気鋭のイラストレーターや美術家を月替わりで起用し、本/読むこと/書くこと/編むことにまつわるグラフィック作品を展示する「DOTPLACE GALLERY」。
2015年11月期は、インディペンデント・レーベル「Kite」より文字のない絵本『みち』を昨年発行し、iTohen(大阪)やブックギャラリーポポタム(東京)での展示などで注目を集めている阿部海太さん。複雑に折り重なる幻想的な色彩が、本を読むという行為の根源を静かに照らし出します。
阿部海太さんに聞きました
――どのようなイメージまたはコンセプトで今回の作品を制作されましたか。
「なぜ人は本を読むのだろう」という問いから生まれた絵です。
人それぞれ理由は違うと思いますが、僕の場合は裸になるために本を読んでいるような気がします。知識を着込むのではなく、常識や先入観を脱ぎ落としてまっさらな感覚に触れたいという想いは、そのまま絵を描く動機にも繋がります。
――阿部さんが普段、作品制作の上で重視していることは何ですか。
どくどくと脈打つような絵を描きたいと思っています。
作品それ自体が生きているような感覚まで到達するのが理想です。
――阿部さんにとって大切な本を1冊挙げるとしたら何ですか。
選びきれませんが、今回の絵を描いている間はマリオ・バルガス・リョサの『密林の語り部』をよく思い出しました。
本来は文字に媒介されることのない伝承や物語に触れると、その想像力の深さに感嘆しつつ、
文字や本の発明の陰で失われてしまった感覚を惜しむような気持ちになります。
結局、その感覚を取り戻したくてまた本を読むのですが。
――今後のご活動について何かございましたらどうぞ。
来年3月に目白のブックギャラリーポポタムで描き下ろしの個展があります。
今後は絵本や挿画など、本の仕事にも関わっていきたいです。
――ありがとうございました!
[DOTPLACE GALLERY #019:阿部海太 了]
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