合いにもよるんですが、もっと深く知りたいって思うものが多い。でもそれを紙にしようとすると時間がかかってしまうので、その中間くらいをいきたいなと思ったのがコンセプトですね。

―― 著者はどうやって選んでいるんですか。

綾女:レーベルを作るにあたり色々打診して、震災後のメディア表現として突出していた津田大介さんとグリーンズに最終的に落ち着いたんですけど、その後は走りながらですね。普段見聞きしているなかで「面白い!」と思った人がいたら「この人はどう?」と二人で話し合う感じで、定期的に会議はしてないです。それで実際に著者候補に会ってみてという感じですね。結果的に8割くらいが(単著としては)初めて本を出す著者です。

―― 「これはいける」と綾女さんのアンテナにひっかかるポイントって何なんでしょう。

綾女:やっぱりその人が発信するものの中に強い言葉があると「この人は面白い。もっと聞いてみたい」と思いますね。たとえば映画監督の園子温さんだったら“絶望に勝ったんじゃなくて、希望に負けた”っていう言葉とか。そんなこと誰も言わない。どんな人だろうって思って実際に会ってみたら、元・詩人だったんですけど。

―― 本の構成や内容はどういう風に決めていくんでしょうか。

綾女:たとえばChim↑Pomや園さんの場合は、彼らに関するあらゆる資料を読み込んでポイントとなる質問項目を作りながら構成を練りました。取材していいセンテンスが出てきたら、そこをもっと掘り下げる。Chim↑Pomの時は「アートは応えるもの」っていう言葉が出てきたので、そこを丁寧に聞き出したりしました。その人が持っている本質の予兆を過去の資料から読み取り、対面の取材でぶつけて、土台となる原稿を作って著者に大幅に直してもらいます。単なるインタビュー集にしないために、最終的に著者の「声」にしてもらうんです。もちろん一から著者に書いてもらう場合もあります。君島佐和子さんの『外食2.0』や内沼晋太郎さんの『本の逆襲』はそうですし、グリーンズはウェブに掲載されている記事に、具体的な数字やアイデアの由来をかなり書き足してもらいました。

―― 初めて本を出される著者が多いので、原稿のやりとりとかも大変なのでは。

綾女:かなり大変ですね。その人の「今後の名刺」になるような本なので、気合いも入ります。憑依するくらいに著者と一緒になって作り上げていく感じが強いのかもしれないです。

―― 一冊ごとの制作期間はどれくらいなんですか。

綾女:バラバラですけどだいたい4〜5ヶ月くらいです。単行本って考えると短いほうだと思います。2、3ヶ月に一冊は出したいなって思っていて、今ちょうどそのペースですね。

―― サイズ感やページ数もコンパクトですよね。

綾女:読者に「内容が浅かった」「2時間で読み切った」と言われることもあるんですけど、それでいいと思うんですよね。このシリーズのデザインをお願いしているグルーヴィジョンズの原さんがおっしゃったように、〈アイデアインク〉は「アルバムよりはシングル盤」なんです。この本は起点でしかなくて、読んだ後に別の関連本を手に取ったり、イベントに行ったり自分で何か始めたり、そういう行動のための入り口というかパスポートのような“きっかけ”であればいい。そう思って、出来るだけコンパクトに煮込んでだいたい180ページにしてあるんです。

―― 綾女さんは制作の全般をやられているんですよね。「園子温フェス」など販促イベントも面白いと思いました。

綾女:著者の選定から取材、構成、原稿作り、校正までの編集実務だけでなく、チラシとか店頭POP、新聞広告とかも自分で作ってるんですよ。好きでやるので自分でやったほうが早いしと思って……たぶん時間の使い途を誤ってると思うんですけど(笑)。イベントも僕と菅付さんとで企画しています。イベントはトークショーとサイン会だけじゃないと思っていたので、著者と本の性格に合ったイベントをある意味「編集」してやってます。
 

