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清水玲奈 英国書店探訪

清水玲奈 英国書店探訪
第20回 Jaffé & Neale Bookshop and Café

 INK@84

写真:清水玲奈 イラスト:赤松かおり

 

第20回 Jaffé & Neale Bookshop and Café

 

 INK@84

無名の町に有名書店が誕生するまで

ロンドンからオックスフォードで電車を乗り換え、全旅程3時間ほどで、コッツウォルズの小さな町、チッピングノートンに到着します。この町の中心にある本屋さん、ジャフェ・アンド・ニールは、近年のイギリスで最も成功した独立系書店とされ、業界で名を知らない人はいない有名店。店主のパトリック・ニールさんは書評誌の執筆などでも活躍する本の目利きです。さらに、書店経営のノウハウを知らしめるべく、イギリス書店協会が開催する「書店起業のための講座」の講師を2008年から毎年務め、イギリス各地に新しい独立系書店が生まれる土壌を作ってきました。

南向きの店は、黒板とテーブルが目印。

 

大きなガラス窓から日光が降り注ぐ店に入ると迎えてくれたのは、パトリック・ニールさんと、妻のポリー・ジャフェさん。「看板に自分たちの名前を掲げているのは、本屋は個人的な営みだと感じているから」だそうです。

パトリックさんとポリーさん。素敵なご夫婦です。
夫婦は二人とも、大手書店チェーン、ウォーターストーンズの元社員です。パトリックさんは、1988年からウォーターストーンズに勤務し、バース店を経て、1992年ブリストル店に配属されました。そこで、世界旅行をした後にブリストルで書店員のキャリアを始めていたポリーさんと出会い、やがて職場結婚。ウォーターストーンズでは、社員がキャリアアップをするごとに、イギリス全国の支店に転勤になるのが通例で、その後パトリックさんは、ウォルフォード店、オックスフォード店、ロンドンのコヴェントガーデン店などを経て、2001年に同社を退職するまで、グラスゴー店の店長を務めました。

黒板には、著者サイン済みの本を揃えていると書かれています。

 

グラスゴーは創業者ティム・ウォーターストーンの出身地でもあります。ウォーターストーンズはイギリス全国に280店舗を展開していますが、グラスゴー店はその中でも、スタッフは100人、置かれている本は11万5,000冊に上り、売上高が年間450万ポンドに達する巨大店舗でした。
一方、チッピングノートンは、妻のポリーさんの両親が退職し、ロンドンから引っ越して年金生活を営んでいた町。まだ幼かった3人の息子たちの育児と両立させる上で、無料の託児制度が充実していたことも魅力だったそうです。
「この町で小さな本屋さんを開けたらいいなあと、最初は冗談で話し合っていた」そうですが、訪れるごとに、夢は具体的になっていきました。
チッピングノートンは、中世から市場があった歴史ある町ですが、観光地ではありません。当初、ローンを組むために訪れた銀行の担当者も、店には集客能力がないと判断し、申請を3回にわたって却下したとか。夫妻は、長年のキャリアで培った業界の知識だけでは不十分だと認識し、チッピングノートンの町に関する情報を集めてマーケティング戦略として成功する見込みがあると主張、銀行を4回目の交渉でようやく説き伏せ、開店資金を取得しました。周りからも、「有名書店の店長を辞めて、小さな町で店を始めるというのは、ずいぶん勇気があるね」と言われたそうです。
そして、いよいよ2001年9月、チッピングノートンの中心、ウエストストリートに店をオープンしました。狙い通り、地元の人たちが足繁く通う場所になった時、夫婦が抱いた次なる夢は、店を広げ、カフェを併設することでした。2006年、アンティークショップが廃業して空き家になった現在の店舗に拡大移転し、店内にカフェをオープン。当日は学校の許可をとって息子たちを休ませて、家族総出でお客さんを迎えたそうです。

 

人間的な接客とセレクト

現在の店は、天井の装飾が歴史建造物2級に指定されている1796年築の建物。その広さと雰囲気を生かしてイベントが行えるようになったのも移転のメリットでした。翌年の2007年には地下室を特別に開放し、ハリー・ポッターの最終巻の出版を記念するパーティーを発売日の午前0時から行い、店の知名度を高めました。

