気鋭のクリエイターを月替わりで起用し、本/読むこと/書くこと/編むことにまつわるグラフィック作品を展示する「DOTPLACE GALLERY」。2021年、年始めの担当は、水彩絵の具とコラージュによる、神秘性を携えた色彩表現が魅力的な、アーティストの安藤晶子さんです。本の内側にある光が、見る人の内面と呼応するような、親密な距離を感じられる作品。ぜひ拡大して眺めながら、そこに描かれる”あなただけの物語”をイメージしてみてください。
安藤晶子さんに聞きました
——どのようなイメージまたはコンセプトで今回の作品を制作されましたか。
最近観た映画、グレタ・ガーウィグ監督の「ストーリー・オブ・マイライフ/わたしの若草物語」の劇中で主人公が書き上げる本の佇まいからインスピレーションを得て描きました。”わたしだけの物語”を刻んだ1冊の本が、後世に生きる人たちを様々な形で力づけることになるかもしれない……本が持つあらゆる可能性を秘めた親密さを絵にしたいと思いました。
——普段、作品制作の上で重視していることは何ですか。
意識的に行う作業と、無意識に起きる出来事をどう柔軟に編んでいくかのバランスです。一枚の絵を制作する中で、些細なことでも何かしらの発見やハプニングがあることを常に望みます。最初に完成のイメージがあったとしても、その通りに描けたとして自分で面白いと思えたことはあまりありません。
イメージ通りのものをつくるには?と考えつつ、そのイメージの枠から少しだけ飛躍させてくれるものを必要としています。それは例えば、思わぬ滲み、歪み、擦れ、裏写り、切れ端、納得いかずに何度も塗り重ねたらたまたまうまれた色、だったりします。
絵の中に描かれる対象との距離感も意識しています。”対象のプライバシーを守るかのような構図”の絵に惹かれるし、自分もそのように描きたいと思っています。
——安藤晶子さんにとって大切な本を1冊挙げるとしたら何ですか。
吉本ばななさんの『ハチ公の最後の恋人』です。10代の頃に出会ったのですが、自分が今生きているこの世界の鮮やかさに読みながら気づかされていくという体験を初めてさせてくれた本です。今でも折に触れて読み返します。ずっと大好きです。
——今後のご活動について何かございましたらどうぞ。
自分の身体より大きな絵の制作に挑戦しようと思っています。
[DOTPLACE GALLERY #076:安藤晶子 了]
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