気鋭のクリエイターを月替わりで起用し、本/読むこと/書くこと/編むことにまつわるグラフィック作品を展示する「DOTPLACE GALLERY」。
2019年6月期の担当は、童心に触れるような、物語性をまとった作風が魅力的な絵描きの山口法子さんです。数多の作家がことばにできなかった、起こらなかった世界の行方を覗き込むかのような美しい作品を描き下ろして頂きました。そこから聞こえてくるナラティブな声に耳をすましてみてください。
山口法子さんに聞きました
——どのようなイメージまたはコンセプトで今回の作品を制作されましたか。
以前、絵に短い文をつけていたことがありました。
言葉にして表に出したい気持ちと同時に、出した途端、文字が何かに食べられてしまったり、風に吹かれてスーッとどこかに吸い込まれてくれたら気持ちいいのに。という気持ちもあって、そんな絵を描こうと思いました。
それに、読んだ時はものすごくジーンとくる本でも、内容をすぐに忘れてしまうので(どこかには残っていると思う)そんなイメージもあります。
——普段、作品制作の上で重視していることは何ですか。
いつもの生活から、気負わずにスッと絵に入れる感じを大切にしています。
それから、感じることや思う事、身体、すべて移り変わっているので、絵もそうでいいと思っています。
それでも大丈夫な環境を作って行くのが理想です。
——山口法子さんにとって大切な本を1冊挙げるとしたら何ですか。
『モモ』ミヒャエル・エンデ
本は、何回か読んでも内容をすぐに忘れてしまうのですが、好きな本はところどころ、心に残る部分があります。
モモもそんな本。自分自身の変化によって、とらえ方がさまざまに変わります。
同じシーンを思い出した時の感じ方が全然違っていて、でもその都度、励まされています。
わたしにとって『モモ』は命そのものが描かれている本です。
——今後のご活動について何かございましたらどうぞ。
その時々の、次にやりたい事を続けていけたらうれしいです。
それから、いいなと思う場所や人との仕事、活動はとてもリラックスして取り組む事が出来ます。
自然にイメージやアイデアが湧いてくるので、やっぱりいちばんに大切にしたいです。
また、本屋や文のことにいろいろと思いをめぐらせていたら、イメージが浮かんできたので、「ことばをたべる鳥」の他に、「文字のなる木」と「消されてゆく物語を助ける天使」という作品も描きました。
こちらもあわせて楽しんでいただけたらうれしいです。
[DOTPLACE GALLERY #057: 山口法子 了]
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