本棚や平台の周りにも椅子がたくさん置かれていて、カフェと書店の間には境界がありません。

 

地方の店ながら、豪華な出演者のイベントも実現してきました。『オレンジだけが果物じゃない』などで知られる作家ジャネット・ウィンターソン、推理小説作家イアン・ランキン、ジャーナリストのジェレミー・クラークソン、それにモンティ・パイソンに属するコメディアンとしても活躍するマイケル・ペイリンなど。毎年4月にはチッピングノートン文学フェスティバルと題し、とりわけ多数のイベントを開きます。
「次はどの本を読もうか」とお客さんと話し合うのが一番楽しい、という夫妻。書店は出版社の担当者の訪問を受けて発注する本を決めるのが通例ですが、ジャフェ・アンド・ニールでは、店の方針を理解してくれている数社だけに絞っています。パトリックさんの靴についてばかり褒めて、店のコンセプトに興味を示さなかった担当者には「二度と会わない」とか。ラジオや新聞のほか、お客さんの口コミも参考にして店に置く本を選びます。

奥に長い店ですが、明るく開放的な雰囲気。

 

一番熱心に勧めるのは、パトリックさん自身が惚れ込んだ本です。アメリカの現代作家リチャード・パワーズのピュリッツァー賞受賞作『オーバーストーリー』は、「イギリスではマイナーな作家だし読みにくい本」と認めつつも多くのお客さんに勧めた結果、100冊以上を売ったそうです。
とはいえ、失敗談もあります。近郊に別荘を持つ作家のカズオ・イシグロ氏がふらりと店を訪れた際、一冊も著書を置いてないことに気づいた時には冷や汗が出たとか。イシグロ氏は「良い本屋さんですね」と言って立ち去り、後にサインをした自著をプレゼントしてくれたそうです。それ以来、店ではイシグロ氏の著書を絶やすことなく置いています。

カズオ・イシグロのノーベル賞受賞講演録『特急二十世紀の夜と、いくつかの小さなブレークスルー』。

 

店の常連客の中には、店主夫妻とは別の店員さんと仲良くなり、読書談義や「次に読む本」のアドバイスを楽しみに来る人も少なくありません。だから、スタッフは極力入れ替わることがないよう、気を配っています。14歳でワークエクスペリエンスのために店で働き、その後大学生になってアルバイトをし、出版社勤務を経て再び店に戻ってフルタイムで働いている店員さんもいるそうです。現在週末のみ勤務している学生アルバイトをはじめ、「若いスタッフにはできるだけ長くいてほしいと願っています」とのこと。

レジには、若いスタッフと店主が並んでお客さんを待っています。

 

店員志望者には「なぜこの店で働きたいのか」という手紙を書いてもらい、自主的な棚づくりができるかどうかを第一条件として採用を決めます。そこには、夫妻がウォーターストーンズ時代に学んだ経営哲学があります。1982年に同社を創業したティム・ウォーターストーンは、イギリス随一の書店チェーンを築き上げましたが、その成功の鍵は、社員を全面的に信頼して一つの売り場の責任を持たせるという方針でした。

 

本屋のカフェの存在理由

パトリックさんとポリーさんの夫妻は、文化番組の充実しているB B Cラジオ4局を欠かさずに聞いて、新刊について、そして読書全般についての情報収集をしています。「今朝は、子どもの頃に読み聞かせをしてもらった人は、たとえ両親が恵まれない階層の出身者だとしても、高所得になり、そして自分の人生に満足している傾向が顕著に見られるという調査結果を聞きました」。こうした情報収集が、お客さんとの話題作りに繋がります。

充実したカフェメニュー。

 

カフェを併設したのも、「コミュニティーセンターとして機能し、本に囲まれておしゃべりが弾む場所となるように」という願いから。南向きの店には、晴れた日にはたっぷりと日光が降り注ぎます。「店の前のテラスや窓辺で日向ぼっこしながらお茶を飲み、本を読んだり、語り合ったりする人たちを見ていると、店主として誇りを感じます」とパトリックさん。
居心地の良い店作りは、価格の安いアマゾンに対抗するための経営戦略でもあります。書店をショールーム代わりに使って、そこで見つけた本をアマゾンで買うという消費者行動を完全に止めることは不可能ですが、「店で心地良い体験をしたお客さんは、少なくとも時々はアマゾンではなくあえてこの店で本を買おうという気になってくれるもの」と信じています。

