20th CHOFU SHORT FILM COMPETITION グランプリ 河内彰 「光関係」より
「人と一つの光を見ること 〜第二十回調布ショートフィルム・コンペティション」前編はこちら
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「第二十回調布ショートフィルムコンペティション」のすべてのプログラムが終了したのは夜八時ごろだった。駅の近くの居酒屋で、打ち上げを兼ねて作家たちの交流会が行われるというので参加した。
「光関係」の主役を演じた女性と席が隣になったので話をした。監督の友人だから参加しただけで、俳優をやるのは今回が最初で最後だという。役柄のイメージとは違って、笑顔の可憐な明るい女性だった。彼女に「作品に登場する夜景をスクリーンで観たら、家のテレビで観るのと違って、なんだか優しかった」という話をした。
「考えてみれば、孤独な少年と少女がやっと出会えたシーンの夜景だものね。二人で観る夜景は一人で観るよりもきっと優しかっただろうね」
「そうですね」
「私は今まで家のテレビで一人で『光関係』の夜景を見たけど、今日やっと大勢の観客たちと一緒にスクリーンで観られた。それで優しさに気づいたのかもね。映画は一つの光を皆で観るものだから」
「はい」
「そう考えると、あの映像の中のビルの明かりは、世界中に存在するたくさんの映画の表象でもあるのかもね。私たちは何万何千という映画に取り巻かれて照らされて、恩恵を受けてここにいる。交差する光と光、人と人、映画と映画、そういったもの同士の距離の関係が作り出す、どこかの座標に私たちはいる。たとえ孤独で絶望していても。まさしく『光関係』ってタイトルが相応しい。べたべたしないのに温かみのある、思ってたよりもずっと美しい映画だったな」
居酒屋を出て、映画作家たちと一緒に仙川の駅に向かった。真利子監督が『光関係』の河内彰監督と撮影機材に関する話をしている。ホームに電車が入ってきて、瀬々監督、真利子監督と横並びで座席に腰掛けたら、河内監督がスマホで写真を撮ってくれた。なんだか皆さん笑顔で映っていて、お二人のファンの私は嬉しい。
映画は「一つのスクリーンに照射された光を大勢の人々と一緒に同時に観る」という、思えば非常に奇妙な、独特の方法で鑑賞するものだ。もしかして二十二世紀ぐらいになれば、VR技術の発展等により、一つの映画に対して必ず一人で鑑賞する、なんて形態が一般的となって、今ある映画館はみんな廃れてしまうのかもしれない。そんな気もする。けれども、一つの同じ光を大勢の他人と同時に観る行為が、どれだけ計り知れない魅力に満ちているか。私は「第二十回調布ショートフィルムコンペティション」の夜に、よくよく思い知った気がした。
映画が始まって、まだ百年余りしか経っていない。未だ謎の多い不思議な芸術だなと考えながら、駅の改札を出た。駅舎を囲んでそびえ立つビルの向こうに星空が見える。星の一つ一つが映画のように見えた。人類始まって以来、人はどのぐらい長い時間、人と星を見て来たのだろう。それと同じだけ長く、映画の歴史も続いたって良いように思われた。
20th CHOFU SHORT FILM COMPETITION グランプリ 河内彰 「光関係」より
[一つの光を人と見ること 後編 了]
第28回調布映画祭2017
2017年3月8日(水)〜12(日)
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