INTERVIEW

DOTPLACE GALLERY

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#071:西脇一弘

今月の1枚(※クリックで拡大できます)

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気鋭のクリエイターを月替わりで起用し、本/読むこと/書くこと/編むことにまつわるグラフィック作品を展示する「DOTPLACE GALLERY」。
2020年8月期の担当は、「眺めの良い線」が人を魅了してやまない、画家・音楽家の西脇一弘さんです。本来は複製を目的として発明されたはずの印刷物に閉じ込められた、2つとない、再現不可能な読むことの「なにか」。その手触りを感じてみてください。

西脇一弘さんに聞きました

——どのようなイメージまたはコンセプトで今回の作品を制作されましたか。

読書には内容を「読む」以外に「見る」「触れる」と云う側面もあると思います。挿画や装幀の細かな活字の組み方、書体、紙質等から想起される内容への期待感も本から得られる楽しみの大切な要素だと考えて、「活字を印刷する」と云うイメージを自分なりに直接的なイラストにしてみました。転写する方法を使っているので一見版画のようですが、版を作っているわけではないので一枚限りです。なので「印刷」とは矛盾しているのですが、「印刷」のあくまでもイメージを描いたものと思ってもらえたら幸いです。

——普段、作品制作の上で重視していることは何ですか。

今回のような版画風の作品に限らず、絵を描く手順の中でいつも大切に思うのは、自分でコントロールし切れない要素を盛り込む事です。版画風の作品は転写する為、どうしても予測のつかない結果になります。筆を使って淡々と描いていく場合でも、同じように予測のつかない描き方や手順を考えて試してみるのが、自分にとって重要だと思います。一つ例を挙げるなら、下地の絵の具が乾ききらないうちに、あえて上塗りをしてしまうと、乾いてなかった部分だけ絵の具が流れてしまって、思いがけない効果が得られる場合があります。

画材について自分にとって重要なのは安価な事で、油彩や透明水彩等はキャンバスや紙、絵の具も高価なのであまり使った事がありません。好んで使っているのはペンキ、アクリル絵の具、梱包用の紙、スタンプ用のインク、版画用のインク、その他鉛筆や色鉛筆、ボールペン、マジックなどありふれたものです。

——西脇一弘さんにとって大切な本を1冊挙げるとしたら何ですか。

『ポプラの秋』湯本香樹実
幼い頃、誰もが自己の不確かさに途方に暮れながら、世界との関わり方を少しずつ学んで行くと思います。その過程が鮮やかに生々しく描かれている点で自分にとって特別な一冊だと思います。

——今後のご活動について何かございましたらどうぞ。

現在は誰もが困難で不安の多い状況が続いていますが、1日も早く安心出来る状況になる事を願っています。個人的には少しずつでも、より良い作品が出来るようになりたいと思います。今後もコンスタントに活動を続けていけるといいなと思っています。

[DOTPLACE GALLERY #071:西脇一弘 了]


PROFILEプロフィール (50音順)

西脇一弘(にしわき・かずひろ)

1983年からsakanaと云うバンドで音楽活動を続け2018年12月にsakanaは活動終了。活動期間中にsakana名義で14枚、camera名義で1枚、ソロ名義で2枚のCDアルバムをリリース。現在はさまざまな音楽家とのコラボレーションを通して音楽活動を続けています。1984年頃から音楽活動と並行して絵を描き始め1987年に初個展。以降、毎年3~4回の個展をコンスタントに行っています。2006年に初の書籍作品[ノアラとヨッコラ](アートン新社)を発表。 http://www.kazuhironishiwaki.jp


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