気鋭のクリエイターを月替わりで起用し、本/読むこと/書くこと/編むことにまつわるグラフィック作品を展示する「DOTPLACE GALLERY」。
2020年9月期の担当は、今年6月に初のエッセイ&イラスト集『ざらざらをさわる』を上梓された、イラストレーターの三好愛さんです。目には見えないけれど、本を読んでいるとたしかに感じる”なにか”の気配。読み手に寄り添い、注ぎ込まれるかわいい存在に気付かされる、素敵な作品を描き下ろして頂きました。
三好愛さんに聞きました
——どのようなイメージまたはコンセプトで今回の作品を制作されましたか。
読書の豊かさを表現しようと試みましたが、本というもののなにが自分を豊かな気持ちにさせるのかをあらためて考えてみると、知らなかった視点や自分では思いつかない世界のことが自分の内部になだれ込んでくることなのかな、と思いました。そのなだれこみの心地よさを原動力に、いつもページをめくっているように思います。
でも、一番幸福を感じるのは、ページをめくって読んでいるその瞬間で、なだれこんできたものたちが、読書し終わったあともなお、体内にとどまり、なじんでいくかというと、そうとも限らず、今まで読んだ本が全部自分の血肉になってればいいのにな、とは思うのですが、飼い慣らせないまま外に出ちゃったものとかも結構いて、その出ちゃったものを埋めるためにまた新しい本を読んだりしている気がします。というようなことを考えながら描きました。
——普段、作品制作の上で重視していることは何ですか。
和紙にアクリル絵具で制作しています。重視してるのは「なんとなく描かない」ことです。「なんとなく」自分の世界観を垂れ流したものを描いてしまうと、絵が閉じすぎてほかの人とつながれなくなってしまうので、自分の表現をしつつ、どこか現実と接点が持てるように気をつけながら描いています。
——三好愛さんにとって大切な本を1冊挙げるとしたら何ですか。
『どもる体』です。はじめて装画の仕事ができて嬉しかった、というのもあるのですが、今までほぼほぼ小説しか読んでいなかったので、『どもる体』を読んで以降、人文書ってこんなにおもしろいんだ…と新しい読書体験の世界に踏み込めました。
——今後のご活動について何かございましたらどうぞ。
特にこれと言った予定があまりないのですが、みっちりと準備をした個展を一年後くらいにやりたいです。
[DOTPLACE GALLERY #072:三好愛 了]
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