「面白いものが出来る」というワクワク感

―― 本を作っていて一番楽しい瞬間ってどんな時ですか。

綾女:著者から思いもしない強い言葉が出てきた時が一番興奮しますね。僕、編集者になる前に音楽のインディーズレーベルで働いてたんですよ。その時も、アーティストからすごくいいデモテープが上がって来た瞬間が一番テンションが上がった。完成品が出来た時の感動よりも、これから面白いものが出来るっていうワクワク感のほうが大きかった気がします。その感覚は本を作る時も一緒なのかなって思います。

―― 自分の聞きたかったことが返ってきた!という感覚ですか。

綾女:それを上回るものですね。僕の聞きたいことなんて、しょうもないことなんで(笑)。その時が一番どきどきしますね。

―― 〈アイデアインク〉シリーズのすごいところは、このシリーズなら自分の興味のない分野の著者の本でも読んでみようと思うところだと思うんです。

綾女:それはすごくうれしいです。自分の好きなものの向こう側に行くのってすごく勇気がいるし、どうやっていいか分からなかったりしますよね。たとえばジャック・ラカンの本が好きな人はEXILEを聴かないだろうし、ゴダールの映画が好きな人は「ハリー・ポッター」って観ないでしょ。ソーシャルメディアに関心はあっても、アートや食には興味がない、みたいなことは多々あると思っていて。でもひょっとしたら、その塀の向こうに面白いことが眠っているかもしれない。そこにハシゴをかけるみたいな仕事はとても面白いですよね。〈アイデアインク〉という一つの視点から読者とともに多様な世界を眺めて、それらを結びつけることで新しい創造の芽が生えてくるとしたら、こんなに楽しいことはないです。

2/2に続きます
聞き手・構成:井上麻子(2013年12月13日、朝日出版社にて)
 
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そんな朝日出版社・綾女さんが、一緒に仕事をする仲間を現在募集中です!
※この求人の募集は、2014年1月14日(火)をもって終了しました
※下記以外の職種の募集もあります。詳細は朝日出版社採用情報ページをご参照ください

【職種】編集アルバイト

【内容】〈アイデアインク〉シリーズおよび一般書の書籍編集・校正

【条件】・本気でプロの編集者になりたい方
    ・原稿整理・校正(+テープ起こしなど)がひととおりできる方
    ・できればイラストレータやフォトショップが使える方
    ・〈アイデアインク〉の著者に興味がある方

【勤務開始日および待遇】最短で2014年1月から(要相談)/交通費全額支給

【勤務地】東京都千代田区西神田3-3-5 朝日出版社ビル内2F
    (東京メトロ・都営地下鉄「九段下」駅より徒歩3分/「神保町」駅より徒歩5分
     /JR「水道橋」駅より徒歩7分)

【勤務時間】午前10時~午後7時

【応募方法】履歴書(写真貼付/メールアドレスと電話番号明記)を下記宛に郵便またはメールで送付ください。書類選考のうえご連絡いたします。(応募書類不返)

【応募締切】2014年1月14日(火)必着

【連絡先】株式会社 朝日出版社第5編集部 担当:綾女(あやめ)
     〒101-0065 東京都千代田区西神田3-3-5
     電話:03-5214-5662 E-MAIL:5hen@asahipress.com

★「本のしごと研究所」では、本に関する求人情報を随時募集しています。出版社に限らず、編集プロダクションや書店など、本に関わる機会のある求人であれば職種などは特に問いません。この記事のようなインタビュー形式の求人をDOTPLACEに掲載してみたいという採用ご担当者の方は、dotplace@numabooks.com(担当:後藤)までお気軽にお問い合わせください。


PROFILEプロフィール (50音順)

綾女欣伸

1977年鳥取県生まれ。大学院で哲学科(修士)を修了後、インディーズ音楽レーベルを経て、現在は朝日出版社第5編集部に勤務。2012年に〈アイデアインク〉シリーズを立ち上げ編集中。その他に、森山たつを著『セカ就!』、管啓次郎訳『チェルノブイリ 家族の帰る場所』、長沼毅著『世界をやりなおしても生命は生まれるか?』なども編集。@idea_inkでもつぶやき中。