気鋭のクリエイターを月替わりで起用し、本/読むこと/書くこと/編むことにまつわるグラフィック作品を展示する「DOTPLACE GALLERY」。2021年5月期の担当は、森岡督行さんとの共著絵本『ライオンごうのたび』を出版されたばかりのイラストレーター・山口洋佑さんです。ページを照らす色に「はっ」とさせられる、セレンディピティの瞬間を捉えたような光景。ページや窓の向こう側をぜひ想像してみてください。
山口洋佑さんに聞きました
——どのようなイメージまたはコンセプトで今回の作品を制作されましたか。
旅の道すがら本を読む情景が頭に浮かんだので描いてみました。
——普段、作品制作の上で重視していることは何ですか。
かつて様々な場面で自分の中に起きた大きな心の動きが、表現される色彩や形態のバランスの中で、どうすれば再現されるかを意識しながら描くこと。
紙はORIONのシリウス紙をよく使います。TURNERのアクリル絵具をメインに使いますが、部分的にholbeinのジェッソを使います。筆は色々です。
——山口洋佑さんにとって大切な本を1冊挙げるとしたら何ですか。
『石が書く』 ロジェ・カイヨワ・著/岡谷公二・訳 (新潮社)
石の断面にピカソやジョルジュ・ブラックが描いたような「肖像画」があらわれる。
無数の偶然が結びついてできた自然の硬い線の網目の形態と、感動的な顔を再構成しようとする画家たちの生み出した意図的な構造とが相一致する。
「このような出会いは、錯覚ではなく、何かを告げ知らせるものである。それは、宇宙が同じ織物で織られていることを、そしてまた、世界の広大な迷宮のなかには、地理上の対極点よりももっと根本的に対立する対極点から発した相容れがたい道すじすら相交わる四つ辻が存在するということを証している。」
針の穴を通すような確率で出会うはずのなかったものたちが出会う。
奇跡的な相似がこの世界にはあり得るということを、
そういうことを信じてもいいのだという勇気をくれるとても大切な本です。
——今後のご活動について何かございましたらどうぞ。
「宇宙は解き難く錯綜していると言えるかもしれない。
しかしそれは解きほぐされうるものだということに賭けねばならない。
さもなければ、思考というものはいかなる意味ももたないからだ。」
上記の本の著者ロジェ・カイヨワの言葉ですが、自分にとって絵を描くということは、ここでいう「思考」とほぼ同じことだと思います。
解きほぐされうるものだということを信じ、広大な宇宙に身を投じながら自分なりに手探りで描き続けていこうと思います。
[DOTPLACE GALLERY #080:山口洋佑 了]
COMMENTSこの記事に対するコメント