本に囲まれてコーヒーを飲む時間を楽しむお客さん。

 

カフェ部門の売り上げは店全体の3割ですが、労働力としては6割を占めるそうです。それでも、カフェがあることには、お客さんが店に滞在する時間を伸ばす効果があり、ひいては本の売れ行きにつながるからこそ重要なのだとか。さらに、あまり静かすぎる店内だとリラックスできないものなので、「ちょうど良い量の」雑音が生じることも、カフェがあることの利点だといいます。
コーヒーとお菓子のクオリティーにも気を配ります。友人であるお菓子職人が手がける焼き菓子は、素朴なおいしさが大人気。イギリス製のガスオーブンで焼かれるのはヴィクトリアスポンジやスコーンなどの伝統的な英国のお菓子のほか、グルテンフリーのみかんケーキやシリアルバー、(パトリックさんがチャリティーで挑んだトレッキングの際に持参した)「50マイル・フルーツケーキ」などのオリジナルレシピも充実しています。たくさん本を買ってくれたお客さんには、コーヒーを無料でご馳走しているそうです。

ガーデン用の家具、陶器のコーヒーカップにもこだわっています。ドライフルーツとナッツがたっぷり入ったシリアルバーは手作りならではの味。

 

店には読書との親和性が高いギフトグッズのコーナーがあり、ポリーさんのセレクトで数多く揃えています。読書用のメガネ、グリーティングカード、ペンや手帳をはじめとするステーショナリー、キャンドルなど。
カフェやグッズを充実させているのは、「親しみやすい環境でお客さんを歓迎し、地域の人たちが集う場所を提供したい」という思いからだそうです。そして、本のセレクトについても、「親しみやすさ」を重視し、勧めたい本だけを置くのではなく、誰もが知っているような定番の本もあえて目立つところにディスプレイします。「本屋に一歩足を踏み入れた時、目に付くのが知らない本ばかりだったら、萎縮してしまうでしょう。反対に、自分がよく知っている題名や著者名が目に飛び込んできたら、リラックスできて、知らない本を手に取ってみようという気にもなる。そして、『この本が読みたかったことを自分でも知らなかった』という本と出会ってもらえたら最高ですね」とパトリックさんは説明します。

店の一番奥にある児童書コーナー。

 

 

リーマンショックと電子書籍の打撃

ウォーターストーンズの店長時代と比べて、「今も大変であることには変わりないのですが、自分で全てを決められる自由さが魅力」とパトリックさんは語ります。開店当初は「客足が途絶えるたびに不安に苛まれていた」そうで、その後も経営は試行錯誤の連続だったと、正直に教えてくれました。
移転から2年後の2008年には、リーマンショックの経済危機が訪れました。「本は、海外旅行や映画などの娯楽などに比べて安価で、不景気に強いと言われていたのが、この時ばかりは例外だった」とパトリックさんは振り返ります。アメリカでは大手書店チェーンのボーダーズが2011年に倒産に追い込まれ、イギリスのウォーターストーンズも大幅に売り上げを落としました。それでもジャフェ・アンド・ニールは、カフェにも支えられて、黒字経営を保つことができました。

たいていのお客さんは、長い時間をかけて店内で本を選びます。

 

2011年、パトリックさんは、独立書店の店長が加盟しているイギリス書店協会(ブックセラーズ・アソシエーション)の会長を務めました。その頃は電子書籍の普及がめざましく、同2011年にはウォーターストーンズの売り場に電子書籍の端末が登場。一方、1975年にイギリス全国に3,000軒あった書店は、当時1,000軒にまで減少していました。「電子書籍の登場は、ただでさえ苦境にあった書店にとどめを刺すような出来事でした」とパトリックさんは振り返ります。当時、「本屋が民主的な場所であることを示すために」店でも電子書籍を扱ったといいます。
また、パトリックさん夫妻は2010年、近隣の町でコッツウォルズを代表する観光地として名高いチッピングカムデンで、廃業した書店の跡に支店をオープンしました。友人である作家スーザン・ヒルに説得されての開業だったそうですが、ヒル自身が店員を務めるなどの努力も虚しく、売り上げ不振のため2012年には閉店。「カフェがなかったことも痛手でしたが、一番の失敗はロケーションが間違っていたこと。本屋の成功のためには、ロケーションと潜在的な客層についてのマーケティングが、何よりも必要だと思います」。夫妻は教訓を生かし、その後2016年、やはりコッツウォルズにある町ストウオンザウォルドにカフェ併設書店をオープン。こちらは成功を収めています。

