気鋭のクリエイターを月替わりで起用し、本/読むこと/書くこと/編むことにまつわるグラフィック作品を展示する「DOTPLACE GALLERY」。
2016年6月期を担当するのは、仲村直(なかむら・すなお)さん。シンプルなかたちとパステル調の色づかいは一見絵本のようでもありつつ、すこんと空いた余白から漂うポエジーが見る人を強く惹きつける作家です。
仲村直さんに聞きました
——どのようなイメージまたはコンセプトで今回の作品「アフター・トマト・モーニング」を制作されましたか。
本を読んでいるとねむくなります。ふとんの上ではなく喫茶店なんかだとあからさまにねむれないので、一瞬ゆめをみてはハッとします。ゆめをみては本の上の活字に戻ってをくりかえします。そうこうしているうちに現実とゆめの区別というか、どちらが書かれていることで、どちらが見ているゆめなのかがあいまいになってきて、はたしてわたしは、本を読むためにここにいるのか、ゆめを見るためにここにいるのかが分からなくなってきます。
——普段、作品制作の上で重視していることは何ですか。
とくに重視していることはないのですが、最近だと、かたちと、なるべく描かないことと、日常で印象に残ったことをリンクさせることです。今回はトマトでした。
——仲村さんにとって大切な本を1冊挙げるとしたら何ですか。
保坂和志『書きあぐねている人のための小説入門』という本の中に「猫を猫として書く」というくだりがあって、そのことについてよく考えます。あらゆるものに意味が、ものによっては過剰に、複数的に放りこまれていて、そのようなものから離れてみると、「猫を猫として書く」が、空洞のように何にも意味されないものとしてあらわれる。そういうものにひかれます。または、悲しみが枯れはてて、意味に回収されなかった死のような、そういうものにもひかれます。
——今後のご活動について何かございましたらどうぞ。
6月中旬にCINRAさんとロフトワークさん主催の「渋ディレ」というイベントで仕事とライフワーク(イラスト)の両立についての話をする予定です。あとは、気長に絵をかいたり、考えごとしたり、イラストエッセイを書いてみたりできたらと思います。
——ありがとうございました!
[DOTPLACE GALLERY #024:仲村直 了]
COMMENTSこの記事に対するコメント