気鋭のクリエイターを月替わりで起用し、本/読むこと/書くこと/編むことにまつわるグラフィック作品を展示する「DOTPLACE GALLERY」。2020年10月期の担当は、まるでレコードの溝をなぞるような、質感の感じられる作品たちが印象的な、イラストレーターの平木元さんです。書物の銀河の向こう側、どこか時代の未明へと連れて行ってくれるような、詩的な”青”が印象的な作品を描き下ろして頂きました。
平木元さんに聞きました
——どのようなイメージまたはコンセプトで今回の作品を制作されましたか。
夜中、ベッドの上で枕を挟んで壁にもたれかかり小説や物語の世界に没入していく。活字や図版を見つめる眼の先の消失点から反転して頭上に広がりゆっくりと漂う情景。そんなイメージで制作しました。
古書店やレコード店などでみつける印刷物やインターネット上の画像などの中から、本を読む姿やページをめくる手、の写真や図版を日常的に集めていてこの作品もその中から選んでモチーフとしました。
楽器を奏でる人、さびしげな後ろ姿、水に浸かる人、静止感のある生き物、天体に関する物、など他にも色々といくつかのテーマでモチーフを収集しています。
——普段、作品制作の上で重視していることは何ですか。
うまく伝えられるかわからないのですが、作品との距離感のようなものを意識しています。
作品の側からこちらを見つめる視線や感情を汲み取りながら作っていければと思っています。
使用する画材や技法は作品によって様々です。最近は主にインク、版画、モノタイプ、コラージュによって制作しています。
今回の作品もこの複合で制作しました。
制作の歯車が噛み合って動き出す時は自分にとって少しだけだとしても未知の技法を発見出来た時だと感じています。
端的に青という色の中から、これだと思えるようなその時の自分にとって理想的な青、その一色を見つけることが出来ればそれだけで一気に視野が開けるような感覚もあります。
ここ数年は古くからある印刷的な技法(彫って刷る、描いた物を写し取る、サイアノタイプ、感光による変化、薬品による変容、など)に興味が有り、どのように作品に落とし込めるかと色々と実験しています。
——平木元さんにとって大切な本を1冊挙げるとしたら何ですか。
『I LISTEN TO THE WIND THAT OBLITERATES MY TRACES: MUSIC IN VERNACULAR PHOTOGRAPHS (1880-1955)』
アンビエントや電子音楽の制作者として知られるSteve Roden(スティーブ・ローデン)が自身のコレクションしている古い写真とSP盤音源からセレクトし、本とCDにまとめたモノです。
淡々と並べられた市井の人々や音楽家の写真がその当時の音楽と共に流れると様々な情景や想像が頭に浮かび、とても創作意欲を刺激されます。
溢れ出すようなものではなく、静かに火が灯り、風が吹き、水が流れていくような。
今に繋がる制作に対する姿勢や興味の対象も少なくない部分がこの本の影響下で広がっていったように思います。
事あるごとに項をめくり耳を傾けています。
——今後のご活動について何かございましたらどうぞ。
10/7(水)から11(日)まで西荻窪のshop & gallery FALLで展示があります。
このような時世ですが、お時間ありましたらお立ち寄りいただければ幸いです。
平木元(gennhiraqui)個展「QU’IL Y A QUELQUE」|shop & gallery FALL
期日:2020年10月7日(水)〜2020年10月11日(日)
場所:shop & gallery FALL
〒167-0042 東京都杉並区西荻北3-13-15-1F
13:00 – 19:00 | 月・火お休み
[DOTPLACE GALLERY #073:平木元 了]
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