2階の廊下の棚は古本コーナー。

 

ウォーターストーンズの電子書籍端末は、2015年に「ほとんど売れていない」という理由で撤去されました。最近は電子書籍よりもオーディオブックの人気が目立ち、キンドルなどの電子書籍で気に入った本は、紙の書籍も買って本棚に並べる新種の愛書家たちが「キーパー」と呼ばれて着目されています。
不安定な状況の中で、パトリックさんは「なぜ人は書店に足を運ぶのか」を考え続けました。書店起業のための講座では、書店員の一日のタイムスケジュール、仕入れと返品などの実務についてはもちろん、本屋を取り巻く環境、廃業した書店の実例など、「書店経営にまつわる怖い現実」について時間をかけて説明するとか。一日限りの講座で受講料は250ポンドとかなりの額であるにもかかわらず、毎年8人から15人ほどの受講者が出席しますが、結局、本屋を開く夢を諦める人も珍しくありません。「それでも、受講料を失うだけで済めば、安い投資です」とパトリックさんは冷静に語ります。

2階のメインの売り場は文芸書コーナー。新刊だけではなく、店がよりすぐった有名無名の作品が並びます。

 

 

今、本屋さんに人々が求めるもの

パトリックさんは、最近見たS F映画で、宇宙人の戦略で図書館が破壊され、本が散らばるというシーンに象徴的なメッセージを感じたそうです。「読書文化が破壊されている様子は、カオスの最たるもの。本は、知識であり、コミュニティーであり、安心感の源です」
店には地元のお客さんだけではなく、ロンドン、バースやケンブリッジなど、遠方から半年から2年ごとに1回ほど立ち寄る、という「たましか来ない常連さん」もいます。夫婦の店作りのインスピレーションの一つが、アイルランドを1か月旅行した時の体験です。誰も知らない土地で、ふらりと町の本屋さんに入るのが楽しみだったそうで、今も「自分がお客さんだったら望むような、心地よく、安全で、信頼できる店」を目指しています。

バラエティーに富んだ詩集の棚。

 

イギリスでクレジットカードの暗証番号による支払い方式が導入された時は、店に来て「ここなら技術的な問題があっても誠意を持って対処してくれるだろうから、まずここで使ってみる」と本を買うお客さんがいたそうです。先日は、お客さんが9歳の息子を一人で店に来させて、「人生で初めて一人で本屋さんで本を選び、買う」という体験をさせたとか。「アメリカの調査では、8割の子供が、迷子になったら身を寄せる場所として、書店を挙げたそうです。この数字は、イギリスでも変わらないでしょう。現実の問題を外に置いて、一歩足を踏み入れれば静かな時間を過ごせるオアシスのような書店の魅力は、大人にとってもかけがえのないもののはず。そして、あるアメリカの社会学者によれば、人間の幸せには、家と職場のほかに、自分が所属できて成長できる場所が必要だそうです。本屋は、まさにそういう場所なのです」

店の入り口のテーブルには、ギフト向けの本やカードを並べています。

 

近年、パトリックさんの教え子をはじめ、イギリス各地で独立系書店を開く人たちはじわじわと増え続けています。パトリックさんと同様、3,000人の書店員を擁するウォーターストーンズの元社員で、そのキャリアを生かしつつ独立して店を開く人も少なくありません。地域の特性に合ったこれらの店は多くの場合成功を収めています。
たとえば2009年には、ロケーション選びから併設するカフェの造りまでパトリックさんが全面的に監修して、ウエールズとの境界に近い西イングランド・シュロップシャーの小さな町にカフェ併設の書店「booka」が誕生。ジャフェ・アンド・ニールと同様、夫婦による経営で、新時代の独立系書店の成功例として評価されています。

 

