気鋭のクリエイターを月替わりで起用し、本/読むこと/書くこと/編むことにまつわるグラフィック作品を展示する「DOTPLACE GALLERY」。
2020年5月期の担当は、『村を守る不思議な神様』をはじめ、数多くの装画や広告イラストを手掛けるイラストレーターの宮原葉月さんです。センス・オブ・ワンダーな色面構成が見る人の心を華やかにしてくれる、御守りのような作品を描き下ろして頂きました。読み応えのあるインタビューとあわせてお楽しみ下さい。
宮原葉月さんに聞きました
——どのようなイメージまたはコンセプトで今回の作品を制作されましたか。
私は現在秋田で一人暮らしをしています。5月になれば長く厳しい冬が終わり、とても気持ちのよい季節が始まります。
ところが今や世界で大変な事態が起こり、家の中で一人、静かに過ごす日々です。孤独で耐えられなくなることもありますが、そのような時は絵を描き続け、心が弱らないようにしています。
今回の作品では、現在の不安な暮らしの中でも「心は華やかに過ごしていけますように」、という気持ちを込めました。
——普段、作品制作の上で重視していることは何ですか。
常に新しい発見を制作の中に求めることです。人の顔の色、形の捉え方など、少しずつ新しい要素を加えながら描いています。うまくいかないことも多いですが、続けていると何かのタイミングで描く「感覚」のようなものが変わることがあります。
——宮原葉月さんにとって大切な本を1冊挙げるとしたら何ですか。
手前味噌で恐縮ですが、2018年に郷土史研究家の小松和彦さんと共著で自費出版した『村を守る不思議な神様』です。
同書籍が私の人生に一番のインパクトを与えてくれました。秋田県内にワラ人形や木像で作られた「人形道祖神」という神様が100箇所以上点在しています。疾病などの災いが入ってこないように村境や道端に祀られている民間信仰の神様です。小松さんと私はこの神様の魅力にハマり県内中を取材し、一冊の本にまとめました。小松さんが文章を、私がイラストを担当しています。
書籍化する際、「秋田の、それもあまり知られてないマイナーで民俗学的な本を出しても果たして受け入れられるだろうか?」と当時は何も確証がありませんでしたが、勢いで出版してしまいました。
すると、想定以上の反響をいただき、自費出版ながら刊行半年で1000部完売となりました。また現在では13都道府県で30以上の店舗様に取り扱いいただいています。昨年はかもめブックスさん(新宿区矢来町)や代官山蔦屋書店さん(渋谷区猿楽町)にて原画展示やスライド&トークショーを開催させていただきました。
イラストレーターとしても、同書籍で神様のイラストを描くことが成長につながってくれたと思います。村の方々にも認めていただけるような神様の絵を描けるようになりたいと願いながら、写生的なイラストではなくアート的に大胆に解釈した神様を描くことで、この文化を多くの方に知っていただきたいと思います。
——今後のご活動について何かございましたらどうぞ。
上記でお話しした『村を守る不思議な神様』に登場する人形道祖神の数体を、今年2箇所で展示させていただく予定です。首都圏に新しくできる美術館にて夏から秋にかけて、また、秋田県立近代美術館(秋田県横手市)では11月を予定しています。(新型コロナウィルス感染拡大の状況次第で日程や内容が変更になる可能性があります)
本物のワラで作られた人形道祖神と共に、ミュージアムショップではグッズ(Tシャツや書籍等)展開が予定されています。首都圏に神様が一同に集まる機会は滅多にありませんので、この機会に是非お立ち寄りいただければと思います。
取材の様子やイベント等の詳細は、公式サイト「dosojin.jp」にてご確認いただけます。
[DOTPLACE GALLERY #068: 宮原葉月 了]
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