気鋭のクリエイターを月替わりで起用し、本/読むこと/書くこと/編むことにまつわるグラフィック作品を展示する「DOTPLACE GALLERY」。
2019年10月期の担当は、広告、書籍、雑誌を中心に、様々な作風を持ちながらもどこか通底するデザイン思想を感じさせるイラストレーターの平井利和さんです。ファウンドフォトに閉じ込められたアノニマスな輝きを紐解くような視覚体験をもたらしてくれる作品。色面の素材感も美しい本作は、拡大して構図を切り取るなど多角的に見ることで、また違った絵の面白さを感じることができます。
平井利和さんに聞きました
——どのようなイメージまたはコンセプトで今回の作品を制作されましたか。
『誰かの思い出』というコンセプトで古い写真や雑誌を再構成するシリーズの追加作品として製作しました。
——普段、作品制作の上で重視していることは何ですか。
いくつか絵柄を並行しているのですが、理由は第一に自分が飽きないため、
その次に仕事などで対応できる範囲を増やすためです。
画材や手法は、インスタントでコントロールが利きづらいものを選ぶ傾向があります。
竹ペン、日本画筆、スプレー缶、紙版画、ステンシル、烏口、溝引き、マスキング、アイロン等々を組み合わせて製作し、自主制作では実験感覚を優先し仕事などのクライアントワークでその成果を落とし込むようなイメージが理想です。
——平井利和さんにとって大切な本を1冊挙げるとしたら何ですか。
美術出版社『岡本一宣の東京デザイン』です。
大学を出た後、7年ほど販売促進の会社でデザインをしていたのですが、製作で困ったとき、この本を見返しました。
センスやひらめき、独自性で各々の立ち位置を築いたクリエイターはたくさんいますが、岡本さんのデザイン倫理は細かな細部を丁寧に積み上げていくスタイルで、その高さはさることながら、センスのないデザイン初心者だった私にも丁寧さに心を配ればその形跡を辿れるような気がしてなんどもページをめくりました。
いまでも行き詰まったときに開くと、発見があります。
——今後のご活動について何かございましたらどうぞ。
今後もしばらく個展ではチャレンジした作品を発表して、そこからセルフプロモーションの活動という流れを続けるつもりです。
それと並行してアジア圏で、活動の範囲を広げるための施策を考え始めたいとも思い始めています。
[DOTPLACE GALLERY #061: 平井利和 了]
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