「今の時代に成功する書店の条件」

パトリックさんによれば、70年代以前、イギリスの典型的な書店主のイメージは「定年退職した不機嫌な元教師」。少なくとも80年代まで、書店員がお客さんとおしゃべりをするという習慣はなく、お客さんが読むべき小説についてアドバイスを求めることなど考えられなかったとか。「アメリカ各地で書店に行った時、おしゃべりな書店員がいるな、と驚いたものです」と語ります。
今ではイギリスの書店員像も大きく変わりました。ウォーターストーンズでも、買う本を持ってレジに行くと店員さんがそのタイトルを見て「この作家いいですよね」と感想を言ったり、「この本が好きなら、今こっちも人気ですよ」とレジ脇の本を勧められたりすることが珍しくありません。現在ウォーターストーンズ社長を務め、経済危機後の苦境からチェーンを再生させたのは、ジェームズ・ドーント。独立系書店のブームを作り上げたともいえるロンドンの有名書店、ドーント・ブックスの創業者です。パトリックさんは、ドーント氏の名言「アマゾンは、書店に恩恵を与えた」を引用して、書店主が持つべき気概を教えてくれました。

地元在住の著者による作品には、手作り感のある店オリジナルの帯を巻いて目印にしています。

 

「お客さんが今、本屋に求めているのは、お客さん一人ひとりのために適切なアドバイスをすること。誕生日のプレゼントを探しにきたお客さんに、相手の特徴を聞いて完璧な一冊を選んであげられれば、アマゾンより高くても、お客さんは喜んで買い物をしてくれるでしょう。それに、人々が本屋さんに戻ってきていたのは、人間どうしの触れ合いがあるから。さらに本に対する情熱を感じてもらえれば、店の支持者は増える一方です」
パトリックさんは、若い世代を中心に、音楽フェスティバルや食品関連のフェスティバルの人気が高まっていることを例に挙げて、「同じ興味を持つ人たちとともにリアルな体験をすることが求められている時代」だと分析し、成功するのはそんな波にうまく乗れる書店だと考えています。本は比較的環境に対する負担が少ないことも、サステナビリティーに多大な関心を持つ若い世代に支持される要因になっているそうです。

店員さんのポップには「自分が実はずいぶん長い間この本を読むことを望んでいたかのように感じられた」とあります。

 

3人の息子たちは、全員が夏休みなどに店を手伝ったことがありますが、それぞれ機械工学、歴史、数学を専攻していて、独自のキャリアを目指しているそうです。「息子たちが自立したら、どこか海辺の町に引っ越すのもいいね、と夫婦で話しています。もちろん、そこでも本屋を開きますよ」
イギリスで最も尊敬される書店主、パトリック・ニールさんによる成功する本屋の条件は、まとめるなら下記の10か条になるでしょう。

1 ロケーション選びは最重要。
2 リサーチと準備は入念に。開店したら、楽天的に。
3 親しみやすく、居心地の良い店づくりを。
4 安心感を与え、お客さんの信頼を築く。
5 棚は、定番と尖ったセレクトの絶妙なバランスをとる。
6 優秀なスタッフを雇い、長く務めてもらう。
7 「たまにしかこない常連さん」も大事にする。
8 「読書家はアマゾンでも大型書店でも本を買う」ことを認めつつ、時々自分の店で買ってもらうことを目指す。
9 本と読書にまつわる話題を仕入れ、お客さんとの会話に努める。
10 時代の波に乗って店を成功させる気概を持つ。

[英国書店探訪 第20回 Jaffé & Neale Bookshop and Café 了]

 

Jaffé and Neale Bookshop & Café
1 Middle Row, Chipping Norton, Oxfordshire, OX7 5NH, UK
TEL 01608 641033
www.jaffeandneale.co.uk
月〜金 9:30〜17:30、土 9:00〜17:30、日 11.00〜17:00
創業:2001年9月
店舗面積:93平米
本の冊数:5,000冊


PROFILEプロフィール (50音順)

清水玲奈(しみず・れいな)

東京大学大学院総合文化研究科修了(表象文化論)。1996年渡英。通算10数年のパリ暮らしを経て、現在はロンドンを拠点に取材執筆・翻訳・映像制作を行う。著書に『世界の夢の本屋さん2・3』『世界で最も美しい書店』『世界の美しい本屋さん』、訳書に『インドのけもの』『人生を変えた本と本屋さん』など。作家 辻仁成主宰のウェブ媒体 「Design Stories」でエッセイ連載中。